第20話 大公巡行 悪夢vs幻夢
「レオポルド、マックスがいない今、お前が指揮をとれ」
「はっ、畏まりました」
ホルス大公様の命令で、わたしが中央部の指揮を任された。
前方と後方から襲撃を伝える叫び声が聞こえた後、この中央部に左右から襲撃が行われた。数は左右合わせて50人ほどであった。こちらには、約100名の騎士と、アラン達がいる冷静に処理していけば、押し返せるだろう。よし! やるか。
「エピジュメル、パウロス、Dr.メックス女史。右からの攻撃に対する守備の統率を頼む!」
「心得た!」
エピジュメルの返事が聞こえ、3人が駆けていく。さて、
「左からの攻撃は…」
「僕行くよ!」
「えっ!」
「リグルド様、お待ち下さい!」
リグルド様が、左に走っていってしまった。そして、それをビクターが、追いかける。
「すまない。パナジウム、サポートを頼む」
「わかりましたわ」
パナジウムが、2人をサポートするために駆けていった。リグルド様、大丈夫だろうか? まあ、ビクターがいる。とりあえず、心配ないだろう。さて、後の戦力は、
「アラン、ランドール、ハインリヒ。ここの守備を頼む。わたしと、ポルビッチは、大公様と宰相様を守りつつ、少し下がる。本陣は、ここにあるようにしておくから、もし攻めこまれたら、倒してくれ!」
「はい、畏まりました!」
わたしは、少数の大公直属の騎士団と共に、場所を移動する。よし、これで良いだろう。左右は大丈夫だろうか?
右手の攻防戦は、やや、大公側が押されていた。しかし、エピジュメル、パウロス、Dr.メックス女史の登場で、押し返し始めた。
「あんた強えーなー」
「貴様、何者だ!」
「俺は、ダークネス様の一番弟子のバレンドルだ。で、あんたは?」
「ホルス大公家、剣術指南役エピジュメル」
「あっ確か気水流の人だっけ? だったら交代しようっと、メッセンさんよろしく!」
「なっ、メッセン?」
白銅色の神剣を構えた、男がエピジュメルに近づく。
「ご指名のようですので、よろしく。わたしの名は、メッセン=フォン=シュヴァリエ」
「本物か?」
「戦ってみればわかるでしょう」
「ってことで、俺の相手はあんた。で、誰?」
「我が名は、パウロス。ホルス大公家槍術指南役だ!」
「で、何流? 元祖? 本家?」
「槍術本家光陽流だ! 我が槍をくらって覚えておけ!」
パウロスが、素早く槍による連激を繰り出す。しかし、間一髪で、すべてバレンドルがよける。
「ふー、びっくりした。じゃあ、次はこっちからいきますね!」
バレンドルの、素早く重い一撃が、こめかみを襲う。慌てて、槍の柄で受け止める。その後も、左右への袈裟斬り、左右への胴斬り。そして、徐々に速くなっていく。パウロスは、途中受け損なうことが増え、手傷をおっていく。そして、我慢出来ずに大きく飛び退く。そして、
「光陽流奥義百激槍!」
バレンドルに突っ込んでいきながら、高速の連続突きを繰り出した。
「雷鳴流奥義風神!」
バレンドルは超高速で、突っ込んでいきながら、かわし飛び込んで、袈裟斬りに斬る。
「ウワッ!」
パウロスが、血飛沫を上げて倒れる。そして、
「ザクザクザクザクザクザク」
倒れた、パウロスに剣を突き刺し続けた。最初、ピクピクと、動いていたパウロスは、最後動かなくなった。
バレンドルは、パウロスの槍を取り上げて、地面に斜めに刺すと寄りかかる。
「こっちは、終わり。あっちはどうかな?」
エピジュメルと、メッセンは向き合ったまま、動かない。すでに、パウロスとバレンドルの戦いは、終盤を向かえていた。しかし、エピジュメルは、動かなかった。いや、動けなかった。頭から、汗が流れ滴り落ちる。そして、静かに、メッセンが呟く。
「気水流奥義鼓月」
メッセンの剣が、下段に構えられ、そして、ゆっくりと時計回りに、切っ先が円を描くように動く。返し技が多く、攻撃技が少ないと言われている気水流の、視覚効果も利用した一撃必殺の突き技。それは、エピジュメルも理解していた。
「気水流奥義明鏡止水!」
気水流の奥義絶対防御技。どんな技も見えれば返せる。ただし、見えれば。
メッセンの突きは、エピジュメルの腹部に刺さる。
「グフッ!」
血を吐きながら、エピジュメルが倒れる。
「運が良ければ、また、再戦しましょう。わたしも、剣聖クレストに負けて、再戦を目指してますので、では。次、行きますよ。バレンドル、オウゼン」
「はっ」
「はい、はい、はーい」
バレンドルは、パウロスの槍を引き抜き担ぐ。そして、右側を突破した3人は、中央へ向かった。ただ、3人のいなくなった右側の攻防は大公側に優勢になっていく。
