第38話 これが僕と少女との出会いだった

 村への滞在は許可されて、俺とエレンはしばらく村長の家に住まわせてもらうことになった。アルバイン大陸にさっさと移動したいけど、そのためには靴が必要なのだ。靴の製作に数日掛かるといわれて、俺はぶらぶらと村を見学していた。


 魔族の住む村は、もともとの人族の街や村をそのまま流用しているらしいのだが、この隠れ里だけは新しく作ったらしい。ジェマを筆頭に村の創設時には人間も多く住んでいたため、建築や農業の技術の引継ぎも確かに行われたという。

 

 つまり、アルバイン大陸の町や村もここと同じなのだろうか?

 日本人には木造建築に畳みの間も似合うけども、金髪美女にはやっぱり西洋風の建物の方が似合う。というより、異世界といえば中世ヨーロッパ風が定説じゃないのかと。

 エールはないのかと。

 黒パンはどうしたのかと。


 エレンが持っていたフランスパンのようなものがあったのでパン文化はありそうだが、昨日の食事にも普通に米が出てきた。

 

 まあ、日本人なので、米が嫌いなわけではない。

 ただ、俺は異世界を堪能したいのだ。

 だって、異世界だぜ?

 決して食べたいわけじゃないが、食堂に入ったら緑色の巨大な芋虫の姿焼きくらいのインパクトが欲しい。


 二足歩行の喋る獣がいたり、角の生えた人間がいたり、そりゃあ違う世界に来たとは思うけど、殺されかける以外の衝撃がほしいのだ。

 そんな期待を抱いて俺は村を歩くが何もない。


 家、家、家、畑、家畜、畑、田んぼ、家畜。


 ただの田舎だ。


 ばあちゃん家とほぼ同じ。


 雨も上がって天気がいいのはうれしいけども、見るべきものがないというのはきつい。そもそも、引きこもりだし、漫画やゲーム、テレビなくして一日24時間は長すぎる。


 つまり、ヒマなのだ。


 好奇心は猫をも殺すというが、退屈は神を殺す。


 ヒマだ。


 死ぬ。


 村もあまり大きくないので、気がつくと端っこの方まで歩いていた。川があるのだが、先日の雨で増水して濁流が流れていた。

 村の鬼人は魚がいるといっていたが、いたのはいじめっ子が数人だった。


 どんな世界にも苛めはあるらしい。

 中学生くらいの子供が4人で、口々に罵りの言葉を浴びせながら一人に向かって川原の石を投げていた。腕を上げて頭を必死に身を守っている長い髪の鬼っ子が攻撃が止んだと思い顔を上げる。


 ビックリするくらいキレイな顔をした女の子だった。

 鬼族は美形が多かったけども、顔つきに凄みがあるというか、目つきの悪いのが多かったけど、少女は柔らかい眼差しをしていた。


 助けを求めるような少女の目が僕と合った。


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