第9話
朝7時すぎ、目が覚めた 左半身が動かない、重い どうしたんだ俺、もう二度と、左半身が動かないのか……
「すぴー、すぴー」
左側から聞こえてくる間抜けな寝息、そして左半身全体に加えられた柔らかな感触 なるほど、俺は渚に抱き枕にされてしまったらしい
「おきろー、今日は早いんだから早く準備しないといけないんだ」
そう、本日4月2日は龍高陸上部の新入生顔合わせの日 9時からの顔合わせのミーティングが終わると10時からすぐ練習に入る だから早めに行動がしたい
「むにゃむにゃ……ううー、たくみー、おこしてぇー……」
「起こしても何もまず体を離せ、俺も動けん」
「むうぅー……」
やっと腕を離してくれた くそ、何だこの可愛い生き物は、一歩間違えたら襲いそうだ
「ほら、料理担当はお前だろ 俺は諸々準備してくるから頼んだぞ」
「はぁーい……」
渚は洗面所に向かっていった とりあえず顔でも洗うのだろう 俺は行く準備をしなければ
「えーと、服装は中学のチームジャージで、スパイクとタオルと飲み物と着替えと…」
服装に関しては指定があった 中学のチームジャージで来いとのこと 理由は、チームジャージには名前が縫い付けてあるので、顔と名前を一致させるのが楽になるからだ ちなみに高校のはまだ採寸もしていないのでこのミーティングの時に採寸を行うらしい
「……うん、こんなもんかな」
10分ほどで準備が終わったので、キッチンの方へ向かう
「ふんふふーん」
そこでは渚が鼻歌を歌いながらベーコンエッグを作っていた かわいい
「お、準備終わった?もうすぐできるからねー」
「ありがと」
それから5分ほどで朝食になる ベーコンエッグと食パン、牛乳と野菜ジュース 牛乳と野菜ジュースは中1から渚に言われてずっと続けている
「うええ……やっぱり野菜ジュース不味い……」
「もー匠、3年以上続けてまだ慣れないの?」
「野菜嫌いなの知ってんだろ……うええ」
匠は野菜とキノコ類が大の苦手だ 特にキノコ類は渚に土下座して出さないようにしてもらっているほど
「キノコを許してるだけ有難いと思ってよねー」
「はい、神さま仏さま渚さま」
「ふふん、あの中嶋匠の弱みを握ってる……すごい優越感!」
「こいつまじで1回泣かしたろか……」
そんなこんなで朝食を食べ終わる 時間は8時丁度 そろそろ出ないといけない まだ入学式が終わってないので、自転車は使えない だから早めの行動が求められる
「よし、じゃあ行ってくる」
「え、何言ってるの、私も行くんだよ?」
「……は?」
また渚が変なことを言い始めた よく見ると、中学の体操服とジャージを着て、リュックをしょっている
「いやいやいや、お前、え?何言ってんの?」
「合格発表の後、陸上部の監督さんに電話したの!マネージャーにしてくれって!んで、匠と幼馴染ってことと、トレーナーみたいなことしてたって言ったら、新入生顔合わせにきなさいって!」
「……」
まさかそんな前から根回しをしてたとは 末恐ろしい子だ
「……うんそれは分かった、けどもっと早く言え!いつもいつも!」
「あー痛い痛い!頭ぐりぐりしないで〜!」
匠必殺頭ぐりぐりを食らわしてやった 少しは反省しただろう けどこれをしてると渚はほんの少しだが嬉しそうにする ドMなのかこの子は
「ったく……ほら、行くぞ」
「ううー匠のいじわる……」
玄関に鍵をかけ、2人は龍山高校に向かった
龍山高校に着いた2人 すぐに陸上部の部室に向かった 龍高の陸上部の部室はミーティングルームが併設されており、かなり大きい 着替えるスペースが足りない時はここを活用することもあるらしい
「……あれ、中嶋?」
ミーティングルームに入るとすぐに声をかけられた 全中の100m200m共に2位だった井澤だ
「中嶋もここに来たんだ……お隣の女の子は?」
「まあね……こいつは中曽根渚 俺の幼馴染でマネージャー希望だ」
「よろしくお願いします」
ぺこりと渚が頭を下げる
「へええー可愛いじゃん、でもマネージャー希望なのにもう来てるの?」
「監督に電話したら来いって言われたんだと」
「そりゃ凄いな……てか、めっちゃ可愛いね、俺、タイプかも 付き合わない?」
「ごめんなさい、私、匠にしか興味無いんで」
