第31話 波乱の春合宿と剣術大会

「おはよー。なんかこうして、授業受けるの久しぶりだね」


 少し早いかなと思って教室に来たが、すでに他の3人は定位置に座っていた。ドラグと、ジョイは、軽く手をあげつつ、挨拶を交わし、そして、ピノは、


「マックス君、おはようだし。だね、こうやって4人揃うのも久しぶりかな?」


「本当にそうだね。ピノ実習の感想は?」


「うん、僕にああいう仕事は無理だし。勉強や、研究の方が好きかな。ジョイはどうかな?」


「俺は…。戦うのは好きだけど、人殺すのは無理だね。ハインリヒ君に怒られたぞ。俺は、騎士じゃなくて、格闘家を目指す!」


「ドラグは?」


「うん。意外と弓が有効だってわかったから、弓で戦っていくよ。ナッツから、弓での戦い方もいろいろ教わったし、ありがとーな、ナッツ」


「いや、それほどでも」


 前に座っていたナッツが振り返る。


「そして、優秀な弟と組んで戦うよ。で、マックス噂をいろいろ聞いたよ。凄いよね。剣聖クレストと会って、三剣のメッセン=フォン=シュヴァリエと戦って生き延びたって」


「両方とも戦ったのは、アラン先生だよ。僕じゃない」


「それでも、羨ましいかな。マックス君、三剣制覇だし」


「そうか! 剣聖クレストにも会って、三剣メッセンに会って、ローズ先輩とマスターゴーランは、ここにいるから」


「じゃあ、次は、天剣9振り制覇目指して欲しいね。地剣108刀は無理だと思うけど」


「天剣9振りか~。えーと」


「有名どころだと、マキシ=フォルスト=ホルス、カタリナ=フォン=アルフォルスだな」


「後は、うちの方、西域にいる2人の王子に、ヴァルド国王。後は、最近噂のダークネス」


「そう言えば、アラン先生もなって、え~と。後は? リリアちゃんも、そうか。で」


「シルキリア帝国の筆頭騎士かな。かなり、お年寄りみたいだけど。後は、噂だと、最近女性の騎士が剣聖から、天剣を託されたかな」


「へー。」


 なんかこう聞くと、知り合いが多い気がするな。










 久しぶりの普通の授業は、実習の刺激に比べて退屈ではあったが、実習中の成果が出て、身体能力もかなり上がり、剣術もかなり誉められた。これだったら、剣術大会上位行けるかな?







 そして、部活は、僕達と交代で実務実習にリリアちゃん達が突入し、いたりいなかったり、全員がいないとちょっと寂しい感じがする。もうすぐ春合宿だが、全員が出れないから、余計に感じるだろう。そうか春合宿は、マスターゴーラン、ビルマイス先輩、アドルフ先輩はいるが、僕と、イシュケル、レーレンさん、そして、ガイにヨハンに、エリーゼちゃんだけか。ちょっと寂しいかな。






