第33話 忍者? ソムチャイと追いかけっこ
ビルマイス先輩が、無造作に剣を振るう。すると、衝撃波で、4人の盗賊の体が吹き飛ぶ。僕も2人ほど斬り倒すと、リーダーである騎士崩れに迫る。そして、打ち合うすると、体勢が崩れる。僕は体を密着させ腕を極め投げると、そのまま、剣を打ち下ろす。
「グワッ!」
リーダーを倒すと残りは逃げていった。この辺は、帝国領内と違って結構盗賊が出るようだ。僕は、10台以上連なった馬車を振り返る。ジローは空中で様子を見ている。ドラグ達は馬車から覗いている。
「馬車のチャーターしたいんすけど」
「どちらまで?」
「梵亜のシャレンまでっす」
「何名になりますか?」
「6名っす」
「では、馬車2台ですね」
「すぐ出発できるっすか?」
「いや~。護衛の騎士がいなくてね。シャレンから、戻ってきたら出発出来るんですけど」
「だったら、俺は魔術師だし、他は騎士っすよ」
「それだったら、料金割引するので、護衛担当して貰えませんか?」
3日後の昼過ぎ、梵亜のシャレンに到着した。梵亜の首都はだいぶ南にあるので、完全に観光地となっているようだ。遠距離馬車の発着場に到着する。人はいっぱいいるが、物売りも馬車の御者も、押し掛けてこない。静かに立っている。そして、共通語も比較的通じる人が多いようだ。ちょっと発音おかしいけど。
「ナンデリンホテルまで、行きたいんっすけど、行ってくれる人いまっすか?」
「それなら、わたし行くね。何台ね?」
「2台お願いしたいっす」
「わかたよ、これ乗るね。後は、あれね」
「感動するね。涙が出てきそう」
「マックス大袈裟かな。でも、わかるし」
「ねみー。でも頑張って起きて良かった」
朝靄の中、徐々に周囲が明るくなり大きな石のお寺の姿が浮かび上がってくる。そして、寺院の後ろから、太陽が顔をだし。寺院の姿が、目の前の池に映りこむ。
「ジロー達もくれば良かったのにな」
シャレンも暑いが体が慣れたのか、さほど気にならないが、かなり皆日焼けしている。赤銅色や、茶色に近づいている。
僕達は、数々の遺跡を回る。巨大な顔が彫刻された古代の都市遺跡。蛇の彫像、や象の彫像のあるもの。ジャングルに埋もれ崩れた寺院。そして、とても綺麗な彫刻のされた寺院。水の中にある寺院等。
そして、高台から見ると、本当にジャングルの中に遺跡が点在していることがわかる。こんな場所に良く昔街を作ったものだ。そして、この当時の梵亜は、かなり広範囲を支配下においていたそうだ。
「また、移動だね。今度も護衛引き受けるパターンで、行けるかな?」
そして、護衛しつつ、今度は、羅門国のシャンビーへ。
「何だか、どんどん静かになってくるね」
「うん、人もなんか穏やかだね」
「お坊さんいっぱいかな」
周囲がオレンジに染まる中、袈裟を着た僧侶が歩いてくる。僕達は、道路脇にひざまずき、買ってきたお菓子等を鉢の中に入れる。厳かな雰囲気だ。
ただ、観光の見所が。高台から街を見下ろす。
「田舎だね」
「のどかかな」
趣のある寺院を見学して、滝を見学して。移動する。続いては、また南椀に戻って、昔の都ラムカーン。
長距離馬車から降りると、人が集まってくる。今までとのギャップに疲れる。そして、
「お兄さん、お兄さん、これ買わない」
「こっちの方が上等よ」
何で、こういう時だけ、共通語をしゃべっているのだろうか?
再びジローが通訳として活躍してくれて、ホテルに向かう。ちょっと疲れた。
街は活気に溢れ、物売りの声や、客引きの声がこだまする。街を歩くと屋台からは、美味しそうな匂いが立ちこめる。
「料理は辛かったけど、今の所、南椀の料理が旨かったな」
「確かにそうですね。他の国は、ちょっと味がぼやけているというか」
「ぼやけているは、失礼かな。素朴だと思うし」
「そうだね」
僕達は、屋台で鳥の串焼きを買って食べる。スパイシーで、ちょっと辛いが、美味しい。そして、観光を続ける。再び金ぴかづくしだ。赤い宮殿に金の仏像、金ぴかの寺院。石の趣のある寺院に金ぴかの仏像。うん、凄いけど、ちょっと飽きてきた。僕は、観光は梵亜のシャレンかな?
