第14話 ヨハンとガイの卒業式
クリスマス休暇も終わり通常業務に戻る。とりあえずは、復帰がてらに、皇帝陛下にご挨拶
「今年もよろしくお願いいたします。そして、結婚式での祝伝ありがとうございました」
「うむ、よろしく頼む。そうであったな、結婚あらためておめでとう」
「はい、ありがとうございます」
この後、近衛騎士団長さんや、宮内卿、そして侍従長さんとも会談すると、あらためて結婚祝いを言われた。話は主にヴァルド王国の侵攻の話。
「と言うことは、ヴァルド王国は演習がてらに攻めこんできたと」
「確実ではありませんけど、それが一番近い形かなと。帝国軍の錬度の確認と、自軍の演習兼ねてかと思います」
「だとすると、我々にとっても良い演習だったという訳か?」
「実際に殺しあう演習なんてろくでもないですけどね」
「そうだな」
「そう言えば、今回筆頭騎士は、マキシであったそうだな?」
「はい」
「帝国自体の筆頭騎士もマキシになるそうだが、いよいよレイフォード卿も騎士引退か?」
「まだまだ、元気ではないですか」
「うむ、仕事は好きみたいだな。しかし、戦うのはもういいと言っているようだぞ」
「そうなんですか」
う~ん、筆頭騎士のこと僕聞いてないぞ。そして、レイフォードさん、本気かな? 引退。
レイフォードさんが引退ってことになると、レイフォードさんの持つ、緑の神剣が浮くことになる。誰が受け継ぐのか? 僕が知っている中で最強はアラン。しかし、すでに神剣を持っている。次は、ビル先輩だが、この前の僕の暗殺騒動の時の聖剣をあげた。
しかし、今のところ、候補筆頭かな? この前、ヴァルド王国のピンクの天剣エレナさんとも互角に戦っていたし。そして、ランドールは、ハインリヒの魔導剣を使う。後は、同じく地剣のレオポルド。このくらいかな? いや。いたな、もう2人。そうか、卒業式行ってみるか。
帝国歴350年6月3日。僕は久しぶりにレイリン騎士学校を訪れた。ジョスーに戻り、少し滞在して、リリアちゃんと、ゆっくり過ごし、領内の状況も視察した後、北へ、向かった。お供は、ビル先輩と、ジロー。最近この組み合わせ多いな。まあ、家臣というよりは、気楽な飲み仲間って感じなのだ。
「卒業式出て何するっすか?」
「ヨハンとガイの力をみたいんだよ」
「ヨハンとガイか。なるほど、勧誘か?」
「勧誘ってわけではないですけど。マスターゴーランに鍛え上げられた、2人がどれだけ強くなったかな~って」
「本気だすんっすか? 殺しちゃダメっすよ」
卒業式が始まる。
「卒業生代表ヨハン=フォン=シュヴァリエ」
「はい!」
卒業生代表は、ヨハンだった。まあ、頭も良さそうだしな。というか、錬身流、優秀すぎ。
卒業式後、ガイに声をかける。
「あれっ? マックス先輩どうしたんですか? 僕達の卒業祝いに来てくれたんですか?」
「それもあるけど、ちょっとね」
「そう言えば、僕、マスターゴーランと旅しているんですよ。一旦剣術大会と卒業式のために戻ってきましたけど、終わったら旅再開です」
「そうか。楽しそうだな」
「はい、めちゃくちゃ楽しいです」
「で、ヨハンはどうするんだ?」
僕はガイと一緒にヨハンの方を見る。女の子に囲まれもみくちゃだ。エリーゼちゃんも、その中にいる。
「ヨハンは、やっぱりお兄さん探して旅に出るそうです。」
「ふーん。相変わらずと言うか、凄い執念だな。勝てるのか?」
「ヨハンも、凄く強くなりましたよ」
「ふーん、それにしても、凄い人気だね」
「本当に羨ましいですよ。ヨハンの旅に、エリーゼちゃんまで同行するし」
「ガイ、エリーゼちゃん好きなのか?」
「えっ、いや、そういう訳でもないわけでも、ないんですが」
「どっちだよ? それ。まあいいや。僕は、演習場にいるからヨハンと一緒に来てね」
「演習場ですか? わかりました。後で行きます」
演習場にビル先輩、ジローと立っていると、ヨハンとガイがやってきた。僕達は、幻夢騎士団の装束に身を包んでいる。
「お待たせしました。マックス先輩、わざわざ演習場って、何するんですか?」
「いや、ヨハンとガイって、わざわざマスターゴーランが修行するくらいの才能あるっていうことだから、どのくらい強いのかなって、思ってさ」
「それで、戦ってみるということですか? 騎士能力なしの剣術でも、僕は倒せるかもしれませんけど、ガイは無理ですよ」
