第20話

今年の5月最後の金曜日、インターハイ路線の初戦、地区総体の日になった 現在時刻は朝5時 鳴り響くアラームを止めようとするが、やはり左腕が動かない 見ると渚がまた抱きついてる これも日常となってしまった


「ったく……試合の日までこれか」


右手でアラームを止め、渚を起こそうと柔らかいほっぺをぷにぷにする……まじでやらけえ、一生ぷにぷにしろって言われたらできるなこれ


「んむ〜……おはよー、たくみ」


かわいい 渚たんマジ天使 略してNMTか……そんな馬鹿なこと言ってる時間ねえんだった


「よっしゃ起きたな、準備するぞ」


「はあ〜い」


顔を洗い、昨日のうちに準備しておいたチームジャージ、スパイク、ドリンク、着替え、タオルに加え、真新しい龍高のユニフォーム これがカッコイイんだ


黒地に銀の刺繍で龍山高校と書かれている 胸に学校のマークである龍に見立てた模様 そし

て背中側は首の近くにTatsuyama high school T&Fとあるのだ

こんなのカッコよすぎるよな


「さて、準備もできたな……飯だ」


渚が用意してくれたのは納豆、白米、味噌汁に卵焼き、牛乳に野菜ジュース うん、試合前のいつもの組み合わせだ


「……毎回、本当にありがとうな、渚」


「何、突然?匠、もしかして緊張でもしてるの?」


「礼を言っただけでそこまで疑うか……まあその通りだよ」


持っている箸が震える あまり食欲も出ていない しかし、食べないと力が出ないし、何より渚が用意してくれたものだ 死ぬ気でかき込む


「匠、いつも頑張ってたから大丈夫!昨日だって、私を助けてくれたし、いいこと起こるよ!」


こうやって励ましてくれる渚 ……本当に世話になりっぱなしだよ……


「……本当に、ありがとうな 渚には支えてもらってばっかだよ俺」


「……そんなことないよ、私だって、匠には支えてもらってる 匠がいるから頑張れるの 匠がいるから、私は笑っていられるの」


「……分かった、じゃあずっと笑っててもらうためにがんばらないとな」


「うん、それでこそいつもの匠だ」


緊張してた気持ちが和らいだ これならいける、走れる


「さて、行くか」


「うん、行こっ!」


2人は、試合の会場へと向かった




試合会場へ向かう途中 乗り換えの渋谷駅の1番ホームへ向かう途中、出会いたくないやつと会ってしまった


「っ!!!」


山本だった あまり喋りたくはなかったが、4

継の予選はこいつが1走で走る あまり険悪なムードは作りたくない と思っていたのだが……


「……おはよ」


なんと山本が普通に挨拶してきた 今まで1度もなかったのに……


「……お、おう」


「……おはよ、山本くん」


少し驚かされながら挨拶した すると


「中曽根さん」


渚に話しかけた 今度は何をするのかと身構えた


「……昨日は、すまなかった この通り!」


「「!?!?」」


なんと、あの自己中の塊の山本が頭を下げたのだ これには2人も驚く


「昨日帰ったあと、やっと冷静に考えることができたんだ 自分が何をやってたのかって そしたら、中曽根さんにすげー怖い思いさせてたんだって、やっと気付いたんだ だから、謝りたくて……本当に、すまなかった」


やっと自分の行動を省みる事ができたようだ 渚を怖がらせていた、という自覚ができたらしい


「……謝って済むことじゃないことをした自覚はあるのね?」


「ああ、どんなことでもする けど、陸上部はやめるわけにはいかない 今辞めたら、チームに迷惑をかけてしまう 個人種目だけならまだしも、俺みたいなやつがリレーメンバーに入ってしまった その責任は果たさないといけない」


「流石にそんなことは言わないよ……けど、これだけは約束して……部活以外で極力私に近寄らないこと」


「……わかった、約束するよ」


そう言って、山本は先に行った


「まさか、一晩でここまで変わるとはな」


「びっくりしたよ……でも、解決、かな?」


「そうだな……おっといけね、俺たちも行くぞ!」


「う、うん!」




「着いた……」


「だね……」


今回の会場である都立駒沢オリンピック公園陸上競技場 当然匠達は初めて訪れる場所だ


集合場所はいつも龍高が場所争奪戦で確保するという場所 メインスタンドのスタート側の1番上のあたりだ 1番上にはスロープがあり、そこでマッサージをしたりストレッチをしたりする


「お、中嶋と中曽根も来たな あとは……井澤か」


現在時刻7時15分 集合は7時半なのでまだ時間はあるが、いないのが井澤ということで謎に心配になる


「お待たせしました!」


そうこうしてたら井澤も来た 寝坊してなくてよかった とにかくこれで全員だな


「よし、朝のミーティングやるぞ」


「「「「「はい!」」」」」



あとがき

ついに閑話を覗いて20話まで来ました ここまで見てくださった読者に感謝です

山本くん事件無事解決しました あっさりしてますが、陸上と幼馴染あまーがメインなので悪しからず

とりあえず誰か龍高のユニフォームのイラスト描いてください……m(_ _)m

あと、分からない単語等ありましたらコメントお願いします 次話で解説入れます

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