第21話 実務実習開始

 クリスマス前日、帝都からお父様、お母様、リグルドにビクターがやってくる。


「マックス、学校はどうですか?。ちゃんとやってますか?」


「はい、自分なりに、頑張っています」


「それは、良いことです。そう言えば、リグルドは、予備学校に入学しましたよ」


「凄いな。リグルド。これで、推薦入学もあるな。兄は凡人、弟は天才か?」


「兄様。それは違いますよ。僕では、兄様に絶対勝てません」


「そう言ってくれるのは、リグルドだけだ」






 そして、クリスマス当日、全員が揃いクリスマスパーティーが開催された。今回は、家族にリグルドが加わった。とても楽しいパーティーだ。今回も、途中抜け出し、レオポルド達の食事会にも顔を出した。




 そして、新年早々、帝都に戻る、父親達と共に、屋敷を後にし、学校へ戻った。



「いよいよ実務実習開始か」


「緊張するかな」


「ああ、お互い頑張るしかないな。よし、頑張ろう!」


「おー!」







「えー、僕がこのチームの担当します。アランチェスです。アランとでも呼んで下さい。どうぞ、よろしく。で、僕は皆を危険な目にあわせたくないので、その能力を把握したいので、自己紹介して、その後、僕と戦ってもらい、実力を把握させていただきます。そして、能力的なものも、隠すことなく、教えて下さい。では、自己紹介お願いいたします」



「はい、ロゼリアです。戦う事には自信あります。よろしくお願いいたします」


 真っ赤な長い髪をかきあげ、かなり美形だが気の強そうな顔をこちらに向け、その大きめの胸を反らして挨拶する。身長は、僕より、少し低いか。



「えっと、マクシミリアン=フォン=ローデンブルクです。マックスと呼んで下さい。騎士能力低いので、戦闘はいまいちですけど、探索能力は高いと思うので、その辺で、役にはたてると思います。よろしくお願いいたします」



「わたし、剣術大会で戦ったことあるわよね?。結構強かった気がするけど、そうなのね、騎士能力低いのか。身長高いしイケメンだし、騎士能力低いのは、残念ね」


 ロゼリアさん、結構ズバズバ言うタイプだな。まあ、裏表無さそうで付き合いやすいか。



「わたしは、メイリン=ビューティーです。魔術師で、身体能力強化魔法、回復魔法が得意です。探索系の魔法は、少し苦手ですけど、使えます」



 身長は、女の子の年相応の身長だろう。なので、僕達に囲まれるとかなり小さく見える。茶髪の髪をボブというのだろうか?にして、前髪は、目まで隠すように下げられ、ちょっと大きめの白のローブが全身を覆っている。



「可愛い顔しているのに、何で隠しているの。まあ、いいわ。それより、ビューティーって、あのビューティー?」


「はい、あのビューティーです」


「へー。ビューティー商会か」



 ビューティー商会。そうかビューティー商会のビューティーさん、なのか。かなり有名なお店だ。ただ、有名なのは、お店が大きく、いろいろな場所に支店があるからだけでなく、その業態だ。



 お金さえ頂ければ、何でも用意します。を売り文句に、何でも屋として、開業すると、急速に大きくなった。裏の商売を主力として、奴隷、毒薬や、麻薬、暗殺者や、武器の商人として。



 国々も、自分たちに手を出さなければ、見てみぬふりをするという感じになっている。闇の商人ビューティー商会。確か創業者は、アズアリン=ビューティー。



「アザアリン=ビューティーさん、でしたっけ? 創業者」


「アザアリンは、わたしの祖母です。わたしと違って、凄い力を持った魔術師ですけど」


「へー、そうなのね」





「自己紹介終わった所で、次は、僕と戦ってもらいます。メイリンさんは、魔術の効力を見せてもらいます」


「はい!」






「わたしからね。メイリン、魔法よろしく」


「はい。では」


 ロゼリアさんの体が、薄く光る。そして、


「メイリンさん、僕にもお願いします」


「はい」


 今度は、アラン先生の体が薄く光る。



「では、かかってきて下さい」


「はい、よろしくお願いいたします」



 アラン先生は、雷鳴流、剣を2本持ち、1本の剣を前に、もう1本の剣を体の横に持ち、腰をやや落とし、足を前後に開いて構える。ロゼリアさんは、剣を中段に構える。剣は、今までと違い実刀になっている。僕は、偽装して普通の剣に見える黒の神剣だが、それぞれ、支給された真剣か、使いなれた剣を持っている。





