第34話 新生錬身流

「錬身流奥義青龍!」



 って、これ返し技だそうで、アドルフ先輩が、打ち込むと、マスターゴーランは、剣で受けてそして巻き込みながら、肘を相手に当てる、そして腕を極めて投げる。さらに自分も飛んで膝を落とす。気水流の明鏡止水を返し技として、アレンジし、3回の攻撃を入れる感じか。う~ん、他の技に比べて地味だな。





 夏休みが終わり、夏合宿に突入。実務実習中のリリアちゃん達も合宿に参加して、新入生ガイダンスの内容も決まる。そして、



「よし、少し休憩しよう、僕はもう少しやるけど、みんなはどうする?」


「俺はまだやれます」


「僕も」


 僕の呼びかけに、ヨハンとガイが答える。剣術大会から、自分の中に火がついたのだが、朝は長距離をランニング、そして、後は時間見つけて自主練していたのだが、練習好きの2人が、寄ってきて練習していると言うわけだ。ローテーションで、掛かり稽古を行う。





「ガイ、技が荒い。技を徹底的に反復練習して、身体にたたき込ませろ。そしたら、直感は、鋭いんだから、そのまま動け!」



「ヨハンは逆に、技がもう少し荒くても良いから、ちゃんと捌け。探知能力は高いんだから、相手の場所をキチッと把握しながら、考えて動く!」



「はい!」





「ねえねえ、リリアちゃん」


「なあに?。ハルちゃん」


「マックス先輩って、あんなに熱血だったっのかしら?」


「熱血ではないですね。今は、目標があるので、それに向けて頑張っているんだそうです」


「ふーん。目標ね。わたしも、今は実習で手一杯だけど、来年は目標持って何かやるわ」





 夏合宿、熱血と化した僕に煽られるように熱い合宿になった。そして飲み会も、リリアちゃん達が加わり、賑やかになった。ヨハンとガイと、エリーゼちゃんは、まだだ。



「リリアちゃんも成人か~。お酒飲めるようになって、賑やかになったね」


「それって、あれですか? リリアちゃん酔わせて襲おうって、やつですか?」


「えっえっ。何の話?」


「そうなんですか? マックス先輩出来れば、そういうことは、2人の時に言って頂けるとありがたいかと」


「リリアちゃん、違うから、ハルちゃんも真っ赤な顔をして、変なこと言わない!」


「はーい」





 ローランちゃんとハッシュは2人の世界を形成し、マスターゴーラン、アドルフ先輩、イシュケルと、クリスは固まって何やら話している。





 そして、僕の周りにビル先輩、レーレンさん、リリアちゃんに、ハルちゃんが集まって、話に花が咲く。ただ、レーレンさんは、お酒弱いからほとんど飲んでないし、ハルちゃんは、顔が真っ赤だ。しかし、美味しい、美味しいとワインを飲んでいく。リリアちゃんは、あまり変わりない。結構飲んでるように見えるが。





 しばらくして、イシュケルが来て話かけてきた。


「来年の幹部だけど、マックスの意見は?」



 うん?。来年の幹部?。ああリリアちゃん世代の主将どうするかと言うことか?。それなら。


「強いのはリリアちゃんだけど、人を引っ張っていくタイプじゃないから、主将はクリスかな。で、副将はリリアちゃんで、会計がハルちゃんか?」


「そうか、先輩達と同じ意見か。なるほど。」





 ふと見回すと、マスターゴーラン達の集まりも、解散して、それぞれが散って飲み会は更なる盛り上がりをみせていた。




 そして、人数は減り残った精鋭が集う。


「マックス、最近練習に熱が入っているな。」


「はい、剣術大会で、ベスト5にはなったものの、トップには手も足も出なくて。ちょっと」


「良いね。僕もローズさんと戦う時は、練習したね」


「ふえ、努力するマックス先輩格好いいです。クゥー」


「リリアちゃん、寝たら?」


「ふえ、もうちょっといます」


 リリアちゃんの目はとろんとしている。大丈夫かな?。


「うんうん素晴らしい。わしも若い頃は鍛練に明け暮れたものだ」


「俺も努力しているんですけど、なかなか」


「クリスは、まだこれからだろ?」


「そうだと良いんですけど。同学年や、後輩に化け物がいると、自信が」


「ふえ、わたしは、化け物ではないです」


「ハハハ、だったら、僕はその化け物と付き合っているんだから、コンプレックスの塊になっちゃうよ」


「マックス先輩は、充分化け物ですよ」


「ハハハ、まあそうだな。しかし、自分は自分だ。自分の道をしっかり進めば、そのうち自分のゴールが見えてくるものだ。剣術は、ある程度身体能力も必要だが、技や、センスで、その差を埋めれるものだ」


