第13話 夏休みとヴェルド王国
寮の部屋を片付け掃除すると、荷物を運び出す。そして、寮の受け付けに行く。そして、自分の鍵を返す。一年間ありがとうございました。良い部屋だった。
そして、新しい部屋の鍵がもう戻っているようで、鍵を受け取って、荷物を持って移動する。今度は、3階の奥の方だ。
「では、出発するか」
「はい」
僕とランドール、ハインリヒは、出発する。夏休み最後に錬身流の合宿があるがそれまで、2ヶ月半の長期休みだ。まずは、大公屋敷に行って、予定はそれから考えよう。
大公領、シャーリンの駅で降りる。すると、パウロスが迎えに出ている。レオポルドじゃないんだ。どうしたんだろ?
「お祖父様、お祖母様、ただいま戻りました。1年終わりました」
「騎士学校の1年は、どうだった?」
「はい、お祖父様。良い1年でした」
僕は、剣術大会の話や、合宿の話、友達とのメーア旅行の話をする。すると、お祖父様が、
「今度は、友達も、リリアさんかなも、一緒に連れて来なさい」
「えっ? はい。話してみます」
「そう言えば、レオポルドや、リグルドはどうしたんですか?」
「ああ。リグルドと、ビクターは手続きのために、帝都に行っている。そして、レオポルド達には、ちょっと頼み事をして、出かけてもらっている」
「頼み事ですか?」
「ああ、ちょっと北の方がきな臭くてな。帝国軍も騎士団や、兵を動かしたんだが、まあ、レオポルドや、エピジュメル、パナジウムにサポートをな。何せ北には、剣聖クレストがいるからな」
「なるほど」
今度は北か。確かに過激な軍事国家ヴァルド王国もあるし、新しい剣聖クレストが北方の出身で、さらに最近母国に帰り滞在していると言う話も聞く。出身は、確か帝国の従属国のモルディニア国だったか。
「お祖父様、僕も行ってきて良いですか?」
「ん? うむ。う~ん。うん、そうだな。マックスがいた方が良いな。ただし、マルガリータ達が帰ってくるまでには、戻っているように」
「はい、わかりました。お母様達が帝都から来るまでには、帰ってきます。では、さっそく準備します」
「あっちょっと待て、レオポルドが用意していたものがあるから、受け取ってから出発するんだ」
「はい、わかりました」
パウロスから、レオポルドが用意していた物を受け取る。それは、僕の騎士団の軍服であった。いつの間にか、パウロスも着替えている。
上着は、膝やや上丈の長さの白いコートのようになっていて、下の方は足を前に出す時邪魔しないようにか、開いている。上の方はボタンを留めると、シャツを着てネクタイをしているかのような構造になっている。
そして、背中には、大きく大公家の紋でもある、黒い神剣が刺繍されている。そして、大きな襟もネクタイも、ボタン留めの部分も、袖の返しも黒い。ズボンも黒だ。
そして、学校の制服と違って、軍服全体に魔法がかけられて、防御力もかなりありそうだ。これ、高いだろうな。僕の襟には、金の糸で、Aの文字が刺繍してある。
さっそく、着替えて、偽装して、コーティングされ、白く見える黒の神剣を腰に差す。
「じゃ、行ってくる。パウロス」
「わたくしも、お供します」
「いや、お祖父様の護衛を頼むよ。ランドールとハインリヒもいるし」
「はっ、畏まりました」
こうして、僕とランドール、ハインリヒは北を目指した。さて、レオポルド達はどこにいるかな?
僕達は、4日程で、帝国最北の街に入った。そして、その郊外に帝国軍が布陣しているという情報を得た。ランドールを、帝国軍の陣に行かせて、話を聞くと、とりあえず、ヴァルド王国は、軍を動かしてはいないという事と、レオポルド達は、もう少し北に向かったという情報を得た。
僕達もさらに北に向かう。さて、そうすると、とりあえず、剣聖クレストがいるっていう、モルディニア国に向かってみるか。
さらに2日ほど北上して、モルディニアに入る。ここは、夏だというのに、結構涼しい。標高も少し高いようだ。またさらに北に行くと、標高が下がり、平地になり、そこにはヴァルド王国が広がっているそうだ。
麦畑の広がる、モルディニアの地を馬で走る。そして、モルディニアの首都に入る。そして、一軒の屋敷から出てくる、レオポルド達を見つける。
「レオポルド!」
「えっ、若。どうして、ここに」
「なんとなく」
「は?」
僕達は、レオポルド達が泊まっているホテルに入る。まだ、部屋は、空いていたようで、僕とランドール達の部屋をとった。
「若、お疲れでしょう。ゆっくり休んでください」
「いや、それよりも、レオポルドは、何でここに?」
「はい。ヴァルド王国は、軍を動かしてはいなかったのですが、どうも傭兵を使って北方の従属国を動揺させているようだという情報で、探っていたのですが、さらに、その傭兵の一部が剣聖クレストと接触しているようだという情報を掴み、モルディニアに来たのです」
「うん」
「そして、剣聖クレストを訪ねたのですが、あいにく外出中で。ですが、奥方様達は、明日帰ってくるということなので、明日、もう一度訪ねてみようと思っています」
「そうか。う~ん」
ヴァルド王国は、傭兵を雇って、帝国従属国を揺さぶっている。そこはいい。傭兵の一部が剣聖クレストと接触しようとしている。そんな変なことするか? だいいち、傭兵使って接触するような国を剣聖は、信用しないだろう。
「えっと、明日、レオポルド達が、屋敷行くのはいいとして、剣聖の奥さん?に会って剣聖の居場所分かったら、すぐに会いに行こう」
「はい、畏まりました。ですが、傭兵ごとき、剣聖クレストの敵ではないでしょう。若は、ゆっくり休まれてから」
「レオポルド。その傭兵は、傭兵じゃないと思う。おそらく、ヴァルド王国の騎士、しかも一流の」
「えっ。そうですか」
「うん、そして、目的は、ヴァルド方に剣聖を引き込むこと、もしくは、ヴァルドに邪魔になるようなら、排除すること」
「なっ、まさか」
「剣聖だって、人間だよ。いくら強かったって、油断したり、大勢に襲われれば、倒されるよ。現に、僕は剣聖ランベルクを倒している」
「なるほど。畏まりました。明日、会いに行き情報得次第、出発しましょう。いや、若が来て下さって良かったです」
「そうか? パナとかも、読めそうだけど」
「マックス様、買い被りですわ」
「そうかな? じゃあ頑張って」
「はい、畏まりました。努力致しますわ」
その日は、宿に宿泊する。翌日、昼前に、レオポルド達が出かけて行く。さて、僕も準備をして待つとしよう。そう言えば、探索の能力をいろいろ試しているのだが、今回使ってみよう。
前は、目を瞑って集中して行っていた。これだと、かなり広範囲の誰がいるかとか、相手の強さとかも把握できたが、同じく探索能力に優れている人間にばれてしまうことがわかった。
そこで、いろいろ創意工夫して、人がどこにいるかしかわからないけど、気配を薄く探ることが出来るようになった。そして、これだと、気配を探れる人の索敵範囲に触れても気づかれないこともわかった。
さらに、目を開けて動きながら、範囲は狭まるが、ある程度探れるようになったので、今回使ってみようと思う。
さて、レオポルド達が帰ってくるようだ。出発しよう。
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