第2話 帝都に

「マックス様、わたしも一緒に行くように言われたのですが、聞いておられますか?」



 屋敷を出ようとすると、引っ越し作業中の、パナこと、パナジウム=フォン=キューリーに声をかけられる。慌ててお祖父様に確認すると、一言。「あっ、言うの忘れてた」お祖父様大丈夫だろうか?



 お祖父様曰く、優秀な人材は、どんどん必要だろ。とのこと。外交騎士のボルビッチ。指南役のエピジュメルとパウロス、そして、お祖母様の治療をしてもらう、Dr.メックス女史がいれば良いそうで、パナにどうしたいか聞いた所、ローデンブルク公爵領に移りたいと、いうことだったそうだ。



 という訳で、帰りの電車は、人数が多い。僕に、アラン、ジローに、パナ、そして、その娘。





「ほら、子供じゃないんだから、ちゃんと挨拶しなさい」


「はい、お母様。わたくし、セレン=フォン=キューリー です。よろしくお願いいたします」


「よろしく」


「よろしくっす」


「セレン殿、よろしくお願いいたします」


「セレンちゃんは、何歳ですか?」


「15歳ですわ。来年から、レイリン騎士学校に行かせるので、ジョスーからの方が近くて便利なのですよ」



 なるほど、さすが、パナ。と言うか、母は強しか? それと、パナって結婚してたっけ? 旦那さん、見たことないけど。パナが、今年38歳で、セレンちゃんが15歳か。ということは、23歳の時の子か? なんて考えていると、



「そう言えば、パナジウムさんって、結婚してるんっすか?」


「いいえ、しておりませんわ」


「じゃあ、セレンちゃんの父親って?」


「それは…」


「それは?」


「ひ・み・つですわ」



 満面の笑みで答えられた。気になるけど、聞けないな。この話。









 こうして、ジョスーに一旦帰ってきた。パナも加わって屋敷もだいぶ賑やかになってきた。さて、これからは、帝都にジョスーに行ったり、来たりかな。列車で、一本なのは楽だけど。





 ジョスー滞在中に、ソムチャイが帰ってきた。ちょうど良いな。レオポルド、パナ、アランに、ジローも呼び出して、話を聞く。



「ソムチャイ、ご苦労様。で、どうだった?」


「はい、ラビと名乗ったあの男ですが、ダルメディ帝国の魔戦士で、ウルバリア王国に客将として、出向していたようです」


「ウルバリア王国に出向。ってことは、あの赤の王子の命令か?」


「はい、ウルバリア王国王子、リンドルファン=ウルバリアの命令によるものかと。ただ、その後は、シルバーナイトに興味を示していないようです」


「そうか、良かった」


「ただ、ダルメディ帝国から、かなりの数の魔戦士が、ウルバリア王国に出入りしているようです」


「そうか、引き続きウルバリア王国について探っていてくれ」


「はい、ウルバリアにも一応支店作って、情報が、入るようにしております」


「そうか、さすがソムチャイ」


「マックス様、ラビという魔戦士、どの程度の強さでしたか?」


 レオポルドが聞いてくる。皆も興味ありそうだ。


「確か、ジェネラルクラスの魔戦士って、言ってたか。スピードは、騎士に匹敵するし、パワーは上回るかな。あの巨体で、動き回られると、戦い難いは、難いかな?」


「う~ん、マックス様が、戦ったのが、ジェネラルクラス。それでも、上から、3番目ですか。と言うと、上のマーシャルとか、デュークとかは、どれほど強いのか」


「戦ってみたいね」


「マックス様、それは、マックス様だけかと」


「そう、アランもそうじゃない?」


「はっ、勝てるかわかりませんが、戦ってはみたいです」


「そうか。アランも強くなる訳だな」


「で、魔戦士は、良いとして、今後だけど。僕は、帝都で仕事したり、地方行政の視察の名目で、いろんな所回る予定なんだけど。あれだよね。ランドールと、ハインリヒは、しばらく修行だよね?」


