第30話 実務実習終了

 クリスマスパーティーにて、お祖父様は、僕に大公家の兵力の1/3を渡す事を発表する。すると、叔父様が、用意していたかのように、ここから遠く離れた東の地に、ローデンブルク公爵家の領土を提案する。



 場所は、ジョスーを中心とした領土。軌道列車も通っているし、学校から近いし、トゥルク神聖国も近くなるから、良いけど。叔父様は、何を考えているんだろうか?。お母様もお父様も、


「良いんじゃない」



 と言って、あっさりと決まった。お母様曰く、ここより、東の平地の方が土地が豊かだから、領土としては、良いだそうだ。確かに。





 そして、ジローも、仕事が出来て喜んでいたし、レオポルドは、わたしに任せてください。だそうだ。仲良くやって欲しいものだ。こうして、領土の無い公爵家だった。ローデンブルク家は、領土のある公爵家になった。





 さらに、お祖父様は、後々大公家は無くす予定である事を発表し、叔父様にさらに1/3を渡す事を発表した。すると、叔父様は、叔父様の持つ、今の侯爵領を縮小して、伯爵領として、次男ヘムロックに分家として、継がせる事を発表した。





 そして、自分は、シャーリンから、大河を越えた先にある、帝国の旧帝都でもあった、カイオンを中心とする領地を公爵領として、自分が当地すると宣言した。統治自体は、長男のヤコブに任せるようだ。すでに、この地に別荘を建て叔父様は、準備万端だったようだ。





 こうして、お祖父様の大公家は存続するものの、僕は、遠くジョスーに公爵領を持ち。東側は、帝国に返還し、西側は叔父様が公爵領として、そして、シャーリンを中心とした真ん中をお祖父様が、そのまま管理することとなった。









「お祖父様、びっくりしました。大公家を無くすつもりだなんて」


「そうか、びっくりしたか。しかし、大公家は無くならない」


「そうですね。叔父様は、大将軍で、お父様は、宰相です。そして、フォルスト=ホルスを名乗る人物が、帝国の他の重要な役職を占めています」


「ハハハ、そうだ。マックスは、賢いな。で、どうする?」


「難しいですね。現に僕はホルス大公家の恩恵を受けている人間です。だけど、少なくとも、皇帝を中心に、実力のある人間が国を為す国だったはずです。だからお祖父様が、傭兵からのしあがって、大将軍になれたのでしょう。だから、僕は正しい形に帝国を戻したい」


「なるほど、マックスは、面白いな。わかった」



 それだけ言うとお祖父様は、大きく頷きながら、笑っていた。









「では、出発します。マックス様も、気をつけて学校へ、お戻りください」





 僕達が、出発するタイミングで、レオポルドが、兵を率いて出発した。ジローが一緒に行こうかと、言ったら、一言邪魔だ。だそうだ。ジローは、僕達と列車で移動して、レイリンに戻り、その後ジョスーに引っ越しするそうだ。頻繁に、レイリンに飲みに行くので、安心してくださいだそうだ。





 こうして、僕達は、帰って来たのだが、





「マックス、あなた来年の夏休みはどうするの?」


「どうするって何が?」


「ほら、あなたの嫌いなイベントよ。わたし達は、つきあうけど、マックスはどうするの?」



 ああそうか。大公巡行か、4年に1度お祖父様や、ホルス大公家に連なる人が、辺境地域を見回って安心させるそうだ。皇帝がするならわかるけど。そうか、前回は入学前だった。



