第16話 リリアとローズ

 合宿が終わり片付けをして、敷地を歩いていると、遠くから声が聞こえた。ん? 誰だ?




「マックス先輩~。少し、そこで待っていてください!お食事一緒に行きましょう!」



 声の方を見ると、ん? 誰? 目では小さな点にしか見えない。声からして、リリアちゃんだけど、リリアちゃんこんな大声だすかな?。気配を探る。と、うんリリアちゃんと、ローズ先輩だ。



 そして、そんなことをしているうちに、点はみるみる大きくなり、そして、約1分後制服姿のリリアちゃんと、ローズ先輩…。先生が立っていた。



「お久しぶりです。マックス先輩。お元気でしたか?」


「うん、元気だったよ。リリアちゃんは、元気そうだね」


「はい!」


「そして、ローズ先生、お疲れ様です」


「ローズ先生は、やめてくれ、先輩でいいよ」



 目の前に美人姉妹が並んでいる。ローズ=フォン=アルフォンス先輩と、その妹、リリア=フォン=アルフォンスちゃんだ。



 2人とも美女だが、タイプが違う。身長は同じくらいだが、お姉さんのローズ先輩は、銀の髪は、ショートで顔はいかにも勝ち気という感じだし、青色の目はギラギラとしている。肌は赤銅色で、健康的だ。そして引き締まった筋肉質の身体をしている。



 リリアちゃんは、同じ銀色の髪はロングにしていて、顔は清楚なお嬢様って感じで、目は、柔和で、切れ長の目だ。肌は白く、抜けるようだ。身体は引き締まっているが、柔らかな印象を受ける。



「あんまり、じろじろ見るなよ。恥ずかしいだろ? そう言えば、メーアのお土産もあれだったし、私に興味があるのか? ちゃんと今も履いているよ」




 ん? ローズ先輩が変なことを言い出した。しかも、恥ずかしそうにもじもじしながら、似合わない、とても気持ち悪い。



「なっ!まさかマックス先輩、お姉ちゃんへのお土産ってシルクのパ、パ」


「違うよ!シルクのストール。お土産用の」


「ハハハ!」


 ローズ先輩が爆笑する。リリアちゃんが、膨れている。


「お姉ちゃんひどい!」


「ごめん、ごめん。で、リリア、マックスに話あったんじゃないの? 入寮時からキョロキョロ一生懸命探していたじゃん。長身でモデル体型のイケメンで、性格は良いけど、ヘタレで能力的にはポンコツの騎士を」


「お姉ちゃん、言い過ぎ、そしてマックス先輩は、ポンコツ騎士じゃないです」


「はい、はい、ポンコツ騎士です」


「マックス先輩! 変なこと言わないでください。ポンコツ騎士じゃないです! あっそれより、再会を祝して、お食事に出かけませんか?」


「うん、良いね。リリアちゃんの入学も祝して」


「はい、ありがとうございます」


「あれっ、そう言えば、えーと、リコリスちゃんは?」


「あれっ、また言ってなかったっけ? リコリスは、巫女としての力を悪用されるといけないから、叔母の所で、預かってもらっているんだ」


「そうですか。では、大丈夫ですね。では、行きましょう。どんなの食べたいですか?」


「おっ、お店マックスが、決めてくれるの。じゃあ、任せた」


「わかりました。では」



 僕は歩き始める。すると、2人は、僕を挟むように歩いていく。通行人の目が僕達に集中する。そりゃ、美少女2人だもんな~。



 そして、一軒のお店の前に立ち止まる。レイリン最高級のお店の1件、「フロリエール」だ。


「ここって、入れないよ。前に来た時、断られたよ。うちは会員制ですので、資格がある方のみ、御入店頂けますって。言われて」


「その資格を僕は持っているのです」



 思えば辛い日々だった。最初来た時、同じように断られ、それでも、と、食い下がったら。水一杯だけ、玄関で飲まされ。では、1週間後に来てくださいと言われ、来ると5種類の水から前回飲んだ水を当て。それに合格すると、次は薄いスープ。それに合格すると、一品だけ、料理が出され、それについてコメントする。そして、フルコース分終わると、合格です。と、言われて入店出来るようになった。最後は意地だった。