「キエエエー!」


 ロゼリアさんが、気合いと共に、踏み込み斬り込む、アラン先生は剣を受け止めると、もう1本の剣で、切り返す。慌てて、ロゼリアさんが受け止める。ロゼリアさんは、力任せに弾き返すと、少し距離をとり、また斬り込む。激しい戦いが続く。そして、何度目かの、ロゼリアさんの斬り込みを大きく弾くと、アラン先生は、ロゼリアさんの喉元に剣先を突きつける。



「なかなか、強いですね。では、メイリンさんに傷を治して貰って下さい」


「はい、ありがとうございました」



 メイリンさんが駆け寄ってくる。そして、ロゼリアさんの傷を魔法で治す。一瞬で傷が治る。


「見事な魔法です」





 次は、僕の番だ。僕は、剣を構える。中段の構えだが、腰の位置は低い。



 僕は、斬りかかる。アラン先生は、あっさりかわすと、反撃に出る。僕はその剣を流しつつ、アラン先生の懐に飛び込み、当て身で体勢を崩す。そこに、剣を振るう。やや、バランスを崩した、アラン先生だが僕の剣を防ぎ、弾き返す。



 僕の攻撃をアラン先生は、余裕をもって返していく。そして、アラン先生は、攻撃を返して、僕は追い詰められ、降参した。



「なかなか、面白くて、良い剣です。うん、充分強いです。自信持って下さい」


 僕の傷も、メイリンさんが治してくれる。





「では、探索の能力を見せてもらいましょう。まずは、メイリンさん、魔力探査ですよね? やって見て下さい」


「はい、わかりました」



 メイリンさんの体が薄く光り、探索の輪が広がる。範囲はだいたい300m位との事だった。



 そして、僕の番になった。僕は探索を開始する。気配を探る。範囲を広げて街を覆う。そして、メイリンさん、発見。


「メイリンさん、街中の入り口から3番目の通りの路地にいました」


「そうですか。わかりました」



 僕は、ロゼリアさんの場所を探す。うん?

いないな。僕の限界範囲まで広げても見つからない。



「ロゼリアさんは、見つかりません」


「そうですか。どこにいるのでしょう。信号弾打ち上げるので、動くと思うので、探索していて下さい」


「はい」



 信号弾があがる。すると、探索範囲に、ロゼリアさんが、入ってきた。全速力で、走っている。



「ロゼリアさん、見つけました。範囲外から全速力で走って帰ってきます」


「そうですか」





「これで、皆さんの力量は、だいたいわかりました。後は、仕事の依頼があり次第、出発します。それまでは、チーム訓練します」







 こうして、実務実習は、始まった。訓練日は訓練以外基本自由だし、土日は休みだし、部活も出れる。そして、10日程たって、僕達に順番が回ってきた。レイリン自治都市の商人さんが、1ヶ月ほど、周囲の町や村を回って商売をする時の護衛だ。



 行商の護衛は、基本中の基本の仕事で、キャラバンを組んで動いている時の警備方法、夜営時の交代での警戒方法、襲われた時の実際の護衛を訓練しながら動く。まあ、夜営の仕方等も訓練の一部だけど、ロゼリアさんや、メイリンさんが一緒なので、テントに一緒に寝たり気まずい。



 ロゼリアさんが、テントで着替えている時に入ってしまい慌ててテントから飛び出したこともあった。後で、ロゼリアさんに謝ったが、一言


「何が?」



 たくましい。気にしていたら、騎士などできないそうだ。

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