第40話 助けたら蹴られた
とりあえずの思い付きを実行してみることにする。
川の流れの上に自分が乗れる程度の大きさの氷の板を作成する。
そして、身体強化をしたままそれに飛び乗った。濁流の上に置いた氷板の上に載ったところでバランスを取るのは難しい。
だが、そこは俺のチート能力”時止め”の本領発揮である。バランスが崩れると同時に時を止め、重心位置を変更して再開する。
そして、次の氷板を召喚して飛び移る。
一回一回時を止めながらのちまちまとした作業だ。
だけど、俺は一歩ずつ確かにおぼれる少女へと近づいていく。
気を失った少女は水の流れに合わせて上下に揺れ動く。タイミングを見はかり、手を伸ばして腕を掴んだ。
問題はここからだ。
俺の作る氷板では二人分の体重を支えきれないだろう。それに、バランスを取るのも難しくなる。
なので、俺は少女を放り投げた。
言いたいことはわかる。
それは主人公のすることじゃないだろ?といいたいのだろう。だけど、俺に何が出来る。身体強化を使うことで筋力を擬似的に上げているいまの状態なら、少女の体を投げ飛ばすことくらい可能だ。
実際、氷板は少女を持ち上げた瞬間に深く沈んでいたし、抱えて走るなんて無理だ。もちろん、ロープでもあれば少女に引っ掛けるということも考えたけどもないものはないのだ。
だから投げた。
結果、少女は飛んだ。
たったの1メートルだけど…。
仕方ないので、それを二度、三度、四度と繰り返して川岸まで運びきる。
水を飲んで意識を失っている少女に、
「仕方ないよね」
と言い訳しつつ、人工呼吸を施してあげる。
これは人命救助である。
決して疚しい気持ちはないのだ。
たとえ、少女が飛び切り可愛くても。
まあ、大体、二次元ならロリもありだけど、現物はね…。中学生くらいかと思ったけど、胸はペッたんこだし、小学生くらいか?
あ、なんで胸の大きさ知っているのかって、それは当然心肺蘇生法としての胸部圧迫である。当然ですよね。
人助けですもん。
「ん…」
少女の柔らかい口元から声が洩れる。息を吹き返した少女と顔を見合わせる。
「よかった。助かったか」
安堵してため息をつくと、少女は立ち上がりざまに俺を問答無用で蹴飛ばした。
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