「マスターゴーランのおっしゃる通りだと思うよ。身体能力はクリスの方がマックスよりは上だろ。マックスは、センスと技が化け物クラスなだけで、だから頑張れよ」


「天才に言われても」


「ハハハ、わしは努力に努力を重ねた。うん気持ちはわかるぞ。わしが言えるのは、頑張れよ。だけだな」


 マスターゴーランの高笑いが響く。





 帝国歴347年9月7日第3学年終了









「兄様!」


 レイリン騎士学校に新入生がやってきた。


「おお、リグルド。元気か?。旅行行ってて、そのまま合宿行ってたから、引っ越しにも付き合えなくて」


「はい、元気ですよ。それに引っ越しは、ビクターも、ジローも手伝ってくれましたから」


 ジローは、飲む為にレイリンに良く来る。


「そうか、良かった。で、新入生ガイダンスどうだった?」


「はい、良かったです。僕は、絶対錬身流入るの決めているので、よろしくお願いいたします」


「ビクター、雷鳴流だろ?。雷鳴流じゃなくて良いのか?」


「ビクターも、雷鳴流は教えますから、って言ってたから、大丈夫ですよ。」







 こうして、リグルドは錬身流に入部することになった。推薦入学で学年トップのリグルド。出来すぎた弟です。ただそのリグルドも、背が小さいことが気になるらしく。


「学年トップだから良いですけど、後ろの席だったら、まともに前が見えないんですよ」


「そうか大変だな。僕は入学式の並び一番後ろだったから。いまいち、気持ちわからない。まあ、頑張れよ」


「兄様、いじわるですね。頑張って背が伸びるんだったらやってますよ」



 ああ、そう言えばそうだな。







「おはよう」


「おはようかな。まだ、ドラグ君と、ジョイ君来てないし」


「そっか。しかし、4年間同じクラスとは、奇跡だね」


「そうかな」



 結局Aクラスに上がることは、なかったが、ドラグ、ジョイ、ピノとは、4年間同じクラスだった。





「ねえねえ、マックス君ドラグから聞いたんだけど、夏休み南椀行ったんだって?」



 ナッツ君が話しかけてきた。存在感薄いが一応3年間、同じクラスだったんだよな。たまに一緒に遊んだし。一応友達だ。



「ああ、そうなんだよ」



 僕は、南方諸国に行った話を話し始めた。南椀の喧騒、梵亜の遺跡、羅門の托鉢僧、そして、摩麗の寺院。熱心に話しているといつの間にか、ドラグと、ジョイも来ていて、話は、授業が始まるまで、盛り上がった。









 う~ん、壮観だな。入学式が終わって1ヶ月以上が経過した。今日は、実務実習中の3年生も、全員が揃った。レイリン騎士学校錬身流の最大人数かもしれない。



 マスターゴーランに、ビル先輩、あっ、今日はまだ、ビル先輩は来ていない。そして、アラン先輩。で、主将のイシュケルに副将の僕、会計のレーレンさん。そして、主務のクリスに副務のリリアちゃん。そして、ハルちゃん、ローランちゃんに、ハッシュ。で、ヨハンにガイ、そして、エリーゼちゃん。そして、新入生のリグルドに、タリンナちゃん。4年から1年まで、全学年が揃った。



 現役部員13人。先生方合わせて16人。う~ん壮観だな。最近は、イシュケルが1年の指導をして、2年は僕が見て、レーレンさんは、エリーゼちゃんと組んで練習する。ガイとヨハンは、気が合ってきたようだが、


「キャー!」


 レーレンさんが、空を飛ぶ。そして、華麗に受け身を飛ぶ。


「レーレン先輩、ごめんなさい」


「大丈夫よ。だてに4年もやってないから。だけど、もうちょっとだけ、投げる時にパワー抑えてくれるとありがたいかな」


「はい! わかりました」



 ヨハンがスッと近づいてくる。


「エリーゼですけど、凄い力なんです。ガイが、腕相撲で負けたんですよ」


「えっ、ガイが?」


「はい」


 ヨハンは、冗談を言わない、だとすると…。



「キャー!」


「ごめんなさい!」


 う~ん、大丈夫かな?。






 練習終了間際に、道場の扉が開く。ビル先輩が入ってきた。これで全員集合だ。そして、練習終了後。



 ビル先輩が、僕達の前に立って、


「みんな、僕の卒業研究なんだけど、協力してくれない。遺伝子の研究なんだ。血を取るとかじゃなくて、口の中の粘膜を少し拭うだけなんだけど。良いかな?」


 断る理由はない。喜んで協力しよう。

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