そして、市場に行くと、凄い人だ。しかし、だいぶ人波に慣れてきた。僕達は、中に突入する。そして、品物を見る。いろいろな工芸品や、金ぴか製品や、シルク製品、そして、焼き物類。いろいろな製品が、売られている。
「僕、この仏像欲しいかな」
誰が買うんだ金ぴかの仏像と、思っていたらいた。ピノが財布を取り出して、お金を取り出す。かなり物価が安く、お金に余裕ができ、財布にはかなりの金額が入っていた。その財布こんな所で、取り出すなよと思っていたら。ピノが、財布をしまおうとした、瞬間影が通過する。
「先輩!」
「ああ!」
僕とビルマイス先輩は、全力で駆ける。しかし、速い。少し行った所で、屋根に飛び上がる。僕達も飛び上がるが、一瞬見失う。気配を探ろうとした瞬間声が飛ぶ。ジローが、空中から声をかける。
「マックス、ビルさん、左側っす」
僕達は、左手を見る。いた。だいぶ離されている。と、ビル先輩が剣を抜いて、衝撃波を放つ。一直線に進み、当たる直前かわされ、衝撃波は、建物の屋根を吹き飛ばす。あ~あ。
僕は、遠くにある人影を追った。屋根から屋根に飛び移り、全力で駆け抜ける。距離が縮まらない。ピアスを外しているが、それでもだ。そして、探索しているが、ほとんど気配も感じない。なんだあの人は?
と、追撃は突然に結末をむかえる。追撃者の後ろに突然太った男性が現れ、そして、あっという間に追い付いて取り押さえたのだ。僕と、先輩はその場に到着する。すると、
「申し訳ありません。お財布はお返しします。お金は、盗っておりません。ので、何卒穏便におすませください」
「えっと。どういう事ですか?」
太った男性が、スリの頭を押さえつけ、土下座させていた。男はちょっと太めで、赤銅色の肌、黒い髪。そして、濃い目の口髭をはやした、その辺にいそうなおじさん。特に目立つことのない南椀人に見えた。
「申し訳ありません。この男は、わたしの部下なのですが、最近生活に困っており、出来心で盗みを働いてしまった次第で、はい。それもこれもわたしの不徳の致すところです」
「部下が困窮しているのは、自分の責任だと?」
「はい、わたくし、元々は、南椀の忍者をしていたのですが、その、上層部と折り合いが悪く首になりまして。お恥ずかしいお話ですが」
「忍者?」
「はい、南方諸国に多い家系なのですが、魔力少なく、強くもないのですが、身体能力が高い者がおりまして、それが忍者と呼ばれ、探索やスパイ業務を、になっているのです」
忍者。格好いいな。うん、配下に欲しい。けど、帝国までは来ないか?
「許す! ただし条件がある」
「はい、何でもおっしゃってください」
「僕はシルキリア帝国のジョスーの領主マクシミリアン=フォン=ローデンブルク公爵である。もし良かったら、うちで働かない?」
「は? はあ。えっ! 本当に雇って頂けるのでしょうか?」
「うん。いいよ。それで、これ手付金」
僕は旅行用に持ってきた、財布を渡す。多分充分な、金額が入っていると思うけど。
「こ、こ、こ、こんなに頂いて良いのでしょうか? 部下にも相談して、行く者を集めます。あっ申し遅れました。わたくし、ソムチャイと申します。以後よろしくお願いいたします」
こうして、ソムチャイを手に入れた僕は、ソムチャイと別れ、先輩と一緒に戻り、ピノにお財布を返す。
「ありがとかな」
最後の国、摩麗に突入した。そして、ピレイに到着する。ここは、比較的穏やかな人達と、金ぴか文化の融合した国だった。ただし、金ぴかも少し穏やかだった。大きな仏像は、袈裟が金ぴかで、白い顔や手足の涅槃仏が多く。そして、仏舎利と呼ばれる大きな金の塔が聳えたっていた。
一番良かったのは、少し山の方に入った所にあった。崖にあって、落ちそうで落ちない金の岩であった。凄いなこれ。お金を払って金箔が貼れたので、貼ってみる。
首都であるハローで、寺院観光する。メンバーは、ピノと僕とビル先輩。そう言えば、ジローにつられて、僕もビル先輩って呼ぶようになっていた。良いのかな? 本人気にしていなさそうだから、良いか。
「確かに。金ぴか寺院ばかりかな」
「だけど、お寺好きだけどな僕は」
「僕も好きだけどな。歴史に心ひかれ、過去に思いを馳せる」
「ビル先輩、詩人ですね」
「そうか?」
こうして、南方諸国の旅は終わった。
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