「はい、ランドール、ハインリヒは、わたしの代わりをつとめられるようになって、もらわないといけないので、わたしとパナの下で、みっちり鍛え上げるつもりですが」


「うん、わかった。じゃ、僕のお供はアランと、ジローと、ソムチャイね」


「はっ」


「お供ね、了解。帝都か。行ったことないかな?」


「遊びでは、ないのだぞ、ジロー」


「はーーーい」


「リグルドは、学校だし、ビクターは、リグルドの基本お付きだし。レオポルドに任せる」


「はい、畏まりました。まあ、1年位で、ランドール、ハインリヒが問題無ければ、我々も交互で動けるようになりますので、少しお待ち下さい」


「うん、わかった。よろしくね」


「はい、畏まりました」








「お父様も、面白いこと考えるわね」


「ああ、しかし、難しい役職でもあるな。頑張れよ、マックス」


「はい」





 僕達は、再び列車に乗って帝都にやってきた。列車を降りると、目の前には、街の中を流れる大きな川が。そして、長い石橋の向こう少し高くなった所に、巨大な宮殿が見える。シルキリア帝国の皇宮だ。お父様と、お母様の屋敷は皇宮の程近く、少し高台にある。屋敷の窓からは、広大な帝都の灯りが、見える。





 そして、翌日から皇帝陛下に挨拶した上で、職務に入る。皇宮の一角に執務室が与えられ、そこで、仕事することになるのだが、とりあえずは、仕事がない。





「良いですか。皇帝陛下にお会いしたら、しっかりご挨拶して、他の貴族の方にも、宮殿ないで会ったらですね」


「おいおい、マックスも、もう子供じゃないんだから」


「そうですけど」


「マックスを信頼しろ。大丈夫だよな、マックス」


「はい」








「マクシミリアン=フォン=ローデンブルクです。この度は、身に余る役職を賜り、ありがとうございました」


「うむ、ローデンブルク統帥局長、励んでくれ」


「はっ」





 皇宮の正面より入ると一番奥。赤い絨毯の敷かれた廊下を歩くと、玉座の間がある。途中真ん中程で、廊下は十字になり、右に曲がると右宮と呼ばれる、軍関係者が勤務する宮殿があり、左に曲がると左宮と呼ばれる、内政官が勤務する宮殿がある。そのため宮殿は、縦より、横の方が長い、十字型になっている。





 そして、目の前には、50代であろう。金髪に白い肌、青い瞳の中年男性が玉座に座っている。中肉中背。優しい目を持つが、皇帝としての貫禄には欠けるか。ルシタリア8世。シルキリア皇帝としては、最も多いルシタリアを名乗る皇帝。一応騎士の血を持っているそうだ。



 そして、玉座の左右に4人の男が立っている。左側に立つのは、宮内卿と侍従長か?。右は、近衛騎士団長と、後1人は、現在の帝国筆頭騎士の、マルコム=フォン=レイフォード子爵。ただ、お祖父様の弟弟子だが、年齢は確か70歳近かったはずだ。なぜ、ここにいるんだ?。



 すると、マルコムさんが、声をかけてきた。



「マックス殿、確かインディリア様のお孫さんだったかな?」


「はい、そうです」


「インディリア様は、御健勝か?」


「はい、元気でおります」


「そうか、それは祝着。たまには、帝都に顔を出され陛下にも、ご挨拶くださいと、お伝えください」


「はい、わかりました。伝えておきます。では、失礼致します」







 僕は玉座の間を出ると、今度は、右宮にある、大将軍の執務室に向かう。中に入ると、叔父様1人であった。



「マックス、良く来た。統帥局長頑張ってな」


「はい、ありがとうございます」


「しかし、お父様も面白い事を考える。皇帝の意向を聞くことで、ホルス大公家も、皇帝をちゃんと立ててますよって示したいのかな」


「そういう、考え方もありますね」


「まあ、マックスにとって、一番面白そうな仕事は、3つ目の仕事か?。行政官、警察官の監察。確かに、ホルス大公家の権力、笠に着ているやつがいるからな。マックス懲らしめてやりなよ」


「はい、わかりました。しかし、ホルス大公家の人間でも、良いんですか?」


「地方行政官やっている程度の人間て、縁遠いけど、一応縁者って感じで、ホルス家を名乗っているだけだから。良いよ。それに、俺も憧れたよ。悪い奴を倒しまくるヒーローってやつに。だから、マックス頼んだよ」


「はい」







 しかし、意外だった。叔父様に応援されるとは。さて、仕事に取り掛かりますか。

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