第12話 剣術大会と卒業式

 春休みが終わると、短い春学期が始まった。そして、2ヶ月が過ぎ、あっという間に期末テストに突入する。1年生であるのも後僅かだ。



 期末テスト、今までより少し期間が長い、その理由は、座学のテストや、体力測定、騎士能力判定の後、剣術大会があるためだ。そして、年間順位も発表される。



 僕は、座学では、結構上位を、騎士能力では、相変わらずの順位を、そして、体力測定では、中位やや下の順位を獲得して、剣術大会に突入した。



 男女一緒に80人がトーナメントで、対決して、ベスト5が総当たりで戦い、上位2名が決勝戦を戦うというルールである。純粋に剣術のみ、対戦はくじ引きだ。



 剣術では、錬身流で頑張ったし、一回戦は突破したいな。くじ運もあるし、上位になったからといって、良い成績になるわけではなく、担任の先生達が試合を見て評価するのだが。



 そして、大会が始まった。まずはくじ引きだ。くじを引くと、68番。ボードを確認すると、1回戦は、フィロランド君?良く知らないな。


「皆対戦相手決まった?」


「うん、僕対戦相手ピノだったよ。戦いにくいよね」


「いや、正々堂々戦うし」


「そうだな。お互い頑張ろう」


「そうかな」


「ジョイは?」


「えっと、良く知らないけど、ランドールって人。学年トップらしい」


「えっ、運悪いな」


「でも、精一杯頑張るよ」


「う~んと、ランドールは雷鳴流の使い手で、かなりと言うかとても強い。気水流や、剣王流も習っているから技も多彩で、性格的にも真面目で油断しない」


「えっ」


「ただ、相手の力量を確かめる癖があるから、最初から、全力でいけばチャンスがあるかも」


「ありがとう、マックス。しかし詳しいな」


「僕の付き人だからね」


「そうだったんだ。知らなかった」


「で、僕の対戦相手のフィロランド君って知ってる」


「フィロランド君? 誰だろ?」


「フィロランド君は、騎士の能力は高いけど、剣術嫌いで、僕と同じ部活だし」


「そうなんだ。ありがとう」



 剣術嫌いならなんとかなるかなぁ?。まあ、騎士の能力高いなら、元々の身体能力は高いだろうから、気をつけないといけないけど。



「試合始め!」



 フィロランド君は、木刀を振りかぶって全力で走ってくる。ん? 速いけど。僕は、振り下ろされてくる木刀を体の軸を左にずらしつつ、木刀で受けて、右に弾く。そして、フィロランド君の脇を走り抜けつつ、フィロランド君の右胴を打つ。


「ヤッ!」



 そのまま、フィロランド君は倒れる。



「勝者、マックス!」



 こうして、1回戦は、見事突破した。





「お疲れ様。どうだった?」


「うん、無事勝ったよ。で、ドラグ対ピノはどうだった?」


「僕が、ドラグに勝てるわけないし。でも、頑張ったし、悔いはないかな」


「そうか。お疲れ様、ピノ」


「僕は、ピノの分も2回戦頑張るよ」


「で、ジョイは?」


「負けて、医務室かな」


「怪我した?」


「いや、気を失ったからだよ」


「そうか。戻ってきたら、話聞こうか」


「そうだね」







 2回戦の相手はと。ん? モーガンか。騎士祭りで、勝った相手だ。まあ、まぐれ勝ちみたいな感じだけどね。だけど、なんとなく、勝てる気がする。



「では、始め!」


 モーガンと数合打ち合う。弱くはないけど、徐々に、僕が圧していく。そして、


「ヤッ!」


 僕の木刀が、モーガンの腕に当り木刀を取り落とす。


「それまで! 勝者、マックス!」




 無事2回戦も突破した。



「2回戦も、勝ったよ」


「うん、見てたし。おめでとうかな」


「俺も見てたよ。おめでとう」


「で、ドラグはどうだった?」


「俺と入れ替わりで、医務室。槍術使う相手だったけど、善戦したけど、負けちゃったよ」


「そうか、残念だったね。よし、僕がドラグの分も3回戦頑張るよ!」


「やめるし、負けフラグかな」


「そうかな?」







 3回戦の相手は、女子だ。名前は、ロゼリアさん、赤い長い髪に僕と同じ位の背で出るところは出ているが、無駄のない引き締まった体格をしている。ローズ先輩に憧れて剣王流に入部した女の子のひとりだそうだ。そして、強いそうだ。あだ名は、赤髪の剣姫。




