第2話 怪物出現!

 2020年4月1日

 翼を持った怪物がニューヨークに現れた。

 アジ・ダハーカ (Aži Dahāka) はゾロアスター教に登場する怪物である。アヴェスター語ではアジ・ダハー (Aži Dahā) と呼ばれ、中世ペルシア語形ではアジ・ダハーグ、現代ペルシア語形ではアズダハー。


 名前について、アジは「蛇」という意味だが、ダハーカの意味はよくわかっていない。インド神話の敵対的種族ダーサと同語源であるという説、「人」という意味で「人-蛇」を意味するという説などがある。文献的には『アヴェスター』(紀元前12世紀 - 紀元前6世紀ごろ?)が最古のものだが、図像表現に限るならば紀元前2100年 - 紀元前1800年のバクトリアにさかのぼる。


 比較神話学的には、アジ・ダハーカはインドの蛇の怪物ヴリトラに対応すると考えられている。ヴリトラの別名であるサンスクリット語のアヒ (ahi) も、アヴェスター語のアジ (aži) と同じく蛇を意味して言語学的に対応する。


 現代では、「アジ・ダハーカ」はペルシア語で「ドラゴン」の意味で使われている。


 アジ・ダハーカは、ゾロアスター教以前の古代ペルシア神話からすでに登場している。『アヴェスター』は3頭3口6目の容姿だと描写しているが、頭はそれぞれが苦痛、苦悩、死を表しているとも言われている。その翼は広げると天を隠すほどに巨大である。蛇とドラゴンの両方のイメージを備えた「有翼の龍蛇」だとみなされていた。


 バビロン(古代メソポタミア地方)にあるとされているクリンタ城 (Kuirinta) に棲む暴君。悪神アンラ・マンユに創造され、その配下であり、あらゆる悪の根源を成すものとして恐れられた。


 神話においては、千の魔法などを駆使して敵対する勢力を苦しめ、アフラ・マズダー配下の火の神アータルなどとも激しく戦った。讃歌『ザムヤード・ヤシュト』においては、アジ・ダハーカはアータルと光輪を奪い合った。アジ・ダハーカは光輪を奪い取るべく罵詈雑言を吐きながらアータルに迫ったが、アータルから「自分がアジ・ダハーカの体の中に入って口の中で燃え上がり、アジ・ダハーカが地上に来られないように、決して世界を破壊できないようにする」と言われると、萎縮して退いたという。


 その後、アジ・ダハーカは英雄スラエータオナによって討伐された。戦いにおいては、アジ・ダハーカの体に剣を刺してもそこから爬虫類などの邪悪な生き物が這い出すため、スラエータオナはアジ・ダハーカを殺すことができなかった。そのため最終手段としてダマーヴァンド山の地下深くに幽閉したといわれている。そして、終末の時に解き放たれて人や動物の3分の1を貪ることも、最終的には神話的英雄であるクルサースパに殺されることも、すでに決まっているとされている。


 ジョンは多くの通行人がアジ・ダーハガの犠牲になっていくのを見た。コブラに咬まれ美しい女がケガを負った。

 

 ヴァネッサはSF映画の世界みたいだと、思っていた。このまま、死ぬのだろうか?

 ヴァネッサは数日前、ジャマイカ湾近くのホテルに宿泊した。

 ジャマイカ湾 (Jamaica Bay) は、アメリカ合衆国ニューヨーク州のロングアイランド西端部の南側にある湾。西のロッカウェイ海峡 (Rockaway Inlet) を通じてロウアー・ニューヨーク湾へと繋がっている。ジャマイカ湾はロングアイランド南岸にあるラグーンのうち最も西に位置するものである。行政上はニューヨーク市のブルックリン区とクイーンズ区にわかれ、一部はナッソー郡である。


 湾内には数多くの湿地の島がある。ジャマイカ湾はニューヨーク開湾 (New York Bight) とニューヨーク湾の接続部に隣接しており、また海岸線の向きが東西方向から南北方向へと変化する場所にあたる。湾の名前は近隣にあるジャマイカ地区からきている。

 そのホテルには顔を包帯で覆い、目を黒いサングラスで隠した奇妙な男が泊まっていた。

 チップを置いていくこともせずに、従業員に自分を一人にするよう頼む。しかし、宿屋の主人と半分ヒステリックになっている妻が部屋をめちゃくちゃにして他の宿泊客を追い出した男に出て行くよう頼むと、男が狂ったように笑いながら包帯を剥ぎ取って主人を階段から落とすことで、彼が透明人間だったという秘密は明らかになってしまう。彼は服を全部脱いで透明な姿を現すと、警官を絞め殺しにかかる。


 透明人間の正体は、ファイロンと呼ばれる不思議な新薬の実験を行っているうちに透明化の秘密に気づいた科学者ケネス博士であった。彼は師であるフォレスト博士のいるラボに戻る。そこには彼の秘密を漏らした元同僚のリチャード博士と、ケネスのフィアンセであるメアリーもいた。ファイロンはケネスの肉体全体に行きわたり、ケネスは人間の目には完全に見えない肉体となった上、狂気のとりこになってしまう。


