転
身体を大の字にして見慣れた天井を見つめる。
目を瞑って、鼻でため息をつく。
憂鬱だ。
昨夜僕は、一時的に我を失ったせいで、新学期早々に、一人のクラスメートからの信頼を失った。
スマホの電源をずっと切っていたために、あの後返信があったかどうかすらもわからない。
幸い今日は土曜日なので、アイツと直接会うことはないと思う。
しかしどちらにしろ今日は午後から塾だから、親に帰りの連絡を入れるときに、
スマホの電源を入れざるを得ないことは明らかなのだ。
まるでシュレーディンガーの猫だ。
できることなら箱を開けたくない。
そんなことを考えながら悶々としていると、昨日眠っていないせいで、
無意識に眠りに落ちていた。
目が覚めた。
背中に汗をかいていた。もう羽根布団は要らない。時計を見ると15:30。
授業開始まであと30分。
僕は急いで歯を磨いて、髪を整え、制服に着替えてコバルトブルーの自転車に乗る。
普段は徒歩で通っているので、久しぶりの自転車で少しよろめく。自転車は一度乗れると一生その感覚を忘れないというのは嘘だと思った。
接客態度があまり良くないファミリマートの敷地を突っ切って少し近道する。
母がよく行く花屋は今日は定休日のようだった。
車の無い駐車場で草取りをする老婆が、
ふとこちらを見てきたので会釈する。
交差点が見えてきた。あと少し。
平坦な道で立ち乗りしてどんどん漕ぐ。
この角を曲がれば塾の看板が見え__________
る前に白い野良猫が飛び出してきた。
僕は反射的にハンドルを切って避けた。
するとバランスを崩してしまって、派手にコケて自転車ごとアスファルトを滑る。
荒めのアスファルトに膝を擦り付けてやっと止まった。
制服のズボンに大きな穴。
しかし驚いたのは、直接地面に擦った膝よりも、掌の方が傷が深く、出血量が多かったことだ。手を振って血を飛ばすと、まぁまぁな大きさのガラスの破片が刺さっていることがわかった。
自分の掌からタラタラと鮮血が流れるのをぼうっと見ていると、
「止血しないと」
と後ろから知らない女性に声をかけられた。
その女性は、自分の着ていたカーディガンから真っ白なハンカチを出して躊躇なく僕の掌に当てた。
"すみません"
と言ったが、声が掠れていたのと、横の国道をブンブン通る車の音のせいで、多分彼女には届いていなかった。
「結構大きいガラスが刺さってるみたいだから、このまま病院に行きなさい。
..あ、でも自転車もあるんだね。
私が自転車を押してあげるから、一緒に行こうか」
「あ、ありがとうございます」
今度は大きめの声で言った。
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