「へー、そんなに強いんだ? ガイ」
「はい、最後の剣術大会負けました。完敗でした」
「ヨハン君。それは、僕の身体能力が高いからで、技術では、ヨハン君だよ」
「そうだよ。だけど、騎士能力含めて僕が全力で戦って、今はほぼ互角。ガイ、お前がいたから、俺も強くなったって思う」
「ヨハン君」
「いいね。ライバルは。で、剣術じゃなくて、騎士能力含めて全力で戦ってみようかなと思っているんだけど、どう?」
「1年の時は負けましたけど、今は負けないですよ。言っちゃ悪いですけど」
「ガイは、どう思う?」
「僕は、マックス先輩に直感を磨けって言われました。その直感が言ってます。絶対戦っていけないって」
「ガイ、何言ってんだ?」
「僕の名前は、マクシミリアン=フォン=ローデンブルク。マクシミリアンの部分を略して、マックスって呼ばれたり、マキシって呼ばれたりするよ」
「えっ、マキシ?」
「狂剣の人形って呼ばれたり、帝国筆頭騎士にさせられたりしているね」
「本当ですか?」
「やってみればわかるよ。2対1で、良いからね」
「ガイ、やるぞ」
「えっ、ヨハン君?」
「本当だったら、マスターゴーランを越えて、騎士最強クラスと戦えるんだ」
「わかったよ。ヨハン君」
2人が構える。こんな口調だが、ヨハンは、僕より少し身長は低いが、引き締まった柔軟な体をしているし。ガイは、2m近い身長があり、ガチッとした筋肉質の体をしている。2人とも、すでに20歳になる年だ。
「行くぞ!」
「はい!」
それぞれが構える。錬身流の中段の構え。そして、僕は
「陽炎乱舞!」
16体に別れると、それぞれに8体ずつ向かわせる。すっかり、僕の得意技だなこれ。
「錬身流奥義玄武!」
ガイが、全力で土下座する。衝撃波と砂煙が沸き上がり、僕の分身体が巻き込まれ消える。そして、ヨハンは、
「気水流奥義明鏡止水改!」
気水流の絶対防御、欠点を改造したようだ。8人の分身体の攻撃を防いでいる。けど、数が多すぎて、構えが崩れていく。そして、ヨハンは大きく飛び退いた。すると、そのタイミングで、ガイが飛び込んできて、ヨハンの背中側で剣を構える。
「ヨハン大丈夫?」
「ああ、ありがとうガイ」
良いコンビネーションだ。そして、ヨハンも素直になったものだ。
僕は、分身攻撃をやめて、2人にせまる。ヨハン、ガイと斬り結ぶ。激しい攻防が繰り広げられる。ガイと斬り結ぶ度に手がしびれ。ヨハンの素早い攻撃を間一髪で避ける。強いな。本気だそう。
僕は大きく距離をとる。そして、力をこめる。全身に力がみなぎる。
再び2人と斬り結ぶ。僕が袈裟斬りに剣を振るう、ガイが剣を斜めにして受け止める。と、ヨハンが、下方より、腰の辺りを狙って斬り込んでくる。僕は、少し下がってヨハンを突こうとするが、ガイが素早くフォロー。といった、激しい攻防が繰り返される。
戦闘のスピードは、さらに上がる。そして、均衡が崩れる。ガイがスピードについていけなくなり、ヨハンに攻撃が当たる。
「ウワッ!」
「ヨハン!」
「馬鹿、余所見するな!」
吹っ飛んだヨハンを、一瞬見たガイの懐に飛び込む。そして、腕を極めて投げる。そして、膝を落とす。
「ゴフッ」
ガイの口から、血が吹き出す。
「ガイ!」
今度は隙が出来たヨハンに、高速で、近づくと、ヨハンを蹴り飛ばす。地面を砂埃をたてつつ、滑っていき動かなくなった。気配を感じて振り返ると、ガイが立っていた。本当に頑丈だね。
「まだやる?」
「いえ、負けました!」
「でも、強くなったね」
「はい、ありがとうございました」
僕は、ジローに2人の治療を頼む。そして、騎士学校を後にした。
「騎士の頂点は、遥かなる高みに存在したな」
「うん」
「でも、兄貴には手が届く、いずれ倒すさ」
「うん、頑張ってね」
「ガイもな。マスターゴーランとの旅気をつけろよ」
「ありがとう。でも、マスターゴーランとの旅は、1・2年だね」
「その後は、どうするんだ?」
「高みを目指すよ」
「えっ?」
「マックス先輩の所で、腕を磨くよ。いずれ、一緒に戦えるように」
「あれを見て、さらに高みを目指すか。ガイ、お前凄いな」
目の前で、その体躯に似合わない、少年のように目をキラキラさせているガイが、正直羨ましかった。
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