第3話 激戦区
黯然失色
「あんぜんしっしょく」
俺は四字熟語の勉強をしていた。立派な社会人になりたい。
意味は、衝撃を受けて気力を失うこと。
「黯然」は暗い様子。または、顔色を失うこと。
「失色」は元の色が失われること。または、顔色を失うこと。
本来の色が消え失せて、暗く冴えない色になるという意味から。
歓言愉色
「かんげんゆしょく」
意味は楽しげな会話と楽しげな表情。
または、お世辞を言って、愛想よく振る舞うこと。
「歓言」は楽しく話しをする、談笑。
「愉色」は楽しげな表情、笑顔。
俺はテキストを閉じてジョギングに出た。
俺の祖母は若い頃、アイヌソッキの肉を食べたらしい。アイヌ民話で北海道の内浦湾に住むと伝えられる人魚によく似た伝説の生物。八百比丘尼の伝説と同様、この生物の肉を食べると長寿を保つことができるという。
アメリカ・ロサンゼルス空港に、日本から初老の男が降り立った。男は強盗の累犯で収監されていた宇賀神。9年の刑期を終えて出獄した彼は、LAで暮らしていた一人娘、エリカの訃報を受け取っていた。
訃報の送り主であるエリカの友人ジェームスのもとで、宇賀神はエリカの死が飲酒運転による事故死であったことと、交際していた音楽プロデューサーのキースとの間に何らかのトラブルを抱えていたことを知る。
信頼する娘の飲酒運転による死を信じられない宇賀神は、ジェームスの証言に基づき、エリカが死の2週間前に訪れたという不審なバーへと、手掛かりを求めて乗り込む。そこでゴロツキと事を構え、娘の死は事故ではないとの確信を得た宇賀神は、真実を知る筈のブルースを追い詰めるべく、行動を開始する。
福島出身の青年の雪篤史は或る酒場で俗的な歌を歌っていたので官僚で厳格な父に見つかり勘当されてしまう。数年後、トムと言うアメリカ人の名前を名乗った篤史は長年の夢であったジャズシンガーになり人気を博していた。整形は見事だったが、英語は全然ダメだった。舞台女優メグと恋仲になった篤史は彼女の手助けで大舞台で歌う事になったが、その前日、母が訪ねて来る。篤史が歌う日はちょうど福島人にとって聖なる日であり、福島人達が父の経営する教会に集まり讃美歌を歌う日であった。ところが父が病気で倒れてしまったのだった。母が篤史を訪ねて来たのは彼に、父の代わりに讃美歌を歌ってもらう様頼む為だった。メグは「篤史はもう立派なジャズ歌手であり自立した大人。そんな彼に親の都合を勝手に押し付け、大舞台をフイにして良いのか」と抗議する。しかし彼は敢えて教会で讃美歌を歌う事を選ぶ。
メグの「ジャズシンガーが賛美歌を歌っている」と言う嘆きの声を傍らに、篤史は立派に父の代役を果たすのだった。病床の父はそんな息子の歌声を聴きながら息を引き取るのだった。数か月後。改めて大舞台で歌う事になった篤史は顔に墨を塗り、メグ、母の前で福島民謡『会津磐梯山』を熱唱する。母はそんな息子の姿を、涙を流しながら見守るのだった。
2020年5月1日
深夜のニューヨークにアクリスって怪物が現れた。
プリニウスの『博物誌』(77年)第8巻第16章第39節では、スカンディナヴィア島生まれの草食動物だとされる。見た目はヘラジカのような姿だが、決して横たわることはなく、休む時は木に寄り掛かる。何故ならアクリスは後肢に関節を持たないため、一度横たわると起き上がれなくなるからである。そのため、アクリスが寄りかかりそうな木をすぐ折れるように細工しておけば、簡単に捕らえることが出来たという。後脚に問題があるにもかかわらずアクリスは速く走れる動物だと考えられていた。またアクリスは、上唇が極端に大きいので、これが邪魔にならないように後ろに下がりながら草を食べるという。
ジョンはアメリカにいる旧友から怪物出現の電話をもらった。最近スマホを買い変えたばかりだ。
ニューヨークの大規模住宅地は、エレガントな褐色砂岩のテラスハウス、タウンハウス、そして1870年から1930年にかけての急開発期に建てられた粗末な集合住宅と境界が分けられることが多い。1835年のニューヨーク大火後、木造建築の建設が制限されるようになってからは、おもに石とレンガが建築材として選ばれるようになった。何世紀にもわたって町自身の石灰岩の地盤から建築材を得ていたパリとは異なり、ニューヨークはいつも広範囲の採石場から建築材を運び入れており、その石造建造物は多様な石理や色相を示している。市の建造物の多くに見られる特徴は、屋根の上に木造の給水塔があることである。1800年代のニューヨークでは、6階より高い建物には給水塔を設置しないと、低い階で過度に高い水圧をかけなければならず、そうなると市の水道管に破裂の危険性があったのである。1920年代には、中心部から離れた地域で、田園都市が盛んになった。地下鉄の伸張でアクセスしやすくなった、クイーンズ区のジャクソン・ハイツもそのひとつである。
中国軍占領下のつくばの田園地帯。この地に赴任した傘大佐は、行方不明になっている一家の手がかりを得るために床屋『マーセル』の魚返を尋問する。その一家は中国に情報を売り渡していたスパイだった。
床下にその一家が匿われていることを突き止めると、部下に命じて床板越しにマシンガンで皆殺しにさせるが、ただ一人、娘の静江だけは逃げ出すことに成功する。傘は走り去る静江の背中に向けてピストルを構えるが、引き金を引く代わりに別れの言葉を叫ぶ。
