第47話
食事の後、匠は部屋でイヤホンを着け、ずっとお気に入りの曲を聴いていた いつもであればそれで気が紛れてプレッシャーが軽減されていくのだが、今回は違った プレッシャーが拭えないどころか、だんだん増してきている気がする
(まずい……吐きそう)
ここまでのプレッシャーを感じたのは初めてだ 全中の決勝でもここまでの緊張はしてない
そんなことを考えていると、渚からLINEが来た ドアを開けろとの事
「何回もベル鳴らしたのに、なんで出てくれないの!」
「悪い……全く聞こえてなかった」
どうやら何度も鳴らされていたらしい 5分ほど放置してしまったようだ 申し訳ないことをしてしまったな
「そのせいで私が親に締め出された娘みたいな目で見られてたんだから!もう!」
「悪かったって……んで、何?」
「……私を誤魔化せるとでも?匠、食欲なかったみたいだし、なんかあった?」
やはり渚にはバレていたらしい
「なんでもないよ……ただプレッシャーに押しつぶされそうなだけさ」
「やっぱりね…… ねえ匠」
「何……うわっ!」
急に抱きついてきた そしてベッドに押し倒されるような形になる お腹辺りになんか別次元な柔らかい感触がある 試合前日にそれはやばいって!
「ちょっ……渚……?」
「大丈夫、匠は強い」
「え……?」
「匠は強い 自信を持って走れば大丈夫 勝てるよ 誰よりも努力してきたでしょ?」
「渚……」
優しい言葉だった プレッシャーが解けていくのを感じる
そうだ、俺は誰よりも走ってきた自負がある それに、渚の前で恥をかく訳にはいかない 周りにいる誰よりも速く走る「かっこいい中嶋匠」でいないといけないんだ
「……ありがと、渚 これで明日から、ちゃんと走れるよ」
「うん……いつまでも、かっこいい匠でいてね」
そう言って俺から離れる 俺はもう大丈夫だ
「当たり前だ……まずは明日のリレーだ」
「……もう大丈夫そうだね じゃ、私もう寝るから 匠も早く寝るんだよ?」
「おう、んじゃまた明日な」
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