「……え?まさか、匠を追いかけてここに来た感じ?」
「はいそうですよ?」
「……すげえなこの子」
「だろ、井澤……」
そういった話をしていると人が揃ったらしい ミーティングが始まる
「それじゃ、始めようか キャプテン号令!」
「起立!礼!」
「「「「「お願いします!!!」」」」」
キャプテンの高橋さんによる号令で始まる 高橋さんは2年の時、400mでインターハイ3位の成績を誇る
「まずは自己紹介だな、監督の金井だ、よろしく んじゃ、キャプテンから」
「はい キャプテンの高橋和樹です 専門は400mで、ベストは47.10です 強い新入生が沢山来てくれて嬉しいです 一緒に頂点をめざしましょう」
高橋さんを初めに、先輩たちの自己紹介が終わる 次は自分たちの番だ 井澤が最初に立つ
「千葉の元山中から来ました井澤隆二です 専門は100mと200mです 全中はどちらも2位で、中嶋に負けてしまったので、勝てるように頑張りたいです」
早速喧嘩売ってきやがったこいつ 次にその横のひょろ長い男が立つ たしか400の奴だったな 井澤と同じジャージを来ている
「同じく元山中から来ました、西川優馬です、専門は400mで全中で5番でした 未熟ながら精一杯やるのでよろしくお願いします」
次は……お、めっちゃごついやつだ、投擲か?俺投擲詳しくないからわかんないけど
「斎賀中から来ました山口大輔です 投擲をやりたいと思っています よろしくお願いします」
次は少し背が高いくらいの男だ ハードルの人だった気がする
「西園中から来ました山本康平です ハードルをやりたいと思っています よろしくお願いします」
なかなかイケメンだ モテるんだろうな
……さて、俺の番か
「広島の海島中から来ました、中嶋匠です 専門は100mと200mです 全国で1番になれるよう頑張ります」
期待されているのか、先輩たちからの拍手は1番大きかったように思う さて、俺の次からは女子だ 最初は超がつくほどスタイルが良い美人
「梅木中から来ました村上鈴です 種目は高跳びです 全中では優勝しました よろしくお願いします」
ハキハキ喋る元気な子だ 次は少し大人しそうな子
「あ、青山中から来ました、近藤悠里です、種目は、混成です よ、よろしくお願いします」
だいぶ緊張しているようだ、大丈夫なのか?この子
次もさっきの子と同じくらいの背の子だ
「小村中から来ました椎名由美です 専門は100mです、よろしくお願いします」
この子か、女子の全中チャンピオン 見たことあると思ったんだよ
さて、最後に問題の渚だ
「広島の海島中から来ました、中曽根渚です!マネージャー希望で、中嶋匠とは幼馴染です!中学時代は匠のトレーナーのような事をずっとしていて、陸上の知識はある程度はあるつもりです 栄養学も独学で勉強してるので、沢山サポートが出来ると思います よろしくお願いします!」
……なぜマネージャー希望が1番自己紹介が長いのか そして何故男子連中はそんな元気よく拍手するのか
監督が立ち上がる
「さて、自己紹介も終わったな こっからまだ増えるかもしれないがな……私から最初に言っておくことがある ある程度成績が残せなかった選手、練習に対して真摯に取り組めない選手には退部も勧めることがある、そういう部だと言うことだけは把握しておけ それ以外は細かいことは言わん 部内恋愛も咎めることはないし、食べ物飲み物に関しても言うつもりは無い だが、強くなりたいのであればどうするべきか、それは自分で考えることだ 私からは以上だ」
自分で考えろ、か……渚に頼りっきりだった俺は不安だな
挨拶が終わると新入生は男女に分かれ、ユニフォームとジャージの採寸を行った ものの5分で終わった
「では、これからグラウンドに出て練習だ 15分後には始めるからそのつもりで準備しろ!」
「「「「「はい!!!」」」」」
こうして、龍高陸上部としての初練習が始まる
あとがき
一気に登場人物が増えましたね なので次回はメンバーのプロフをまとめた回になります
……僕がきちんと覚えれるかなあ
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