第17話 ヴァルド王国王宮襲撃事件
マスターゴーラン謀殺事件と前後するように、大事件が起こる。場所は、ヴァルド王国王宮。ヴァルド王国らしい、さっぱりとした簡素な作りの玉座の間だ。
「貴様何者だ! グワッ!」
扉が弾け飛び、警護の騎士が血まみれで転がってくる。そして、5名ほどの男達が入ってくる。全員が紫色の軍服を着て、一人はその上から、同じく紫色のローブを羽織っている。
「いくら自由で開放的な王宮って言っても、これではあまりにも不用心では、ありませんか?」
「何者だ?」
ヴァルド国王、デルタ11世が誰何すると、
「お初にお目にかかります。わたくし、最近三剣になりましたダークネスと呼ばれる者です」
「そのダークネスが、何用だ?」
「特に国王陛下に用事というわけではありませんで」
と言っていると、ダークネス達が入って来たのとは違う、玉座左手の扉が勢い良く開く。
「陛下大丈夫ですか!」
黄色騎士団長エレナ、そして数名の騎士団員。そして、クレストジュニアとレオナの兄妹。
「おお、これは、これは、探す手間が省けました。わたくしが用事があるのは、そこにいる兄妹なのですよ」
「貴様、玉座の間でなんたる不遜、成敗してくれる!」
エレナは叫ぶと、ピンク色の神剣を抜き構える。そして、団員達も剣を抜く。
すると、ダークネス達も剣を抜き構える。ダークネスと呼ばれる男は、赤銅色の神剣を、その隣に立つ男は紫色の神剣を抜いた。
「バレンドル。そこのお嬢さんのお相手をして、あげなさい。わたくしは、」
ダークネスは、ヴァルド国王デルタ11世の方を見る。
「国王陛下、お相手頂けますかな?」
「うむ、よかろう。その赤銅色の神剣、マスターゴーランのものであろう。どうしたのだ?」
「マスターゴーランと戦い、勝って殺害して奪い取りました」
「そうであったか。せっかく訪れるとの伝言をもらって、一緒に酒を飲むのを楽しみにしていたのだがな」
「それは、それは、失礼しました。あの世で仲良く酒を酌み交わさせて、あげたい所ですが、そういうわけにもいきません。申し訳ありませんね」
「貴様、減らず口を!」
ヴァルド国王デルタ11世は黄色の神剣を抜くと、その切っ先をダークネスに向けた。
「誰だ?」
剣聖クレストによる、赤色騎士団員の稽古中であった、ヴァルド王国の王宮外周広場に、2人の男が近づいていった。
「はじめまして、剣聖クレスト様。わたしは、メッセン=フォン=シュヴァリエ、後ろにいるのは、わたしのお付きの魔術師、オウゼンです」
「何の用ですか?」
「あなたに一手御指南頂きたい」
「わたしは、今、赤色騎士団の指導中なのです。後にしてもらえませんかね?」
「そうですか。それでは、国王陛下がどうなっても良いと」
剣聖クレストは、慌てて振り返る。そして気配を探る。そして、慌てて王宮内部に走って行こうとするが、メッセンが立ちふさがる。
「助けたいなら、わたしを倒すことです。それも一刻も早く」
「くっ、ではいくぞ!。最初から本気でいく、死んでも恨むなよ」
「望むところです」
剣聖クレストは金色の神剣を抜き、メッセンは白銅色の神剣を抜く。剣聖と三剣の戦いが始まる。そして、アレリアが、オウゼンがそれぞれに魔法をかけ、身体能力をアップさせる。
「養魔剣神流奥義神界!」
「気水流奥義水鏡!」
クレストのいきなりの奥義発動に、メッセンも対抗する。クレストは猛然とメッセンに突っ込むが、剣が振るわれると、メッセンの姿は揺らぎ、消えて、背後から剣を繰り出す。それを恐るべき身体能力で、かわすと。さらに攻撃をしかける。
クレストのスピードに、メッセンの技術が徐々に追い付かなくなっていく。そして、
「ウッ!」
クレストの攻撃がヒットして、メッセンが弾き飛ばされる。
