第27話

2日目が終わった 今は渚と一緒に帰宅している所だ


「初めてのマイルであんだけ走れたなら上出来だよ 監督もそう言ってたじゃん?」


「いや……俺はもっとやれたはずなんだ……」


俺はマイルで1走だった しかし、ラップは49.9と、ベストとは程遠かった 100の疲れからか、前半の加速が上手くいかなかった


「明日は200を3本走ったあとのマイルだ……やばいかもしれないな……」


「とにかく今は、帰ってケアだよ?早くご飯食べて帰ろ」


「……そうだな」




俺と渚は食事を終え、帰宅した 謎の疲労感で、荷物を下ろすとソファに倒れ込んでしまった


「ほらほら!まずはお風呂!汗かいてるんだから!」


渚に怒られる けど動けない


「……なら風呂の後全力で俺を癒して」


「いいよ?だから早くお風呂!汗がソファに染み付いちゃうから!」


それを聞いた俺は速攻で風呂に行く 湯船につかり、血流を良くして疲労物質を流す


風呂からあがり、渚が風呂に行ってる間に今日のレースの動画を見ながらストレッチをする 100はいいとして、問題はマイルだ ベストから1秒も遅いのはいただけない


「疲れてたのかな〜……」


疲れが原因なら、明日は200が3本だ やばいかもしれない


「お風呂上がりましたー……じゃあ、癒してあげましょうか……」


ニヤニヤしながら近寄ってくる 身の危険を感じる


「な、渚さん?なんでそんなニヤニヤしてんの?」


「ふふふ……私の超絶テクに悶絶するが良いぞ……?」


午後9時、周りの住人の証言によると、この部屋から情けない悲鳴が聞こえたという 苦情はなかったらしい




「はあ、はあ、はあ……体は軽くなったのにめっちゃ疲れた……」


そう、あくまで渚はマッサージをしてくれたのだ いかがわしいことはしてない……はず……


「ふへへ……いつみても匠の背筋はいいね……しかも今日は生で触っちゃった……」


渚の顔が緩みきってなんかもう見せられない感じになってる……やべえなこいつ


「さて、まだ終わってないよ?匠」


「え?まだ何かあるの?」


「じゃあ歯磨きしてベッド来て?」


言われるがまま、歯磨きを済ませベッドに行く 何をされるのか……


「ほら、寝て?」


「あ、ああ……」


ベッドに寝転がる すると渚が隣に寝そべって、顔を胸に押し当てるように抱きついてきた


「ちょっ渚!!??なにを!?」


「んふふー、頑張ってる匠にご褒美だよ?」


「何してんだよ!?いつもの悪ふざけじゃすまねえぞこんなの!?」


「いいから……覚えてる?匠が小学校の時、算数のテストで初めて満点逃して、すごい落ち込んでたの その時こうして慰めてあげたこと」


そういえばそんなことがあった 小5の算数のテストで計算ミスし、満点を逃したんだ 落ち込んでベッドで寝てた時、渚が潜り込んできてこうして慰めてくれたんだ


「匠なら大丈夫 こんな小さな失敗1回したくらいで負けないよ……だから明日も大丈夫」


と言って頭を撫でてくれた……ったく、俺は小さな子供かよ……


けど、とても癒された 明日はやれる 大丈夫


「……ありがとう 明日やれる気がしてきた」


「どういたしまして……もうこのまま寝ちゃう?」


「いやそれはきつい 息しにくい」


「むーしょうがないな……いつもの寝方で我慢するよ」


「せめてそうしてくれ……」


こうして2人は、いつも通り渚が匠の腕に抱きついて眠りについた




3日目、200の決勝の舞台に匠は立っていた

この日、男子110mハードルで岩崎さんが優勝、山本が2位 女子混成の近藤は残り800mを残した段階でダントツの1位 そして、女子の200で村町さんが優勝、椎名が2位、脇坂さんが3位だった


100では勝てたが、200は高橋さんや隆二の方が強い 全中では隆二に勝てたが、直接対決以外では負けたこともある


けど今日は負ける気がしない 体が軽い 動きもいい


「on your marks……」


3レーンが俺、4レーンが高橋さん、5レーンが隆二 1番内側なのがありがたい 2人の走りを見ながら走れるから、自分のレースがしやすい


号砲 スタートから俺が1番に飛び出した 得意のコーナーで先頭に出る 2日前の4継の反省を生かし、攻めたコーナーリングをする


直線に出た 先頭だ 200は長い 後半速い2人の後ろからの追い上げが凄まじい 高橋さんがすぐ後ろにいる 隆二も来た 逃げ切れるかどうか もがくように走る ラスト、一瞬高橋さんが視界に映る 絶対抜かせねえ!


「っ!!!」


フィニッシュ ギリギリ勝てたかどうか……


速報タイムが出た レーンナンバーは……3 俺だ タイムは21秒02 もう少しで20秒台だった


なんとか勝てたか……ギリギリの戦いだった


「また、負けたか……強いな匠は けどお前、マイル大丈夫か?そんな消耗して」


隆二に言われる


「まあどうにかするよ 大丈夫だ」


昨日より何故か疲労感がない 渚のおかげなのかな……


「ならよし、信頼してるぜ、切り込み隊長」


高橋さんに言われた


「はい、昨日みたいな無様は晒しませんよ」




女子混成の800が終わり、近藤が優勝した そして、マイルの決勝の時間になった 女子は大会記録をぶち立てて優勝した 椎名がかなりバテていたが、ラップ的には及第点 今後、さらに強くなるだろう


「頑張ってね、男子も」


下岡さんに言われた 椎名も


「頑張って 大会記録くらい出してよ(フレーフレー男子!)」


応援してくれてるみんなの為にも、大会記録くらい出さないとな


1走の俺がやらかしては話にならない せめて48秒台でいかないと


スタートした 200の感覚が残っているのか、前半からかなり飛ばす あとから聞いた話だと、200の通過が22秒を切るくらいだったとか さすがに飛ばしすぎたのか、300できつくなる 残り100 もがくように腕を振る 足はもう動かない 気力で走るしかない


「……はいっ!」


2走の西川に何とかわたす タイマーを見ると48から49くらい 何とか仕事は果たした


西川も前半から飛ばし、周りとの差を広げる 全く着いてこれてない 3走、4走の両角さんと高橋さんも快走だった


タイムは3分10秒08 もちろん1着 もう少しで3分1桁台だった 惜しい……今日こんなのばっかだ だが、大会記録の更新はできた


こうして、初めての大会が幕を閉じた



あとがき

心の中で荒ぶってる椎名さん、素を出せるのはいつになるのか……

さて、今回かなり攻めたイチャつきをさせました なぜまだ付き合ってないの?←

次回、急展開!?

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