第40話

マイルの決勝の時間になった 俺はいつも通り1走、2走が西川、3走が両角さん、アンカーが高橋さんだ このメンツなら勝てる が、俺の足次第だ しかも隣のレーンに空島工業の内田も1走でいて、内側に佐倉島の飯田もいる 内田は分からないが、飯田は400も速い


「君に対して負け続きだからね せめてここでは勝たせてもらわないと」


内田が話しかけてきた


「負けるわけにはいかないからなこっちも 全力でいくよ」


「ハムにテーピングしてるけどなんかあった?まあそれは言い訳だからな 全力で来てよ」


「これを言い訳にするつもりなんてねーよ 当然全力で行く」


「楽しみだ 初めて君に負けをつけるのが目標だからね」


「はっ……言ってろ」




「on your marks……」


そんな会話を思い出しながらブロックに着いた 左腿裏はテーピングのお陰かどうにかなりそうだ 監督にも心配されたが、行くと言った だから何があっても止まる訳にはいかない


「set」


パァン!


号砲とともに飛び出した 腿裏のことを考え、前傾姿勢はなるべく短めに加速する 少しピリッときているが、上体を起こすと無くなった いける


中盤、200で一応先頭には立っているが、飯田が追い上げてきている 内田も粘っている 負けるわけにはいかない


ラスト100、西川の顔が見えた 腕を振り、重い足を無理やり前に持っていく 200の疲れなのか、足の不安なのか いつもより上がらない 飯田が来た 内田も来た 逃げ切ってトップで渡さないと 動け、動け!


「はいっ!」


西川にバトンを差し出した 思いっきり前に体を投げ出して渡した




ビキィッ!!!!




そこからの記憶はあまりなかった 覚えているのは、左腿裏に突然激痛が走ったことだけだ 気づいたら担架で医務室に運ばれ、医務室の中で高橋さんが先頭でフィニッシュしたところを見た


左腿裏が痛い 痛いのと違和感が混ざりあっている これが肉離れか 渚の予感は当たったな


「中嶋!大丈夫か!」「匠!」


監督が駆けつけた マイルを最後までみとどけてから来たのだろう 渚もいる


「匠……やっぱり、やっちゃったか……ごめん、テーピングもマッサージも甘かったんだね……」


「大丈夫……俺が無理やりバトンを渡そうと無理な体勢で渡したから……」


「とりあえず全治は?南関東に間に合うのかどうか……そこが心配だ」


トレーナーの人いわく、そこまで酷くはない 全治2週間 南関東まで1ヶ月 調整も含めギリギリ間に合うかどうかだ


「間に合わせます 絶対に」


「とりあえず家の近くの整骨院探すね 毎日でも通って治療しよう」


渚……本当にありがとう ここまでしてくれて


「中嶋!!」「大丈夫か!」「匠!」


マイルの3人も駆けつけた 俺の荷物も持ってきてくれたらしい……ってか、みんなまだユニフォームじゃん せめて上くらい着ようよ


「どうにか大丈夫です 南関東には間に合うって……」


「よかった、大事には至らなかったんだな」


「なら、早く治してバリバリ走ってもらわねーと」


「任してください」


こうして、初めての怪我と大会4冠をひっさげて、この大会は終わった



あとがき

肉離れ、痛いですよね 怪我の間走れないしすることあんま無いし いいことなんてない 注意しててもしてしまう 怖いです 主も何回もやりました

さて、次回から日常と療養です お楽しみに

あ、あと新作「ありきたりな身分差ラブコメ」もよろしくお願いします

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る