第14話 剣聖クレスト
僕達は、馬を走らせる。首都から、西の方にある、山間部の渓谷に剣聖クレストは、いるそうだ。
剣聖クレスト。現在42歳、5歳の男の子と、3歳の女の子のお父さんだそうだ。先代の剣聖ランベルクを僕が殺した後、ランベルクの指名で剣聖となった。それまでは、三剣の一角で突然現れたランベルクと戦い、次期剣聖に選ばれていたそうだ。
その当時の三剣は、ドラグのお父さん、マスターゴーランに、クレストであったが、ドラグのお父さんの引退で、最年少でローズ先輩が指名され。クレストの剣聖昇格で、気水流の若き天才が、クレストによって任命されたと、聞いている。
「若、誰かいそうですか?」
「まだ、いないね」
「そうですか。では、クレストは動いたのでしょうか?」
「わからないけど、とにかく探そう、探索に引っかかたら、すぐに言うから」
しばらく、峡谷を走り回り、気配を探す。すると、複数の人間の気配を感じた。そして、範囲は狭いが濃厚な探索能力の円に触れる。これが、剣聖クレストの気配だろう。
「レオポルド見つけた! 馬を降りて向かうぞ。ここから、1km位先の崖の下だ。えっと、12人位に囲まれている」
「畏まりました」
レオポルド達は、馬を降りて走る。音がしないし、気配を消せるのと、騎士は短い間、10分ほどであれば、時速60km以上で走れる。
僕も後を追う。すると、崖下から戦闘音がしてくる。
「パナジウム、ハインリヒ!」
「はい!」
パナジウムとハインリヒは、皆に強化魔法をかける。すると、レオポルド、エピジュメル、ランドールが飛び降りる。高さは100mほど。着地すると、
「剣聖クレスト様でしょうか? 私、ホルス大公家家臣レオポルドです。助太刀いたします」
「ありがとうございます。助かります」
と言って、相手の向き合う。ハインリヒと、パナも援護するために、魔法でゆっくりと崖を降りていく。僕は、そっと崖下を覗き待機することにした。
相手は、傭兵と言っていたが、服装こそ、傭兵だが、剣の構え、そして隊列。完全に、鍛えられた騎士団のものだった。やっぱりね。ヴァルド王国の騎士だろう。騎士の育成にとても力を入れていて、騎士の数も多いはずだ。確か、赤騎士団とか、青騎士団とか、色々な色の騎士団があったはずだ。そのどれかかな?。
相手の数は。騎士8名、魔術師4名のようだ。こちらは、騎士は剣聖クレスト、レオポルド、エピジュメル、ランドール、魔術師が、パナとハインリヒと、もう一人女性が、確かランベルクの魔術師をしていた。ええと、アレリアだ。
そして、ヴァルドの騎士が2人一組で、襲いかかった。戦いが始まる。敵も決して弱い敵ではなかったが、決着は結構早くについた。
エピジュメルは、2人に挟まれ攻撃されながら、気水流の技で、相手の剣を流し続ける。そして、1人の体勢が崩れると、剣を絡めて巻き上げ、相手の胸に剣を突き立て、戦闘不能にさせると、もう1人は、追いたてられ、複数の手傷を追って膝をついた。
ランドールは、素早い動きで2人を撹乱しつつ、鋭い一撃を加える。そして、徐々に追い詰め、1人の騎士の腕を斬り落とす。すると、もう1人の騎士は、その騎士を連れて後退した。ランドールは、相手を追わず、周囲を見た。
レオポルドは、最初の一撃で、1人を斬り殺し、後の1人と戦うが、すぐに相手を追い詰め、重症を追わせる。 そして、クレストの戦いを見つめる。
剣聖クレストの相手の1人は、別格に強いようだ。あっという間に、1人を倒したクレストだったが、残った1人と斬り結ぶ。クレストが、力をこめて、相手を崩すと、相手は、そこから、投げ技を繰り出し、体勢を入れ替え、斬りかかり。高低差を利用して上手く戦う。これって、錬身流だ。マスターゴーラン知っているかな?
