第24話 夏休みと錬身流奥義朱雀

 アラン先生は、1日寝て、すぐに復帰した。腰には灰色の神剣が下げられている。剣聖クレストは、結局何を考えて行動しているのだろう。全くわからない。実力の相応しくないやつから剣を取り上げて、相応しい実力の者に与えているとかか?







 僕達は、久しぶりに学校に帰ってきた。そして、休みを貰って過ごすと、5月も中旬になった。もうすぐ、卒業式に、夏休み突入だ。運次第だそうだが、長期の任務が入ると夏休みもずれるし、卒業式も出れない。







 こうして、任務待機に入った。そう言えば、夏休み、友達とか連れて来なさいって言ってたな。リリアちゃんとも、約束しちゃったし、どうしようかな。






「今年の夏休みどうする?」


「うーん、俺、明日から長期任務入っちゃった。卒業式出れないし、最悪だよ!」


「ジョイそれは嫌だね。と言うことは、ハインリヒもか」


「僕は、今のところ任務入ってないけど、来年みんなで、長期の旅行行こうよ」


「そうかな。今年は気持ちも落ち着かないかな」





 友達誘うのには、失敗した。リリアちゃんどうしよう? 来てくれるかな? もしかして、大人の階段登っちゃうのか? なんてね。







 部活に顔を出す。今日は、久しぶりに2年全員が揃うという事で、幹部交代だ。主将には、イシュケルが就任して、僕は副将、そして、レーレンランさんは、会計へとなった。と、言いながら3年の前期は部活出れない時も多いので、学校にいる。ビルマイス先輩と、アドルフ先輩に指導してもらう予定だ。まあ、マスターゴーランもいるし。




「主将に就任したイシュケルだ。これから、1年半よろしく」


「えーと、副将に就任しました。マックスです。これから1年半副将として、頑張っていきますので、よろしくお願いいたします」


「会計のレーレンランです。会計は、お金の管理が仕事ですので、皆さんも協力お願いします」





 そして、運の良いことに、短期の任務があり、ギリギリ卒業式にも参加出来た。アドルフ先輩は、学校に残り先生の見習いに、ハーラン先輩は実家に帰り、そしてタキリス先輩は就職が、帝国の騎士団に入団が決まったそうだ。優秀だったんですね。タキリス先輩。



「タキリス先輩、おめでとうございます」


「ありがとう、今度会ったら部下かもしれないけど、こきつかうなよ」


「はい、わかりました。で、中央騎士団ですか?」


「いや、そこまでは無理だった。東方騎士団だった」



 東方騎士団か、大公領は西方にあるから、とりあえず関係ないかな?






「えーと、リリアちゃん、今年の夏休み本当に大公領来る?」



「はい、是非。あっでも、リコリスがお世話になっている。叔母の所に行くので、後半でも良いですか?」


「うん、待ってるよ。親もその頃には、来るし」


「えっ、それでは、ちゃんとご挨拶しないとですね」


「ローズ先輩達も一緒に来るかな?」





「わたしは、パース。さすがに、大公とか、マキシには、会いたくないな。リリアだけ行くよ。良いマックス?」


「はい、わかりました」


「リリア 、ちゃんと挨拶するんだぞ。マックスの婚約者目指してるリリアですって」


「お姉ちゃん!」







 僕とランドールは、夏休み突入と同時に帰郷した。寮の部屋移動は実習中の学生もいるため、事務員さん達が、ハインリヒや、ジョイの荷物を動かしていた。僕も新しい部屋に移った、この学年は、成績出なかったので、そのまま上の階に移動するだけだった。





 シャーリンに到着する。レオポルドの出迎えを受け、大公屋敷へ、お祖父様達に挨拶すると、暇になった。レオポルド、エピジュメル、パウロス、ランドール、ポルビッチと模擬戦したり、ああ、ポルビッチは他の4人から比べると、少し弱い。それでも、帝国の騎士団の演習を任される程の実力らしいが。



 後は、シャーリンの街中歩いたり、郊外を散歩したり。少し飽きてきた頃、ハインリヒが帰ってきて、そして、リグルドと、ビクターも帝都から早めにやってきた。ランドールに、ハインリヒの魔導鎧のテストをし、リグルドと遊んだり。ビクターも加えて模擬戦したり。それも、飽きてきた時、帝都からお父様と、お母様が、そして、リリアちゃんがやってきた。