「またな?」
2014年春、ジョンはアメリカ人8名からなる秘密特殊部隊を組織していた。ジョンが部下に説明する任務とは、市民にまぎれて敵地奥深くに潜入し、テロリストを血祭りにあげることであった。捕虜はとらないという方針の下、拷問を加えた上で殺害し、100人のテロリストから頭皮を剥ぐよう命じる。一方、テロリストの間では、ジョンの部隊は『死神』の名前で知れ渡っており、その活躍は生存者を通して、ボスの漣にも伝えられえる。ジョンの部下、キースは、新人テロリストをバットで撲殺する。
ジョンは、唯一の生き残りのテロリストの額に、一生消えない☓印の傷をナイフで刻んだ上で解放する。また、秘密特殊部隊はテロリストでありながら人を殺すことが出来なかった蘭を救出して仲間に引き入れる。
2014年6月、宇都宮。静江は、亡くなった叔父夫妻から経営を引き継いだ、身寄りのないうら若き女性映画館主、百足さとみという別人に成りすましていた。静江に想いを寄せる狙撃兵、来須聖陽は、彼の仙台での活躍をプロパガンダ映画『英雄』に仕立て上げた、我慢洋介宣伝大臣に静江を無理やり引き合わせて、映画のプレミア上映会に静江の劇場を使用するよう、来須を説得する。そのビストロでの会食の場に、静江の家族を皆殺しにした傘が現れ、静江は緊張する。
我慢との話し合いが済むと、我慢洋介は静江一人を残らせて、彼女の生い立ちや劇場について尋問するが、最後まで百足さとみが静江だとは気付かない。傘が立ち去ると、静江は極度の緊張から解き放たれ、一人静かに泣く。家族を殺された復讐に、上映会に集うテロリストたちをニトロセルロースフィルムを使って劇場もろとも焼き尽くすことを思いつく。
テロリストが一堂に会するプレミア上映会の情報は東武警察署もつかんでいた。狗巻裕二刑事課長は元ヤクザの征矢正輝巡査部長を呼び出し、知識拓哉首相もいる場で、テロリストごと劇場を爆破するヘル作戦について説明する。征矢は宇都宮郊外にあるバーをチンピラに扮して訪れる。そこで作戦を手引きする人気女優兼テロリストの泥静香とランデブーする手はずであったが、バーにはその日に限って子供が生まれたテロリスト、和食正臣とそれ祝う仲間が集っていた。泥静香は和食から息子の誕生祝いにと、サインをせがまれる。征矢は、不自然な茨城訛りをテロリストに不審がられ、さらに飲み物を頼む仕草が決め手となって、その場に居合わせた祇園史郎にテロリストではないことを見破られてしまう。征矢が開き直ると、バーのマスターとウェイトレスも巻き込んだ銃撃戦になり、足に銃弾を受けながらも泥静香だけが生き残る。泥静香に裏切られたと思ったジョンは、近くの動物病院で拷問を加えるが、テロリストが居合わせたのは単なる偶然だという説明に納得する。さらに、泥静香はジョンたちに、プレミア上映会には知識も出席するという新情報を伝える。
秘密特殊部隊は、ジョン、キース、リチャードが泥静香を上映会にエスコートすることを決める。後にバーを捜索したジョンは、ハイヒールと泥静香のサイン入りナプキンを発見する。
プレミア上映会に続々とテロリストが集まってくる。警備に当たるジョンは、疑いをかける泥静香のエスコートたちに堪能な日本語語で話しかける。ジョンは泥静香を別室に連れ出していすに座らせると、バーで見つけたハイヒールを試着させる。サイズが合うことを確かめたジョンは、泥静香に飛び掛り、絞め殺す。さらに、ロビーで待つ傘と外で待機していた峠を逮捕して連行すると、無線で上官と掛け合い、劇場に残るキースとリチャードにテロリストの暗殺を許す代わりに、ジョンの恩給を認めた上、懲戒処分しないことを呑ませる。劇場では来須が静江がいる映写室に押しかけていた。来須を追い払えないと悟った静江は、映写室のドアに鍵をかけようとしている来須の背中をピストルで撃つ。死んだと思った来須がうめき声を上げ、静江が近づく。来須は最後の力を振り絞って体の向きを変えると静江を射殺する。静江が事前に編集していた『英雄』は、メッセージを伝える来須の顔から静江の大写しへと切り替わり、観客は来須の亡霊に殺されると震え出す。これを合図に、静江の映写技師で恋人の家老亮平が、劇場の出口にボルトをかけて観客が逃げられないようにした上で、スクリーン背後に積まれたフィルムに火を放つ。キースとリチャードはバルコニー席の知識首相に飲み物を運ぶ振りをして護衛を射殺すると、マシンガンを奪って、知識、その場に居合わせた我慢洋介、さらには炎から逃げ惑う一階の観客たちを滅多撃ちにする。最後はキースとリチャードが仕掛けた爆弾が爆発して全員が死ぬ。
傘らを載せたトラックで米軍の支配地域までたどり着いたジョンは、事前の打ち合わせ通り、傘に投降する。銃とナイフを受け取った傘はその場でジョンの通信兵を射殺し、峠に頭皮を剥ぐよう命令する。混乱して怒鳴る傘。映画はジョンが傘を押さえつけてナイフで額に鉤十字を刻み、峠に語りかけるシーンで終わる。「どうだい峠?こりゃダントツで最高傑作だ」
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