(始)




「起立。」


いつものおちゃらけたチャイムはなかった。

突然の指示にみんなは気遅れして、

サビのついた椅子で不協和音を奏でながらのそのそと立つ。


僕は椅子の音を最後に響かせぬように、目立たぬように、気をつけながら立った。


「礼。」


"礼。"の最後の余韻の音がいつもより高いな、あぁそうか教頭が変わったのか、なんて考えながら首を10°、いや5°曲げた、

あるいは曲げていなかったかもしれない。


するとその時さっき話しかけてきた隣のヤツがクスと笑ったような気がした。


僕の何がおかしいのか。失礼だ。


そこからは多分「着席。」と言われて

色々なありがたいお話があったんだろうが、僕は睡眠の方を優先したために何も知らない。


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