「はじめまして、リリア=フォン=アルフォルスです。マックス先輩とお付き合いさせて頂いております。どうぞよろしくお願いいたします」


「はじめまして、こちらこそよろしくお願いいたします。マーガレット=フォン=ローデンブルクです。マックスの母親をやっております」



 リリアちゃんが大公屋敷に来て、お祖父様、お祖母様、お父様、お母様、そして、リグルドと挨拶をかわす。そして、



「マックスは、先輩としてちゃんとやっているか?」


「はい、とても良い先輩です」


「そんなことより、リリアちゃんこれ食べて、わたしが作ったのよ」


「はい、いただきます。うん、美味しいです。お母様、今度作り方教えて下さい」


「良いわよ。今度と言わず、明日にでも教えるわよ」


「はい、お願いいたします。お母様」







「マックス先輩、ここにいたんですね。探しちゃいましたよ」



 僕は、大公屋敷の広大な庭、少し高く丘のようになっている。芝生に寝転んでいた。リリアちゃんがやってきて、隣に座る。美少女が風に吹かれる姿は、それだけで絵になる。



「マックス先輩、お母様に教わって、これ作ったんで食べてみて下さい」



 リリアちゃんが、持ってきたのは、卵コロッケ僕の大好物だ。ホラス大公家オリジナル料理らしく、他では食べたことがない。



 卵を茹で、縦に切る。そして、白身の半分だけを残して、残りの黄身と白身の半分を潰す、そこにベシャメルソースを加え、さらに細かく切ったハムとパセリを加え、塩胡椒で、味を整え、残しておいた、白身を器のように、できれば、元の卵の形になるように整え、衣をつけて揚げる。



 僕は、大きく口を開け、卵コロッケを頬張る。



「うん、美味しいよ」


「良かったです。お母様、料理お上手ですね。わたし、今度は学校でも作りますね」



 普段、料理人が作っているので、お母様の料理は趣味みたいなものだが、リリアちゃんと気があって、教えるのが楽しくて、とても嬉しそうだ。まあ、良かったな。



 こんなのんびりした、夏休みを過ごしたが、そろそろ夏合宿だ。新入生ガイダンスの準備もある。どんな、新入生が入ってくるのだろうか。







 合宿が始まった。イシュケル主将の元、現役部員8名。そこに、ビルマイス先輩に、アドルフ先輩、そして、マスターゴーラン。総勢11名。練習は、激しいが楽しい。そして、




「ガハハハ! ほら、イシュケルも、マックスも飲め」


「はい、いただきます」



 僕達も成人を迎えたってことで、合宿中に開催されている、飲み会に参加する。マスターゴーランの秘蔵の酒が振る舞われる。



 マスターゴーランや、ビルマイス先輩はお酒が強いようで、平然と飲んでいる。アドルフ先輩は、ややペースをゆっくり飲んでいるようだが、かなり顔が赤く。ろれつも回っていない。イシュケルも、お酒好きなようで、凄い勢いで飲んでいたが、今は隣で、豪快に寝ている。レーレンさんは、完全にお酒弱いようで、一口飲んだだけで、顔が真っ赤になり、なにやらぶつぶつ言っている。



 僕は楽しく飲んでいる。明日は、合宿の休み。ゆっくり飲むのも良いだろう。気づいたら、部屋には、僕とマスターゴーラン、そして、ビルマイス先輩だけになっていた。


「失礼しました。これで、部屋戻ります」


「マックス、まだ飲めるんだろ。良いじゃないか、もっと飲んでいけ」


「えっ、良いんですか?」


「ああ、明日は休みだ。ゆっくり飲もう」



 こうして、3人で翌日、朝方近くまで下らない話をしつつ、飲み明かした。これも、また、楽しかった。







 そして、合宿最終日。恒例の奥義披露になった。



「錬身流奥義朱雀!」




 マスターゴーランが飛び上がると、4体に分身して、空中で、大上段に振りかぶると、扇の要に集まるように収束して、4体のマスターゴーランが、大岩の一点を叩く。大岩が粉々に砕け散る!



 そうか、雷鳴流奥義陽炎乱舞のように分身して、四方八方から攻撃するのではなく、それを一点収束にして攻撃する。これは、僕向きの技だ。って、封印のピアスつけている僕には分身も出来ない。こんな技出来るか!




「ガハハハ!」



 マスターゴーランの高笑いのみが響く。






 帝国歴346年9月1日レイリン騎士学校2年生終了。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る