「では、始め!」



 ロゼリアさんは、八相に構える。右耳横に剣の柄がくる、一撃必殺を狙った構えだ。僕は、普通に中段に構える。


 そして、ロゼリアさんが動く、確実に僕の左側頭部を狙った、気合いの入った、右袈裟斬り。



「キエエー!」



 僕は、半歩下がりつつ、気水流のような受け技からの反転しての、相手の体勢が崩れたところのカウンターを狙う。



 反転して、カウンターの一撃は、しっかりと体勢を整えていたロゼリアさんに受け止められ、弾かれた。そして、上段からの体重の乗った面が入る。なんとか木刀で、受け止めたが、膝をつく。まずい。



 僕は、その体勢から、突きを放つが、そのタイミングで、意識を失った。右の首筋辺りに強い衝撃を感じた。





 目が覚めたのは、救護室であった。学校の魔術師の先生が、回復魔法をかけてくれている。そして、部屋にのそっと、アランチェス先生が入ってくるのが見えた。先生は、寝ている僕の方にくると、覗きこんで、一言。



「惜しい」



 そう言って去っていった。惜しいか。悔しいな。僕は、再び目を閉じた。僕の剣術大会は終わった。ベスト20。まあまあか。優勝は、もちろんランドール。ロゼリアさんも、総当たりの5人には、残ったそうだ。実質3位。凄いなー。



 因みに準優勝は、養魔剣神流のムヒタリアン。あだ名は暴獣。戦いたくない名前だな。







「皆、お疲れ様」


「終わったね」


「じゃあ、お疲れさん会やろうか」


「いいね」


「そう言えば、来年のクラス分けも出てるみたいだから、見てから街に行くか」


「そうだね」



 僕達は、成績を見に行った。ええと、僕は、座学23位、剣術38位、騎士能力78位、身体能力53位で、トータルは、48位だった。おお1クラス上がって、B-1だ。ええと、ドラグは、トータル44位、同じクラスだ。ピノは、59位、ギリギリ同じクラス。ジョイは、55位、よし、全員同じクラスだ。




「全員同じクラスになったね」


「しかし、運が良いのか、偶然なのか?」


「まあ良いじゃないか。2年も、よろしく」








 こうして、僕達の1年が終わった。そして、





「卒業生代表、ビルマイス!」


「はい。」





 錬身流のビルマイス先輩、ウルリッヒ先輩、イリーナ先輩と、トゥルク神聖国で知り合った、ローズ先輩が卒業することとなった。



 卒業生代表は、ビルマイス先輩だ。ローズ先輩とは、ライバル同士だ。剣術では、ビルマイス先輩、座学では、ビルマイス先輩、身体能力では、ローズ先輩、騎士能力では、ローズ先輩だそうだが、トータルでは、ビルマイス先輩か。



 しかし、ビルマイス先輩って、三剣であるローズ先輩と互角って凄いな。



「ビルマイス先輩卒業おめでとうございます。それにしても、ローズ先輩上回って卒業生代表って凄いですね」


「ああ、ありがとう。強さでは、ローズさんだけど、彼女、座学がいまいちだからね」


「そうだったんですね。ウルリッヒ先輩、イリーナ先輩も、卒業おめでとうございます」


「ありがとうね」


「ウルリッヒ先輩、イリーナ先輩は、卒業したら、どうされるんですか?」


「僕は、家帰るだけだよ」


「私は、まだ就職活動中~」


「永久就職すれば良いのに」


「タキリス何か言った?」


「いいえ、何でもありません」


 こうして、錬身流の4年の先輩は卒業した。




「あっ、ローズ先輩、卒業おめでとうございます」


「あっ、マックス。ありがとう。って言っても、私も、ここから離れるわけじゃないけどね」


「先輩も、研究者になるんですか?」


「私は、ビルマイスほど、頭良くないから、無理だよ。誰かに、国追放されちゃったから、先生見習いやるんだよ」


「えっ、それは、すみません」


「ハハハ、冗談だよ。気にしてないよ。それより、これからもよろしく。あっ、妹もよろしくね」


「はい、よろしくお願いいたします」

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