 宿屋から逃げてきたその夜、ケネスはリチャードのリビングに現れ、リチャードを監禁する。彼はリチャードに、宿屋へ一緒に戻って自分の書いた透明化に関する書物を取りに行くよう脅す。そこへ警官がやってくるが、ケネスに木製のスツールで殴り殺される。


 リチャードはメアリーに助けを求め、リチャードの秘書は警官を呼ぶ。メアリーもやってきて、警察が来るまでの間ケネスと会話を交わす。会話の内容は、ケネスとメアリーが互いに夢中になるほど愛し合っているということがわかるものである。


 ケネスは力について大言壮語を吐くが、警察が来たのを見てリチャードが自分を裏切ったことに気づき、まず最初にメアリーを外へ避難させることにする。彼女は一緒にいたいとせがむが、ケネスに「僕ができることは君を逃がすことだけだ。そうなったら警察は君に手出しができない。さあ行ってくれ」と説得されてしまう。


 リチャードを翌日の午後10時に殺害すると予告した後、ケネスは再び逃走し、人を殺したり、強奪したり、悪意のある声でわらべ歌を歌ってみせながら通りを駆け抜ける。すると、透明人間でなくなってしまう。警察はケネスを捕まえる方法を見つけた人に賞金を与えることにすることを発表した。


 リチャードは自分を守るために、警察官の一人に変装することになったが、ケネスはその様子をずっと見ていて、リチャードの手を縛って乗用車の前の席に乗せ、緊急ブレーキを解除して逃走する。車は丘を転げてがけから落ちて爆発する。それから電車を脱線させて、捜査に協力していた警官2人をがけへ投げ飛ばし、納屋へ隠れるが、農夫からの通報で警察が納屋へ火を放ってしまう。ケネスが納屋から出てきたとき、雪の上の足跡や炎に照らされて見える、ひどい重傷を負ったケネスを見つける。


 彼は死の床でメアリーに、ある種の科学の力が自分を孤独にしたと語る。


 ジョンは透明人間だが、悪業を行うと人間に戻ってしまう。


 2005年4月 宇都宮

 幼い頃からの親友である少年、宇賀神と田中は列車強盗を企てようとするが、未遂のまま追跡に遭う。逃走も虚しく宇賀神は警察に捕まり、田中だけがその場から逃げ仰せた。少年鑑別院送りとなった宇賀神は悪名高いギャングへと成長し、一方で田中は聖職者の道を歩んでいく。


 15年後、宇賀神は釈放されて地元へ戻る。そこでは神父となった田中が少年たちの善導にあたっていたが、宇賀神と知りあった不良少年たちがたちまち宇賀神に憧れを抱く。また宇賀神は悪徳弁護士の雪、闇の実業家で地元の有力者、武者と関わりを持っていた。田中は闇社会の不正を告発するまえに、宇賀神に警告をするが受け流されてしまう。そして公の注意を引くやり方で一切を告発し始める田中に対し、武者らが抹殺を企む。その計画を知った宇賀神は親友を守るために武者らを殺害し、警察を相手どって派手な銃撃戦を繰り広げた結果、宇賀神は逮捕されて死刑を宣告される。


 死刑執行の直前、宇賀神の独房に田中がやってきて、死を恐れて泣きわめき、臆病者のふりをして欲しい、と願いを乞う。それを知れば少年たちがギャングの宇賀神を偶像視しなくなると考えてのことだった。しかし、宇賀神はおのれのプライドからそれを拒み、何ものに屈しない強い姿のまま死ぬと言う。いよいよ絞首台の前に連行された宇賀神は最期の一瞬で豹変する。死を拒絶する大悪党を見た立会人たちは、宇賀神をみじめな臆病者と罵る。その最期を聞いた少年たちは宇賀神に失望し、彼に祈りを捧げるよう神父、田中に連れていかれる。