しかし、自分以外の決着がついたのを知ると、
「魔術師共、魔法だ! 撤退する!」
周囲に煙が充満する。気配が、凄まじいスピードで移動する。どうやら、死んだ1人を残して、撤退したようだ。煙が晴れる。斬り落とされた。腕もない。
「ありがとうございます。助かりました」
「いえ、クレスト様のお手伝いができ、光栄です」
「それで、上におられる方は、どなたですか?」
えっ、気配完全にたったつもりだったのだけど。見つかった?
「えっ!」
「いや、気配はないのですが、微弱な魔力を感知しまして、どなたかなと」
「ああ、そうでしたか。我が主のマックス様です」
僕は立ち上がって崖を滑り降りる。そして、剣聖クレスト達の前に立つ。すると、アレリアさんが、
「なっ、貴様!」
「違うよ、アレリアさん、マキシじゃないですよ」
「えっ!」
「えっと、はじめまして、マックス=フォン=ローデンブルクです」
「ありがとうございました。あなたの家臣達に助けられました」
「いえ、僕達の目的の一つですから。あなたを助けることが」
「なるほど」
「ヴァルド王国は、あなたを取り込もうとして、失敗し、あなたを排除しようとしたと」
「たぶん、そういう事でしょう」
「帝国としては、不安定な北方にいて欲しくないと、考えていると思いますけど」
「申し訳ありません。ただ、妻が厄介な病でして」
「そうですか。それは、お気の毒です。そして、申し訳ありません」
「いえ、気にしないで、下さい」
これは、僕がこれ以上口挟むことではないな。
僕とランドール、ハインリヒは、北方を少し見学しながら、帰途についた。レオポルド達は、モルディニア国と話し合いをした後、帝国軍の司令官に今回の顛末を話してから、帰ってくるそうだ。
「剣聖クレスト、期待していた程ではなかったですね」
「う~ん、まあ本当の実力は隠していただろうね」
「はあ、それは我々も同じですが」
剣聖クレスト、かなりの長身で、黒い髪に黒い目、そして黄暖色の肌、体格はがっちりとしているが、剣聖ランベルクのように筋肥大しておらず引き締まっていた。そして、丁寧に話していたが、本当のところは、どうなんだろう? 羊の皮を被った狼? いや、虎とか、龍なのかもしれない。
僕達が、大公屋敷に帰って、しばらくして、レオポルド達が、帰ってきた。そして、代わりにポルビッチが出かけていった。
「レオポルド、どうだった?」
「特に、ありませんが、どうも奥方様の病気良くないようです」
「えっ、そうなんだ。大変だね」
「はい、そして、そのために、いろいろな人が接触してくるようで、宗教家とか、薬師とか、医師とか、魔術師とか」
「なるほどね」
「なので、一応ポルビッチに行ってもらって、その辺の道筋つけてもらおうと思っています」
「そうだったのか。わかった。ありがとう」
そして、7月末、お父様、お母様、そして、リグルド、ビクターが一緒に帰ってきた。叔父様達は、新しい別荘を買ったそうで、そちらに行ったそうだ。 そして、
「兄様、僕兄様の本当の弟になりました!」
「へっ?」
「ああ、リグルドね。うちの子になったの。あなた弟欲しいって言ってたでしょ」
「えっ、リグルドが弟?」
「そう、養子の手続きで、帝都に連れていってたのよ」
「そういう事か。リグルド良かったなー。これからは、本当に僕の弟だ」
「はい、兄様。僕は、リグルド=フォン=ローデンブルクです」
そして、8月中旬長かった休みを終え、レイリンに戻る。今回は、お父様、お母様、そしてリグルドとビクターとも、一緒だった。これからリグルドは、帝都のローデンシア公爵邸に住むそうだ。そして、
「兄様、いってらっしゃい!」
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