第7話 マックス漫遊記その2 不穏な動き
社会人になっても夏休みはある。短いけど。比較的涼しい、大公屋敷で夏休みを過ごす。リリアちゃん含めて、家族でのんびりと。
「マックス様~。お背中流しますね」
「えっ」
「どうされたんですか?。マックス様」
「リリアちゃん、裸」
「お風呂は裸で入るものですよ」
うん、結婚したんだし、良いんだけどね。気恥ずかしい。
そう言えば、結婚式は、クリスマス休暇に行うことにした。みんな出てくれるかな?
そして、夏休みの終わり、アランが帰ってきて。
「北の方にいたのですが、少し騒がしいですね。ヴァルド王国動くかもしれません」
「そうか。となると、叔父様にも言っておいた方が良いかな」
「あくまでも、僕の勘ですけど」
「アランの勘は当たるよ」
そして、さらにソムチャイから、
「前話していた州刺史のホルス一族の方ですが、やはり動きがおかしいです」
「どうしたの? 賄賂の人でしょ」
「はい。それが、郡守や、県令からの訴えを中央に伝達していないようで、流石に騒ぎになっておりまして」
「ふーん、で、どんな情報?」
「近隣の帝国従属国の動きがおかしいと」
「場所は?」
「北でございます」
ちょっとまずいかな? 叔父様とお父様に伝えて、北に向かうか。だが、十公会議に間に合わないか?
「うん、マックス頼んだ。ヴァルド王国が本格的に動いたら大変だ。十公会議には、誰か代理出席させて、北へ、向かってほしい」
「はい。了解しました。お父様」
リリアちゃんとお父様、お母様、リグルド達を駅まで見送ると、僕達は北へ、向かった。まず、州刺史の屋敷があるジャンジンに向かう。街道をひたすら馬で北上する。メンバーは、僕、ランドール、ハインリヒ、アラン、ソムチャイ、ビル先輩、ジローの計7人。
街に入ると、街は変わりないように見えた。しかし、宿に入ると状況は一変した。宿は、大小の違いはあるが、行商人達でいっぱいだった。話を聞くと、北に向かう予定だった商人は、一部の北方従属国の動きが慌ただしいため、北に行くのを躊躇い、そして、北から移動してくる商人も多くこみ合っているそうだ。
この状況を州刺史は、中央に報告していない。ただ巻き込まれたくないだけか、それとも。
しばらく、州刺史屋敷を張ってみるが、怪しい人の出入りはない。
「これはあれか? ただ面倒くさいから、報告上げなかったってやつか? どう思う。ハインリヒ?」
「かもしれませんね」
「う~ん、ソムチャイは、もう少し探ってみて、僕達は、動きのおかしい従属国に向かおう。えっと、どことどこ?」
「はい、剣聖クレストの国モルディニア国と、その関係国サルディニア王国。そして、ネルソン王国です」
「わかった。えっと、僕とジローで、モルディニア。ランドールとハインリヒで、サルディニア。アランとビルでネルソンに探りをいれよう。ただし、無理はしない」
「は、畏まりました」
僕達は、帝国最北の街に移動すると、それぞれ別れて、帝国従属国に入った。
「北って初めてっすけど、結構涼しいっすね」
「ちょっと標高も高いみたいだからね。夏でも比較的涼しかったよ」
「へー。で、街は騒がしいっすね。これは、戦いの準備っすよね」
「うん、そうだね。ただ、この準備がどちらに向けられるかだね。帝国にか? ヴァルド王国にか?」
「なるほどっすね」
僕達は、街中を歩き回る。剣聖の屋敷にも行ってみるが、人の気配がない。空き家のようだ。
そして、しばらく国府宮殿を監視してみる。そして、1週間ほどして、全身をローブで覆った。6人ほどの集団がやってきて、国府に入り、翌日宮殿を出ると、北に向かって馬を走らせた。
