第26話
100mの準決勝のため、俺と隆二と秋山さんはアップ場に来ていた 男子の400mハードル準決勝を見たかったが、さすがに自分の種目に集中しないといけない
ちなみに男子三段跳の小松原さんは、1回目て14m82を跳んだ 他の選手の実力的にその記録でほぼ優勝を確定させたので、あとはパスするらしい 少し腰に不安があるんだとか
「よし……行くか」
アップが終わり、3人で招集場に向かう 準決勝なのでまだそこまでピリピリはしてないが、予選の時よりは緊張感がある
招集場所に着いた 俺たち3人はやはり注目されている 準決勝は3組構成の2着までとタイム上位2名が決勝進出で、俺たちは全員別の組だ なので、俺たちの次の着順を狙っているのだろう
場内を見ると、女子の100の準決勝が行われていた 今から椎名が走るらしい
スタートした 椎名も俺と同じで、スタートから飛び出し、先行逃げ切りを狙うタイプだ 前半からぐんぐん引き離し、ラストは流して1着 流石だ
「……負けてらんねえ」
準決勝第1組に隆二が出る 俺は2組 秋山さんが3組だ 今隆二がスタート練習をしている
……緊張してるのか、体が強ばっている 何故だ、全国の決勝でもない ただの地区総体の準決勝のはずなのに
……ああ、思い出した 今の今まで忘れてた あの時に似てるんだ 中3の地区大会の予選 優勝候補の俺は、フライングで失格したんだ
それ以降の試合では、その試合のことを考える余裕もなかったし、渚の慰めで何とか乗り越えてきたのだが、心に少し余裕ができてしまった今になって思い出した 最悪だ 油断してたのか、俺は
「クソッ……今まで忘れてたのに、思い出しちまった」
気づいた時には隆二は走り終えていて、俺の番になっていた スタート練習をする 動きが鈍い 1着は取れると思うが、こんな動きでは怪我の恐れもある 焦る 焦る 視界が狭まる 耳も鈍くーーー
「……匠!!!」
はっと顔を上げた 声の方を向く 渚がいる
「匠!!いつも通り!!リラックス!!終わったらご褒美があるよ!!」
なんという爆弾発言 こんな公衆の面前で……ほんと、あいつは……
「……ははっ……なにそれ」
けどおかげでリラックスできた こんな所で止まっていられない
「準決勝第2組、スタートです」
号砲とともにスタートした リラックスできている 飛び出し、先行逃げ切り それが俺のいつものパターンだ 独走し、中盤までいい加速をする
60m辺りで力をゆるめ、1着でフィニッシュ これもいつも通りだ
「よし……」
あとは決勝とマイルだ
3組も、秋山さんが1着でフィニッシュ 3人とも決勝だ
スタンドに戻り、渚に礼を言う
「ありがとな、渚」
「どういたしまして……匠、3年の時のこと思い出したんでしょ」
「やっぱバレるか……乗り越えきれてなかったみたいだな フライングなんて、やらかしたの初めてだったし」
「匠はもう強いよ フライングなんて恐れずに攻めれる 私が保証するよ」
「……ありがと じゃあ決勝のアップ行ってくるよ」
「うん!頑張って!」
俺たちは決勝のスタートラインにたっていた 先程、男子の400mハードル決勝で、岩崎さんが優勝 そして女子の100は、椎名が村町さんからギリギリで逃げ切り優勝 龍高ワンツースリーだった
「男子100m決勝 スタートです」
アナウンスされ、場内が静まりかえる
「on your marks……」
ブロックに着く 左に隆二、右に秋山さんがいる 最高のスタートを切って、逃げ切ってやる
「set」
号砲 スタートした 誰よりも早く飛び出した 加速に乗る 先頭だ しかし秋山さんの足音が近い 秋山さんも相当いいスタートをしたな
中盤で秋山さんがほんの少し遠ざかる 代わりに隆二が来る いつもより来るのが早い けど逃げ切ってみせる
ラスト、苦しい もがくように走る まだ俺が先頭だ けど隆二の足音が近い 秋山さんも中盤から離れてない 走る、走る、走る……
全身でゴールにぶつかった 体の感覚すらない
「はあっはあっはあっ……」
息が荒れる 100mとはいえ、全身をフルに使って消耗が激しい 地区総体なのに自チームのライバルが強いと油断できない
「速報です、只今の1着、第4レーン 中嶋くん 龍山高校 時間、10.45 追い風0.9mでした」
自己ベストだ いい走りができたからな
「よしっ!」
「くそ……また負けたか まだまだだな俺も」
隆二が悔しがっている
「後輩ふたりに負けたか〜……次は勝つ」
秋山さんも悔しそうだ 次も負けない
2着が隆二で10.50 あぶねえ、そんなに近かったのか 3着が秋山さん 10.53 僅差だ 少しでも力んでたら負けてたな
「さて……中嶋はマイルもあるんだよな 頼んだぜ」
秋山さんに言われる……やば、マイルのこと忘れてた
「やばい、100終わったばかりなのに緊張してきた」
「おいおい大丈夫か?頼むぜ」
秋山さんに煽られる 大丈夫かな俺……
あとがき
今後、やはり大きなカットを挟むかも知れません 流石にダラダラ書きすぎだなと思いました
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