 2020年4月17日

 宇都宮に赤い龍が現れたって噂を聞いた。『龍辞典』って言うのを俺は読んでいた。

 ブリテンの大君主ヴォーティガン(ウルティゲルヌス)は、サクソン人傭兵の反乱によりウェールズ方面へ退却した後、魔術師たちの助言をうけて堅固な塔を建設しようとした。ところが塔を築こうとしても基礎が一夜にして地中に沈んでしまう。そこで王はふたたび魔術師たちに相談すると、生まれつき父親のいない少年を探し出してその血を礎石のモルタルに振りかけるがよろしいと言われる。そして夢魔を父に持つ少年マーリン(メルリヌス)が生贄として見出され、王の前に連れて来られる。王が事情を説明すると、少年は「魔術師たちを呼んできて下さい、かれらの嘘を証明致しましょう」と言った。そして王と招集された魔術師たちの前で「王様、土を掘り起こすよう工人たちに命じて下さい、そうすれば塔の基礎の地下に水たまりが見つかるでしょう、そのせいで基礎が沈んでしまうのです」と告げた。ヴォーティガンが半信半疑のまま塔の下を掘らせてみると、はたして水たまりが出てきた。マーリンは王の魔術師たちに向かって「嘘の上手なおべっか使いの方々、水たまりの下には何があるかご存じですか」と問いかけ、王には「池の水を抜き取るよう命じて下さい、すると水底には空洞になった石が二つあって、その中に竜が眠っているでしょう」と言った。ヴォーティガンが水を抜かれた池のほとりに座していると、赤い竜と白い竜が出現して戦いを始めた。一時は劣勢と見えた赤い竜は、勢いを盛り返してなんとか白い竜を退かせた。驚いているヴォーティガンに、マーリンは、赤い竜はブリトン人で白い竜はサクソン人だと説明した。さらに、「この争いはコーンウォールの猪が現れて白い竜を踏みつぶすまで終わらない」と予言した。彼の予言は、コーンウォールの猪ことアーサー王がサクソン人を破るという形で成就されることとなる。


 その後、ヴォーティガンはサクソン人とともに暴政を敷く。そのため大陸に逃れていた反乱軍が次々結成され、とうとうヴォーティガンは討ち死した。ヴォーティガンの死後、ブリタニアを治めていたアンブロシウス・アウレリアヌスも殺され、無政府状態となった。アウレリアヌスの弟ユーサー・ペンドラゴンは、サクソンとの戦いの最中で軍を率いていたが、その時、突然空に明るく輝く大きな星が現れた。その星はまるで燃える火の竜のようであった。光の尾を引き、その一つはガリアを指し、もう一つはアイリッシュ海を指していた。


「一体あの彗星は何を意味するのか」ユーサーは魔術師マーリンを呼んで尋ねた。そこでマーリンは兄アウレリアヌスの死を告げ、悲しみにくれながらも、ブリトンの民がサクソンに勝たねばならぬこと、あの星の筋がユーサーに生まれるという息子が立派な王になることを示していること、子孫は皆ブリタニアを治めていくだろうということを語った。


 ユーサーは兄の死を嘆きつつもサクソンに勝利した。新たなブリテンの王となったユーサーは、火の竜の星を記念して2匹の黄金の竜を作り、ペンドラゴン(Pendragon)という称号で呼ばれるようになった。この称号は、ウェールズ語(ブリトン語)で「竜の頭(あたま)」を意味する。


 ブリテン王スィッズ (Lludd) は恐るべき唸り声が五月祭前夜のたびに鳴り響く原因をつきとめるべく、弟のフランス王スェヴェリス (Llefelys) に尋ねた。スェヴェリスは、兄上の国の竜に他国の竜が襲いかかろうとしていて、そのためにブリテンの竜が恐ろしい雄たけび声を上げているのだと告げた。スェヴェリスは2匹のドラゴンを封印する策を進言した。ブリテン島の東西南北の中心地に穴を掘り、そこに蜂蜜酒を大量に注いた桶を置き、その上に絹の布をかぶせるという策略であった。 そうして準備を整えて見張っていると、相争う2匹の竜の姿が見えたが、そのうち激しい戦いに疲れ切って両者とも穴の中の桶の底に落ちていった。ドラゴンたちは蜂蜜酒の中でやがて酒に酔い、深き眠りについた。スィッズ王はこれを見て絹の布で2匹を包み、さらに石でできた箱に閉じ込め、地中深くに封印した(この場所は後にディナス・エムリスと呼ばれ、ヴォーティガンが砦を築いた伝説の舞台となる)。こうして竜は2匹とも封印されることとなった。


 以上の話は、『マビノギオン』の「スィッズとスェヴェリスの物語」で語られる3つの災禍の2番目に当たる。シャーロット・ゲストによるマビノギオン英訳では、この物語の中でディナス・エムリス(英語版)に封じ込められることになる2匹の竜は、『ブリトン人の歴史』(9世紀)に登場するヴォーティガンと赤白2頭の竜の話(第42章)と関連があると解説されている。

 ヴォーティガンと2頭の竜の話はモンマスのジェフリーの『ブリタニア列王史』(12世紀)に翻案された形で取り入れられたが、『ブリトン人の歴史』では生贄にされそうになる少年はアンブロシウスという人物であるのに対し、『ブリタニア列王史』では代わりにアンブロシウスの名をもつマーリンが登場する(第6部17章から第7部3章まで)。『ブリタニア列王史』および『ブリトン人の歴史』のヴォーティガンと二頭の竜のエピソードでは、片方がブリトン人の赤い竜、もう片方がサクソン人の白い竜とされたが、「スィッズとスェヴェリスの物語」に出てくる2頭の竜の話では、ドラゴンの色についての言及はなく、プリダイン(ブリテン)の竜に襲いかかろうとしているもう一匹の竜についても他国の民の竜としか書かれていない。

 

 

 

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