第2話 いきなり最終回かよ!
光が収束すると、世界は一変していた。
6畳間のアパートの一室から、お城の謁見の間とでもいうべき場所にリュウはテレビを見ていた状態で寝転がっていた。左手には、決定ボタンを押したリモコンを握ったまま。
(おいおいおいおいおい、なんだこりゃ)
白銀の鎧に身を包み、光り輝く剣を手にした誰か。
その正面、積み上げられた頭蓋骨のイスに腰掛ける狼頭の何者か。
(勇者と魔王とか…?)
ふと、頭を掠めたのはそんな関係性。
勇者の周りには累々と人が横たわっていた。生きているとは思えない。大量の血、ちぎれた手足、体の半分を失って生きている生物などあるはずがない。
「うげぇ」
胃の中身が逆流する。
目にした光景の不快さよりも、鼻を突く悪臭。
さびた鉄のような匂い。
焼け焦げた肉の匂い。
腐ったような内臓の匂い。
ゲームや漫画、テレビで何度も見ていた光景。
でも、画面越しに見る世界のいいところは、匂いが感じられないことだ。
初めて嗅ぐ悪臭に耐えられなかった。
「ぶはぁははははー。なんだ。なんだ。なんだー。これか、このゴミ虫が貴様の切り札か!」
狼頭のだみ声が部屋中に響き渡る。
鋭い目つきに金縛りにあったように全身が硬直した。
「そんな…」
鎧の勇者が落胆の呟きを発する。兜で顔が見えなかったが、勇者の性別は女のようだった。兜越しにも失望していることがわかる。
(なんなんだ?なんだこれは。どういう状況だ。さっきのはテレビじゃなくて、現実だってのか。オレが召喚されたってのか)
夜中の三時過ぎと考えれば、夢の中とも思えるが悪臭が現実だと語りかける。リュウを置きざりに、状況は勝手に進み続ける。
「ここまでか…」
勇者が諦めるように膝をつき、魔王が嘲笑する。
「残念だったな。貴様の仲間の命は、ゴミ虫のために費やされたか。かかっ。どの道死ぬ運命だったんだ。嘆くこともあるまい。だが、せっかく、我を倒すために呼び出されたんだ。相手をしてやろうではないか。かかっ」
「ま、待て!」
勇者が止めに入ろうとする。
しかし、魔王は座したまま、指先をリュウへと向けた。
味わったことのない死の恐怖が全身を駆け巡り、体がこわばった。
筋肉がぎゅっと縮こまり、左手のリモコンが握られる。
決定ボタンに添えられていた親指が押し込まれる。
-世界が静止した。
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