第28話
初めての試合が終わり、次の日の朝になった 当然学校があるが、3日目が相当ハードな日程だったからか、筋肉痛で動けない
「うぐぐ……マッサージしてもらったけど動けねえ……」
「ふああ……おはよーたくみ……どったの?」
腕に抱きついたまま渚が言う
「き、筋肉痛……」
「んもー、ほら、肩貸してあげるからとりあえず起きて?」
1度起き上がるとどうにか歩くことは出来た 今日は部活も体育もないため、どうにかなるだろう
朝食と歯磨きをすませ、登校する 下駄箱に着くと、渚の下駄箱になにか入っている
「……えー、ラブレターじゃん 面倒だなあ」
「渚、高校でもこうなるのか……高校来てからは初だな」
中を見ると、サッカー部の占部という2年生の先輩かららしい
「放課後校舎裏だって 匠、着いてきてくれない?怖いし……」
「いいよ、中学の時もそうだったしな」
渚は中学の頃から、ラブレターなどを貰って告白される度、匠について来てもらっていた やはり無理やり襲われることもあったので、匠が全て撃退していた
「一応多崎に確認入れとくか」
「おはよ多崎」
「おー中嶋おはよう 聞いたぜ、1年にして短距離四冠王って すげえな!俺陸上やってたことあるから分かるよ 中嶋がそんなに凄いやつだとは……」
「はは、ありがとう サッカー部も決勝進出したってな おめでとう……ちょっと聞きたいんだが、サッカー部に占部って先輩いるか?」
「ありがとう!……占部先輩?いるけど……まさか先輩、中曽根さんに……?」
「そのまさか、で?やばい人では無いのか?」
「うーん……ちょっとタチ悪いかもな 負けず嫌いで強引 FWとしてはまあいいんだけど……気をつけた方がいいかも」
「え……怖い……たくみぃ……」
渚が脅えている 中学の時のことを思い出したのか あれは剣道部の先輩だったな 壁に追い込まれて顔を近づけられてもう少しで伊〇誠のキス顔みたいなのを押し付けられる所だった 間一髪で俺が後ろから先輩をひっぺがして救出した 先輩はキレて襲いかかってきたが、校舎裏の花壇の点検をしていた美化委員の生徒が先生を呼んでくれて、無事に解決した
「安心しろ、ついて行ってやるよ やばかったら名前呼べ」
「うん……お願いね」
「一応俺も先輩の動き探っとくよ 今日部活ないし なんかあったら連絡する 万が一のときは頼ってくれ」
「ああ、頼んだ」
放課後になり、渚と俺は屋上へ向かった 俺は先回りし、屋上に出て入口から見えないところで待機する
渚は怯えていたが、怯えているとは分からないよう無理やり普通の顔を作っていた
数分後、先輩が来た 意外とごついな 喧嘩が強そうだ
「来てくれたんだね中曽根さん……もう察してると思うけど、君に惚れた 付き合って欲しい」
「ごめんなさい、私、好きな人いるんで……」
(え?好きな人がいる?中学の時までは興味ないって言って断ってたのに……)
匠は動揺する 渚の好きな人って誰だ?俺と住んでて大丈夫なのか?足枷になってないか?
「どうして……俺のなにがいけない!?俺よりいいってのかそいつが!」
「当然です まずあなたのことなんて知りませんし、私が好きな人は努力家で、かっこよくて、頭が良くて、私の憧れなんです あなたなんかと比較するなんて、私の好きな人に失礼です」
結構きついこと言うな渚……誰なんだよそれ
「こいつっ……!こうなったら無理やり……」
「え……」
これは山本の時よりやばそうだ 俺は多崎に『やばそう、来てくれ』とLINEを入れる 多崎は万が一のため、学校に残ってくれている
「匠!」
「おう!」
筋肉痛で軋む体を無理やり動かし、渚と先輩の間に入り、渚を守る 俺がでてきた瞬間、先輩の顔が歪んだ
「なんだよお前……俺と中曽根さんの邪魔するな!」
「どう見ても怯えてますが?強姦罪で捕まりたいんです?」
「黙れ!……邪魔しやがって!」
俺に襲いかかってくる 身体中が痛いが渚を守るためだ やるしかないか……
「待てっ!!」
屋上のドアが空いた 多崎だ 先輩の動きが止まる
「占部先輩……何してんすか?伝統あるサッカー部のFWが、そんなことしていいんですかね?」
「多崎っ……!お前……!」
「そんなことしてバレたら俺たちサッカー部は終わりだ 3年生達にそんなんで顔向けできます?あなたの人生だけじゃなく、俺たちや先輩達の人生まで終わりますよ?」
「……クソっ……分かったよ……」
先輩は諦めたのか去っていった 助かった……
「多崎、ありがとな 今度お礼するよ」
「いやいいよ……サッカー部の伝統が潰れるのを防げただけで十分だ」
「多崎くんありがと……ほんと、怖かった……」
渚が泣き始めてしまった 安心したのだろう 俺は渚を抱き寄せ、頭を撫でる
「もう大丈夫 安心しな」
「たくみぃっ……」
胸に顔をうずめてきた 泣き止むまでこうしてよう
「あのーそういうのは2人の時にして貰えます?」
「あっ……」
家に帰ってきた 多崎の前であんなことしてしまうなんて……恥ずかしい そして身体中痛い
「ごめんね匠?あんな事頼んじゃって……」
「いやいいよ、実際ほとんど多崎のおかげだし」
「でも匠もかっこよかったよ!てことできょうの料理は腕によりをかけて作るね!」
そう言って渚は料理を始めた ノリノリで鼻歌まで歌っている
「……そういえば渚」
「ん?何?」
ずっと聞きたかった疑問をぶつける
「渚……好きな人いるんだな」
渚が動きを止める
「……俺と住んでることが足枷になってないか?好きな人いるなんて思ってなかったし、このままでいいと思ってたけど、それじゃお前が恋愛できないし……俺、出ていこうか 俺は、お前の足枷になりたくない」
本音を渚に伝える すると
「……なんで分からないの?」
「え?」
「私言ったよね この同居は私が頼んだって 私、匠と一緒に寝たりしたけど、そんなこと誰にでもすることじゃない 匠だからそういうことするの これでもわかんない?」
「えっと……どういう……?」
「……バカっ!!匠が好きだからに決まってんじゃん!!なんでわかんないの!!」
そう言って泣きながら出ていってしまった
あとがき
近況ノートでも言いましたが、少し試合編でダラダラしすぎたため、ここにこの展開を入れるのがいいかなと思いそうしました 前話のあとがきも書きかえてます
本当は南関東大会の後にするつもりでしたが、この方が都合が良くなったので……
というわけで次回もお楽しみに〜
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