 こうして突入した春合宿だが、練習初日の夜から1年生がやらかしてくれた。





「先輩! 大変です。来て下さい!」


「どうしたんだ?」


「えっと、ヨハン君とガイが練習して、ガイが刺さって!」


「えっ!?」



 イシュケルが部屋を飛び出す。僕は、


「エリーゼちゃん、マスターゴーラン達にも声かけて。で、案内を。僕は、合宿所の魔術師さん呼びに行くから」


「はい!」



 僕は合宿所を飛び出すと、敷地内にある診療所を目指す。イシュケルが、うろうろしているのが見えた。飛び出したものの、場所がわからないらしい。まあ、放っておこう。



 いくつもの部活の合宿所があるため、学校は、ちゃんと魔術師を常駐させてくれているのだ。





「先生。後輩が怪我をしたようなんです。一緒に来てください」


「わかりました」



 僕は、先生を連れて診療所を飛び出すと気配を探る。よしいた。僕達は、気配が集まっている。森の中の空き地を目指す。近づくと



「ヨハン、お前何やってんだ!」


「先輩違うんです。ヨハンは、悪くなくて、俺が避けられなくて」


「それでもだな!」


「お待たせ、先生連れて来たよ」


 すると、傷を見ていた、マスターゴーランが、


「おお、先生こっちに。よろしくお願いいたします」


 と、先生と場所を交代する。見ると、ガイの肩口に木刀が刺さっている。痛そう。マスターゴーランが木刀を引き抜きながら、先生が、回復魔法をかけていく。





「どこ行くんだ! ヨハン、話は終わっていない!」


 イシュケルが、ガイの方に歩いていこうとしたのを止めて、再度怒り始めた。


「ストップ、イシュケル。自主練とはいえ、練習を見ていなかった、僕達も悪い。それに、ヨハンは反省している。これ以上怒る必要性はない」


「だけど」


「ヨハンは、ガイに謝ろうと思って歩き出したんだよな」


「はい。俺が悪い」


「よし、だったら話は終わり、あっ練習する時は声かけてくれ、イシュケルか、僕が見ているだけでもするから」


「はい」



 そして、ヨハンはゆっくりと歩いてガイのそばに行く。


「悪かった。ごめん」


「いいよ。避けられなかった、僕も悪いんだから」



 いつの間にか、肩の傷口は綺麗に塞がっていた。そして、体力馬鹿のガイのことだ、明日には復活していることだろう。






 翌日の練習ガイは普通に復活して出てきた。しかし、練習は、マスターゴーランの指示で、イシュケルとガイ、僕とヨハンが組むようになった。しかし、ヨハン手を抜かないな。常に真剣だ。怖いくらい。僕もそれにこたえるようにやっているが、正直きつい。



「イヤッ!」


 ヨハンが打ち込みをかけてくる、僕はそれを木刀で受けつつ、勢いを流すように回転して、そのまま腕を極めて投げる。受け身をとってヨハンが立ち上がる。僕はヨハンの背後をとって打ちかかる。が、ヨハンは、正確にこちらに振り向くと、木刀で受け止める。あれっ? もしかしたら。





 僕は午後の練習後ヨハンを呼び出した。ガイもついてきた。


「練習ですか? 僕も一緒に行ってもよいですか?」


「いいよ」





 ヨハンは、岩の上に座ると目を瞑る。そして、



「ヨハン、そのままで、僕がどこにいるか分かるか?」


「はい、5m後方です」


「じゃあ、ガイは?」


「その斜め後ろ2m位です」


「うん、やっぱりヨハンは、気配を探ることが出来るようだ。これは大きな強みだぞ。後は、これを鍛えて行けば」


「強く慣れるんですね!」


 へー、ヨハンもこういう顔出来るんだ。キラキラと明るい笑顔だ。



「う~ん、僕はわからないです」


「アラン先生も言ってたけど、目が良すぎると、目に頼るから、ガイは直感を磨いて動きなよ」


「はい」


「マックス先輩」


「うん?」


「ありがとうございます!」


 ヨハンとガイ、そして僕の自主練は、気配春合宿中続いた。こうして、春合宿は、無事? 終了した。









「勝者、マックス!」


「ありがとうございました!」





「マックス、凄いなー」


「ふー。何とかね」


「だけど、ベスト10だし。これで、次勝ったら、ベスト5。決勝リーグ進出だし」


「次は、ヨシュア君か。一緒のチームだったから、知ってるけど、丁寧で、慎重な剣だね。流派は、養魔剣神流。魔力が使えない剣術大会は、苦手だって言ってたね」


「ありがとう。頑張るよ」





 お互いに中段に構える、僕はやや腰を落とし、ヨシュア君は、普通より、腰を高く構える。そして、お互い向かい合って半周ほど動く。ヨシュアの足捌きは、普通に歩くような動きだ。



 僕は一気に近づくと、腰を入れて右袈裟斬りに打つ。ヨシュア君は受け止めるが、体勢を崩す。そして、そのまま連続攻撃を仕掛ける。徐々に、ヨシュア君の受けが崩れていく。よし。これはいけるかな?



 と、ヨシュア君が素早い連続攻撃をしてくる。腰が入っていないが受け止めつつ少し下がる。すると、ヨシュア君は、大上段に構える。これは、飛び込んだら、上から叩く剣かな。魔力がこもっていたら怖いけど。では遠慮なく。



 剣を右手に持ち、足を縦に大きく開き、左足が前で、右足が後ろで。そして、後ろに体重をのせながら腰を落としていく。この時、剣の刃は上を向け。右足の膝をつき、踵は立てて、お尻をのせる。そして、左手を前に伸ばして、左足の横につく。そして、全身の力を全部集約して、前方に飛び出し、剣に気を集中させて、突く。


「錬身流奥義白虎!」


 僕は、一直線にヨシュア君に突っ込む、木刀が振り下ろされるが、力がこもる前にヨシュア君が吹っ飛ぶ。


「勝者、マックス!」



 こうして、ベスト5進出。決勝リーグ入りした。しかし、



「勝者、ランドール!」


「勝者、ロゼリア!」





 結局決勝リーグは、4連敗して終わった。始めて悔しいと思った。せっかくここまできたのに、決勝リーグでは、手も足も出なかった。よし、次の剣術大会まで、頑張ってみよう。マックスとして努力してみよう。




 決勝は、ランドールとロゼリアさんになった。そして、ランドールが勝って、大会は終了した。

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