第4話 そんな職業あるのかよ!

 ひらめきと同時にメニューボタンを押した。

 前方にコメントが表示される。


・ステータス

・装備

・魔法

・スキル

・地図

・称号


(はっ。なんだあるじゃねぇか!)


 早速とばかりに、リモコンの上下でカーソルを動かす。さっきまでは使えなかったボタンがしっかりと機能する。まずはやっぱりステータスの確認からだ。


ステータス

名前:リュウ ニシエノ

職業:ニート

称号:-

Lv:6

体力:6(-5)

筋力:12(-5)

魔力:1(-5)

防御力:7(-5)

すばやさ:4(-5)


(だめじゃん。激弱じゃん。Lvが1じゃないのが逆にイミフだよ)


(大体、ニートって何だよ。オレはニートじゃねぇっての。無職だけど、親のすね齧ってねぇし。半年前に仕事を辞めたけど、クビじゃないぜ、自分の意思で辞めたんだ。あそこは俺に向いてなかった。あの上司じゃオレをちゃんと使いこなせてなかった。だからこっちから辞めてやったんだ!ってオレは誰に言い訳ぶっこいてんだよ。くそ!)


 自分で自分に突っ込みを入れる。


(一人乗り突っ込みかよ。って時間の止まったこの世界じゃ、オレしかいないんだから、オレがオレとしゃべるしかねぇ。くそ、どうすりゃいいんだ)


 ステータス画面を閉じて、今度は装備を確認する。


・ヨレヨレのジャージ 補正値+0

・リモコン(呪)


(意味ねぇ。補正値+0って表記する必要なくねぇ。リモコン(呪)って何だよ。解除できないのかよ。ずっと装備したままかよ。飯も風呂もトイレもこのままかよ。っていうか、どちらにしろ、この状況クリアしないと意味ないけどな!)


 気を取り直して、次に期待する。ステータスがいまいちでも、すごい魔法かスキルがあるかもしれない。魔力1じゃ期待できないけど、空間転移とか逃走に使える系統の魔法があれば御の字だ。そんなことを考えて、カーソルを合わせる。


『現在、こちらの機能は使用できません』


(は?待て待て待て、そりゃねぇだろ。じゃ、じゃあ、スキルはスキルはどうだ?)


『現在、こちらの機能は使用できません』


(詰んでんじゃねぇか!)


 リモコンを投げつけようとして、出来ないことに再びいらいらする。装備解除できなくても、投げても手元に戻ってきてもいいから、一回でいいから投げさてくれと思う。だが、非情にも親指以外動かせるものはない。

 大した意味はないと思いつつ、称号へとカーソルを合わせる。


・ニート

・ゲーマー

・アニオタ


(使えねぇ…。っていうか、ニートは職業兼称号なんだな。ってだから、オレはニートじゃねぇんだよ!大体、別に働きたくても働けないわけじゃないんだ。オレは。いまはまだ、そのときじゃないから働かないだけなんだよ。あくまでもオレは無職を選択してるんだ。タイミングを待っているといってもいい。そういうものだろ。サッカーだって全員が常に全力で走ってたらすぐに動けなくなっちまう。だから、攻撃と守備と分かれているんだ。時にはボールをまわして、攻撃のタイミングを図ることだってあるだろ。つまり、そういうことだ。オレはタイミングを待っているんだよ)


 誰にも聞こえない心の叫び。

 だが、それに応じるものがあった。

 音のない世界で、『ピンポーン』と効果音のようなものが脳内に響き、正面に新たな文字が浮かび上がった。


・新しい職業『言い訳師』を入手しました。


(は?『言い訳師』?なにそれ、強いの?舐めてんの。しかも、称号じゃなくて職業かよ。最終進化系は弁護士ですか?)


・新たな職業をセットしますか?YES/NO


 リュウの心の声を無視して、世界は進み続ける。彼にとっては不本意な役に立つとも思えない職業。だが、少なくとも親のすねは齧っていないという小さなプライドがあるので、YESを選択する。


・職業『言い訳師』になりました。

 

(だから、なんだっていうんだよ!)

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