「メッセン様!」
「大丈夫だ。オウゼン」
メッセンは、よろよろと立ち上がると、再び構えをとる。そして、
「今度は、こちらからいきますよ」
「気水流奥義鼓月!」
剣を下から時計まわりに、ゆっくり回していく。そして、上に向いた瞬間、超高速で、突き技を繰り出す。クレストから見ると剣とメッセンが重なった瞬間、メッセンの姿が消え、剣のみが、高速で近づくように見えた。
そして、メッセンの剣がクレストを突き刺す。しかし、刺されたはずのクレストが消える。
「養魔剣神流奥義魔界だよ。魔力で分身体を作りだしたんだ」
「くっ」
「そろそろ、終わらせてもらうぞ」
「養魔剣神流奥義絶界!」
クレストの全身の魔力が剣に集束する。そして、クレストがメッセンに向かって衝撃波を放つ。
「気水流奥義明鏡止水!」
メッセンも絶対防御をするが、クレストの剣から出た衝撃波が走り抜ける。メッセンの体が、大きく吹き飛ばされ、かなり遠くで落ちる。
「メッセン様!」
「安心しろ、殺してはいない」
クレストは、そう言うと、背を向け宮殿に向かって駆け出した。アレリアが、赤色騎士団員も続く。
「メッセン様! 今、治療致します」
「オウゼン、完敗だ。手も足も出なかった」
「生きているのです。再戦すれば良いのです」
「そうだな。鍛え直しだ」
ほぼ同時刻、宮殿内部の戦いも決着がつきはじめていた。
「わたしの勝ちね」
「くっ」
エレナとバレンドルの戦いは、養魔剣神流の奥義神界によって身体能力をアップさせたエレナが圧倒した。
しかし、
「おっと、そこまでです。あなたの大切な人が死んでしまいますよ」
「陛下!」
「俺としたことが、こんな奴に負けるとわ」
ダークネスとヴァルド国王デルタ11世との戦いは、三剣のダークネスが勝った。そして、ダークネスは、デルタ11世の首筋に剣を当てつつ
「バレンドル、何をやっている。早く立ち上がって、兄妹を連れて来なさい」
「はっ、申し訳ありません。ダークネス様」
バレンドルは立ち上がって、クレストジュニアとレオナを捕らえる。そして、素早く、手刀を打ち込み気絶させると、担ぎ上げる。
「先に帰ってなさい」
「はっ、では」
「待て!」
「おっと、動かないでください」
バレンドル以下、騎士や魔術師が扉から出ていく。エレナが追いかけようとするが、それをダークネスが止める。そして、
「では、わたくしもこれで」
「あなたの目的は何? あの子達をどうするつもり?」
「ただ、クレスト様にやって頂きたい仕事があるだけです。あの子達には何もしませんよ。仕事が終わったらお返しします。仕事内容は、伝言で、届けますので、よろしくお願いいたします。では」
そう言うと、デルタ11世の体を放り投げる。
「陛下!」
エレナが、デルタ11世の体をキャッチして、視線を戻すと、ダークネスの姿はなかった。
と、その時、クレストが駆け込んでくる。
「エレナ、大丈夫か? 何があった?」
「申し訳ありません。お子さん達を連れ去られてしまいました」
「な、何! 誰がそんな事を!」
「ダークネスと名乗っていました。それで、クレスト様に仕事を頼みたいと、仕事が終われば、お子さんを返すと」
「ふざけるな!」
「ひっ、すみません」
「エレナ、ごめん。子供たちを使うとは、なんと卑劣な」
「すぐに追っ手を差し向けます」
「ふー。エレナ、無駄ですよ。あの男が、追っ手によって見つけられるような、へまはしないでしょう」
「ですが」
「仕事をすれば良いのでしょう? ただし、子供たちにもしものことがあったら、奴を地獄の底まで追いかけて、殺しますよ」
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