第4話伝承

右肩を治療し、村で一晩を終えたエヴァンは、また王都への道を往きます。


途中の村々で魔人を狩っていましたが、どこの村も全滅でした。


そして、魔人と戦う毎にエヴァンの体に異変が生じてきていました。


食べているものの味が段々と感じなくなってきたり、独り言も多くなっていたりしました。


本人はそのことを異変と気づかぬまま、ようやく王都付近の山まで辿り着きました。


もうこの時点で、エヴァンの技術は実戦を通して限界に近くなっていました。


山の頂へ着くと、王都が見えました。


しかし、それを見たエヴァンは理解が追い付きませんでした。


王都の外壁は破壊され、内部の家々は煙を上げ、王城は抉られていたのです。


まだ、中で戦っているかもしれない。


そう思って王都へ向かおうとしたエヴァンでしたが、その足を止めました。


その故は、王城から姿を見せたものが原因でした。


そこから姿を現したのは、魔人を守護すると云われている魔竜でした。


力量差が遠目からでも分かったのです。


そんな竜が、人間を守護すると云われている聖竜を銜え、王城から出てきたのです。


人間が敗北したのだと、混乱しているエヴァンが理解するのにはそう時間はかかりませんでした。


頼るものが無くなったエヴァンは絶望しました。


膝をつき、項垂れたエヴァンは、敵いもしない相手に特攻を掛けようかと自暴自棄になっていました。


しかし、そんな時にエヴァンは幼いころに教わった、ある伝承を思い出します。


この世界には三体の竜が存在している。


一体は魔人を守護すると云われている魔竜。


一体は人間を守護すると云われている聖竜。


一体は自身を守護すると云われている神竜。


神竜には、人智を超える力があり、代償を捧げれば、その恩恵を受けられると云われていました。


それと同時に、父からの言いつけも思い出しました。


いつかの日、エヴァンが家の居間の畳を持ち上げたことがありました。


すると、そこには地下へと通ずるあったのです。


地下へ踏み込もうとしたエヴァンでしたが、父に止められたのです。


「下にはね、とっても偉い方がいるんだ。その方の邪魔になってはいけないから下りたらだめだぞ」 と。


それらを思い出したエヴァンは、その希望にすがりました。


もしかしたら、家の地下には神竜がいるかもしれないという、とても細い糸のような希望に。

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