それを見届けると、Dr.メックス女史は、エピジュメルに慌てて駆け寄り、治療を開始した。
一方、左側の攻防は、圧倒的に攻め寄せた側の優勢になっていた。
「ハハハハハハハハハ、いかがかしら? たまには、騎士の皆さんも魔法攻撃はどうかしら?」
元々魔法攻撃には弱い騎士達は逃げ惑う。帝国の優秀と言われている魔術師達も、圧倒的火力の前に、防御するので、精一杯だ。そして、
「アズアリンさん、あまり殺さないで下さいよ。こちらの都合もあるのですから」
「申し訳ありません。ダークネス様」
こちらにいたのは、ダークネス、そして、メイリン=ビューティーを孫に持つ、アズアリン=ビューティー。ビューティー商会の創業者にして、会長だ。そして、見た目30代、とても孫がいるようには見えない。
「リグルド様、先行しては、危のうございます。自重してください!」
「大丈夫、大丈夫。僕は学校でも最強だったんだから」
そして、リグルド、ビクター、少し遅れてパナジウム=フォンキューリーこと、パナがあらわれる。
「かかってこい。リグルド=フォン=ローデンブルクが相手だ」
「ほー。ローデンブルクですか」
「リグルド様!」
「これは、これは、兄上ではありませんか」
「お前は、ダニエル」
「フフフハハハハハハ! 今日はなんて素晴らしい日なのでしょう。兄上に会えるとは、たかが子供に敗北し、あまつさえ、左手と右目を失ったのに、無様に生き延びている屑に」
「ビクターの悪口は言うな!」
「リグルド様、お待ち下さい!」
リグルドが、ダークネスに斬りかかる。かなりのスピードだ。しかし、
「キィン!」
ダークネスは、リグルドの剣をあっさり受け止めると、リグルドをおもいっきり蹴り飛ばす。リグルドは、地面すれすれを、土煙をあげながら、飛んでいった。
「リグルド様! 大丈夫ですか?」
「大丈夫だ。ビクター、次こそは」
「いえ、ここは、わたしに任せてください」
「だけど」
「大丈夫です。勝ちますから」
「わかった、ビクター。任せる」
「はっ。パナさん、サポートお願いします」
「わかりましたわ」
そして、ダークネスと、ビクターは向き合う。
「兄上、わたくしに勝てると思っているのですか?」
「やってみなければ、わからない!」
「はー。わかりました。では、最初から、兄上の得意だった、奥義をぶつけあいますか」
「なんだと?」
「いきますよ」
「雷鳴流奥義雷神!」
「くっ、雷鳴流奥義雷神!」
「バリバリバリ!」
空気の切り裂かれる音が響き、2つの影がぶつかり合う。
「ウッ!」
ビクターが、膝をつく。そして、遠くの地面にビクターの剣が突き刺さる。剣を持っていた、腕ごと。
そして、背後からゆっくりと、ダークネスが近づく。
「だから言ったでしょ、勝てないって。では、さよなら、兄上」
ビクターの体が、背後から斬りさかれた。ビクターの体は、左右に別れ、倒れた。
「ビクター!」
「リグルド様、駄目です」
リグルドは、また、ダークネスに斬りかかる。そして、同じく剣をあっさり受け止められ、蹴り飛ばされた。
「しつこいですね」
ダークネスは、そのまま駆け寄ると、剣を振り上げた。そして振り下ろす。
「リグルド様、危ない!」
パナが、飛び込む。剣は、パナにあたり、斬り裂く。と、
「雷鳴流奥義風神!」
「キィーーン!」
アランが、駆けつけ、剣を弾き上げる。そして、ダークネスが膝をつく。
「大丈夫ですか? パナさん」
「はい、なんとか」
「リグルド様は?」
「気絶しているだけですわ」
「良かった。後は、僕に任せて退避してください!」
「わかりましたわ。では」
リグルドを抱えた、パナが走り去るとアランは、立ち上がった。ダークネスと向き合う。ダークネスの、口元には、血が一筋流れている。それを舐めながら、ダークネスが、アランに話しかける。
「フフフ、わたくしに怪我をさせたのは、久しぶりですよ。良いですね。名前は?」
「マクシミリアン=フォン=ローデンブルク様家臣、幻夢騎士団長アランチェス」
「幻夢騎士団、良い名だ。アランチェスさん、良く覚えておきます。わたくしは、傭兵騎士団ナイトメア首領ダークネス。以後お見知りおきを」
ダークネスは、赤銅色の神剣を構える。そして、アランは、灰色の神剣を構え、もう一本の剣も抜く。あい変わらずの二刀流。
アズアリン=ビューティーの魔法による攻撃が吹き荒れる中、激しい戦闘が始まった。
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