「ようこそお出でくださいました。マックス様。では、こちらへ」


「へー。ここ入店する人始めて見た」


「なんか、凄いお店ですけど、私の入学祝いだからって、良いんですか?」


「ん? いや、僕が食べたかっただけだけど。逆に良かったかな、このお店で?」


「はい、ええと、ここは名前からして、フロリエール料理ですよね? 大好きです」


「ローズ先輩は?」


「うん、好きだね!」


「良かったです」



 フロリエール料理。フロリエール聖帝国の料理だ。法術士国家の大国のひとつ。聖帝。トゥルク神聖国の名前にも入っているが、いわゆる聖人、聖女など、預言や、奇跡を起こす人達が国名の由来になっている。そして、聖帝、歴代血筋の中で代々聖人、聖女が誕生して、皇帝になっている、アスフォリア大陸最古の国のひとつである。



「美味しいですね。これ」


「うん、美味しい。何でこんなにバランスとれているんだろう」


 目の前には、前菜のホタテ貝と夏野菜をゼリーで固めてウニのソースのかけられた料理を食べている。



「良かったです。喜んで頂いて」


「うん、本当に美味しい。で、全然話変わるけど、リリア、何部入るの?」


「どうしたの急に」


「いや、ずーっと剣王流やってきたけど、今回は、ライバル登場したというか」


「ライバルって何ですか? でも、リリアちゃん、錬身流の見学にも来てね」


「はい、もちろん行きますよ」


「剣王流の見学も来てよね」


「当たり前だよ。どうしたの?」


「いや、マックスと私、リリアにとってどっちが大事なのかなって?」


 ローズ先輩、また、からかっているな。そんなの当たり前でしょ。


「う~ん、どっちだろ? う~ん」


「えっ、冗談だよね?」


「えっ何が? うん、どっちも大事だよ」


「えーん。姉妹の愛が、ただの知り合ったばかりのイケメンポンコツ騎士に負けたよ~」


「お姉ちゃん!ポンコツ騎士じゃないです!」


 うん、何かずれている。



 その後オマール海老のビスクスープが出て、続いて鱸のムニエルマンゴーソース。そして、牛肉のグリルの赤ワインソース。最後は、フルーツと、ピスタチオのアイスという料理であった。



 最後に、カモミールティーを飲みながら、


「この前、剣聖クレストに会いましたよ」


「えっ、クレストって確か北の方にいますよね?」


「ああ、確かモルディニア国。また、何か悪巧み?」


「いえ、どちらかって言うと、ヴァルド王国の悪巧みですね」


「ふーん、で、クレストってどうだった?」


「う~ん、強かったですけど、それほどの圧力は感じなかったような」


「ふーん、因みにクレストは歴代最強の剣聖の一人って言われているけどね。何せ、剣聖ランベルクが負けているからね」


「えっ!」


「私も一緒にいたからね。真正面から戦って、負けて、じゃあお前が次の剣聖なって言ってね」


「そうなんですか」


「現在騎士の強さだったら、クレストで、マキシかな。そして、メッセンかな?」


「メッセン?」


「三名家のシュヴァリエ家の若き天才だね」


「ローズ先輩は?」


「う~ん、今の所三剣最弱かな?」


「リリアちゃんは?」


「えっ私ですか? 私は強くないです」


「嘘つき。天剣、白の神剣を持つ人が何言ってんだか」


「2人とも凄いですね」


「凄くないですよ。それより、美味しかったです。ありがとうございました」


「ああ、凄く美味しかった。ありがとうね」


「いえ、良かったです」


「明日から、後輩として、よろしくお願いいたします。マックス先輩」

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