 しかし、雷帝と呼ばれたお祖父様のネームバリューは、いまだに抜群だ。大勢の人が集まり歓迎するそうだ。そして、逆に帝都の皇宮に人はいなくなると。





「僕は、不参加で、せっかくだから友達と旅行でも行くよ」


「そう、わかったわ。旅行気をつけて行くのよ。楽しんでらっしゃい」







「あれが、襲撃対象か。馬車は5台。えーと、警護の騎士は、一番先頭に1人、後方に1人、で、魔術師は真ん中の馬車に乗って警戒中かな?」


「で、襲撃できそう?」


「う~ん、ここからだと、見通し良すぎて、途中で見つかっちゃいそうだね。メイリンさん、地図出して」


「はい」





 僕達は、地図を広げる。そして、現在位置を確認する。



「ここから、しばらく行くと、道が森の中に入るね。襲撃するなら、ここかな?」


「そうですね。見通し悪いから、すぐには見つかり難いし、気配も読みにくくなりますね」


「で、ロゼリアさん、何かある?」


「無いわ。メイリンと、マックスで作戦考えて、わたしは、その通り動くわ」


「はいはい。じゃ、僕は魔力少ないし、気配絶って旅人の振りして近づき、馬車の右側からすれ違い、真ん中の馬車のロープを切って、さらに馬を暴れさせる」


「そしたら、わたしが突撃すればいいのね」


「2人は、急いで近づいてまずは、メイリンさんが、魔法で、僕が出現した方の反対側から、当たらなくて良いから、攻撃を仕掛ける」


「攻撃魔法得意じゃないけど、そのくらいなら、できそうです」


「そしたら、わたしが突撃すればいいのね」


「たぶん、前後の騎士両方が僕に向かって来るけど、それを一瞬躊躇させることが出来ると思う。僕は、その間に魔術師を倒す」


「そしたら、わたしが突撃すればいいのね」


「そうだね」


「わかったわ、じゃ、始めましょう」







 僕は、ゆっくりと森の中を歩く。すると、前方から馬車がやってくる。僕は左側に避け、馬車の右側を通る。前方の騎士は僕の事を見ていたが、キャラバンの半分近くを通り過ぎた時、視線を前方に戻した。僕は、荷物を地面に起き、靴を直すふりをして、しゃがみこむ。



 そして、真ん中の馬車が横を通り抜けようとする瞬間、荷物から、剣を取り出し、馬車と馬を結ぶロープを切る。そして、そのまま、剣の背で馬の尻を叩く。すると、馬はいななき、駆け出す。中央の馬車は、列を離れ、馬は暴れまわる。商人達は、暴れる馬をなだめる。



 騒ぎを聞いて、前後の騎士が駆け寄ってくる。魔術師は、ロゼリアさん達の魔力の気配を察知して、忠告するために馬車の外に出てきた。


「待って、他にも敵が近づいて来てる!」



 そこまで言った所で、近くにいた僕に気づくが遅い。僕は、当て身を入れ、気絶させる。すると、僕がいた方の反対側の森に火の手があがる。


「左側森の中から襲撃だ!」



 前方の騎士が声を張り上げる。2人の注意が、そちらに向く。そして、ロゼリアさんが前方の騎士の背後から現れ、剣で、一撃の元に殴り倒す。あれっ? どうやって背後まわったの?



 僕は、後方の騎士の方に向かう。全力で向かったはずだが、その騎士の前にはすでにロゼリアさんの姿が。そして、前後を挟まれた騎士が投降する。任務終了だ。









「お疲れ様。最終任務の襲撃どうだった?」


「楽しかったわ」


「ロゼリアさん、そうじゃなくて、実際自分が襲撃受けた場合の注意点がわかりましたとか。そう言う答えだよ」


「じゃあ、それで」


「ロゼリアさん、大丈夫? 最近なんか考えるのやめてるような?」


「そうよ。余計なことを考えるのをやめたの。信頼出来る人の意見を聞いて、後は直感で動く。わたしが、難しい事考えても、わたしの動きが悪くなって、他の人の邪魔になるだけ」


「そうですか。それも、また真理ですね。ロゼリアさんの成長でしょう」


「他の皆さんは、いかがですか?」


「わたしは、逆に物事を深く考えるようになりました。マックス君の先読みほどではないですけど。常に、もしこうなった時は、って考えています。そして、ロゼリアさんと組んでこれからも、やっていこうかな? なんて」


「大歓迎よ。よろしくね」


「じゃあ、マックス君は?」


「僕は、いろいろな場所に行って、いろいろな人に会って、良い勉強になりました。特に、チームでの行動は、うん、純粋に楽しかったです!」


「そうですか。では、僕の総括を。良いチームでした。マックス君がチームの頭脳となり、それを信頼して全力で暴れるロゼリアさん、そして、2人を的確にサポートする。メイリンさん。正直、女性の方が多いチームは、バランス的に大丈夫かな? と思ったのですが。そんな心配無用でした。ご苦労様でした。では、これにて、解散です!」



 模擬テストと言う、最後の任務を終え。僕達の実務実習は終わった。夜の打ち上げをもって。




「まふぁ、のめるひょ」

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