僕とジローも慌てて馬で追う。僕の索敵範囲には捉えるが、それよりは近づかず、一定の距離を保って追う。そして、ヴァルド王国に近づきつつあったその時、一頭の馬が立ち止まった。他の馬は、スピードはそのままに北上していく。気づかれた? この距離で? それよりは、何か理由があって止まったと考えた方が良いのじゃないか? 逆に急に僕達が止まれば不信感をいだかれる。
「ジロー、1人止まったけど、理由がわからない。警戒しつつ、このまま走る」
「了解っす」
止まった1人と距離が縮まる。見えてきた。フードで顔は、隠れているが、馬を降りて道の真ん中に仁王立ちしている。そして、声が届く範囲にくると。
「そこの2人止まりなさい!」
僕達は、馬のスピードを緩める。そして、
「何かあったっすか?」
「ふん、白々しい。あなた達、わたし達をつけてきてたでしょう」
「いえ、そんなことしてないっす」
「わたしは、魔力探知できるの。そして、その範囲が広いの。あなた達は、わたし達を追いかけてきてた」
「たまたまいく方向が一緒だったす」
「問答無用!」
フードを脱ぎ捨てる。金色の長い髪が風になびき、長身の女性が現れた。黄色い軍服を着ている。そして、白い肌に青い目。そして、意思の強そうな顔。
「わたしは、剣聖クレスト様の1番弟子にして、ヴァルド王国黄色騎士団騎士団長。エレナ=ナプルスカヤです」
「おうしょく騎士団っすか?。」
黄色騎士団、ヴァルド王の持つ神剣が黄色であることに由来する。国王直属の騎士団のしかも、騎士団長か。しかも、剣聖クレストの1番弟子?
そして、エレナさんは、剣を抜いた。ピンクの神剣だ
「天剣ですか。僕もそうなんですよ。お初にお目にかかります。漆黒の天剣マキシ=フォルスト=ホルスです」
僕は、ピアスを外しつつ、馬から降りて漆黒の神剣を抜いて構える。
「えっ、マキシ?」
エレナさんは、警戒しつつ構える。そして、
「じゃあ、最初から本気で戦わないとまずいわね。養魔剣神流奥義神界!」
エレナさんの全身を凄まじい量の魔力が流れる。僕も全身に力をこめる。すると、エレナさんが凄まじいスピードで、こちらに向かってくる。僕も、高速で迎え撃つ。高速で移動しつつ激しい斬撃が戦わされる。
どうやら、エレナさんの使った奥義は、魔力を全身に流して、一時的に身体能力を向上させるものらしい。スピードでも、パワーでも互角だ。そして、技でも。お互いの攻撃で、かすり傷はできるが、膠着している。
しかしながら、エレナさんの、身体強化が延々続く訳でもなく、魔力の低下と共に、徐々に僕がおし始める。僕は隙をついて、エレナさんを投げ飛ばす。そして、僕は大きく飛び下がり、
「錬身流奥義玄武!」
僕は全力で土下座をする。すると、周囲に衝撃波が走り、もうもうと砂埃が舞い上がる。
「ジロー、逃げるよ」
「了解っす」
「えっ、なぜ?」
呆然とするエレナさんを残して僕達は全力で逃走した。どうやら追ってこないようだ。
「何で逃げたんっすか?」
「目的は、達成したし、あそこで戦うのもったいないしね」
「ヴァルド王国とつながっているってことっすね」
「そうだね」
アランとビルが、そして、ランドールとハインリヒが戻ってくる。そしてソムチャイも合流する。ソムチャイからの報告では特にヴァルド王国とのつながりなし。ただの職務怠慢。
そして、帝国従属国は、他の国々も同じように、なっているそうだ。まあ、北方方面軍から中央に報告は行っているはずだが、一応叔父様に従属国の動きを含めて報告しておくか。僕は、ソムチャイに伝言を頼む。そして、この時から約2週間後。
帝国歴348年9月22日ヴァルド王国軍は、国境を越え、帝国従属国のキリル王国に侵入。キリル高原に布陣した。
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