第8話 クリスマス休暇とリグルド

 騎士の祭りが終わり、短い休みを挟み、そして、冬学期の授業が始まる。そう言えば、テストの結果も出た。僕は、座学の成績が結構良く、剣術の成績は真ん中やや上、体力測定は下の方で、騎士能力は相変わらずのほぼ最下位クラスであった。



 そして、ドラグ達はと言うと。ドラグは全て真ん中前後。ピノは、座学が良いが、他は下位の方で。ジョイは、体力測定がトップクラスで、座学がまあまあだったが、槍術と騎士能力が下の方であった。



 そして、総合順位は、4人とも同じ位の順位で、真ん中やや下であった。これだったら、来年も同じクラスだね。と、ドラグはとても嬉しそうだ。



 そして、徐々に寒くなってくる。冬学期の授業開始から2週間が過ぎた頃、皆がそわそわしてくる。




「皆は、クリスマス休暇、家帰るのかな?」


「僕は、帰るよ。馬、軌道列車乗り継いで2日かかるけど。ジョイも、帝都近くだから同じ位?」


「そうだね。あまり帰りたくないんだけどね、仕方ないぜ。で、ドラグは?」


「僕は、遠く西の方だから、3日か4日かかるから、帰るの考えているんだよ。休み期間18日あるけどね。ピノは?」


「僕の所も遠いし、列車ないから、馬のみだし。5日もかかるし。どうするかな?」




 そう、クリスマス休暇が始まるのだ。学校始まってから初めての長期休暇。僕は、クリスマス期間は、親戚が大公屋敷に集まるので、帝都ではなく、大公屋敷に向かう。



 大公領は、帝都で列車を乗り継いで向かうことになる。久々にランドールとハインリヒとの旅だ。ドラグとピノも、帰ることにしたようで、昨日授業が終わると、準備して出立していった。ジョイは、僕と同じく今日出立だが、出発時間が違うので、昨日挨拶しておいた。



 極めて早朝薄暗い中馬で揺られて出発する。眠い。ランドールとハインリヒに行程は、お任せだからしょうがない。馬を乗り継ぎつつ、夜ジョスーに到着する。そして、到着した列車の特等個室に滑り込む。そして、ベッドに入り寝ると、翌朝帝都に到着する。




 そして、乗り換えと言っても、向かいのホームの同じ特等個室に移動する。今回は、眠くないので、個室の座席で、ランドール、ハインリヒと向かい合って座る。そして、朝食が運ばれてきた。焼きたてのパンと、オムレツ、サラダに、クラムチャウダー、そして、紅茶。僕は、さっそくとろとろのオムレツに少しケチャップをかけて食べ始める。




「そう言えば、ランドールとハインリヒは、テストどうだった?」


「はい、テストは、座学がいまいちでしたが、他は上位ではありました。えっと、ハインリヒは?」


「わたしは、一応全てトップでした」


「さすがハインリヒ、天才魔導師。で、ランドールの改造もうまく行きそう?」


「はい、そちらも順調です。ランドールも、乗り気ですし」



 冗談で言ったのだが、怖いな。話を変えよう。



「2人とも、部活はどう?。ランドールは、雷鳴流で、ハインリヒは、魔導部だよね」


「はい、雷鳴流、所詮部活と馬鹿にしていたのですが、教えて下さる先生がとても強くて。これでも、かなり強いと自信あったのですが」


「強い先生? 誰?」


「はい、アランチェス先生です。今年は、1年生の担任なので、部活にも全部出れるとの事で、運が良かったです」



 ランドールが言うなら、本当に強いんだろう。卒業したら幻夢騎士団勧誘しようかな。



「ハインリヒは?」


「魔導部、馬鹿にならなかったです。魔術部のレベルは大したことなかったのですが、魔導部は凄かったです。魔法の国の方々と通信できる魔道具を作って、情報交換しているので、最先端の魔導技術を学べます。さすがに魔導騎士は機密情報らしいですけど」


「へー、凄いね。通信技術とかも便利だね」


「はい、ただ、魔道具自体がまだ巨大なので、小型化が進むと使い勝手が、良いのですが」


「ふーん」



 魔法の国々は、魔法が効かない魔神の国々に攻めこまれたことがあるらしいが、魔導騎士の開発によって押し返したらしい。恐るべし魔導技術っていったところか。






 ランドール、ハインリヒと話していると、6時間ほどで、列車は大公領の駅に到着した。大公領首都シャーリンだ。かなり大きな街だ。中心に、城塞もあるのだが、そこには、お祖父様が任命した防衛司令官と、行政官がいるだけで、大公屋敷は、街を見下ろす小高い丘の上にある。



 駅に馬車が迎えに来ていて、それに乗り込むと、屋敷に向けて出発した。30分程で屋敷に到着すると、レオポルドが出迎えてくれた。



「若、長旅お疲れ様です。ランドール、ハインリヒもご苦労」


「レオポルドも出迎えご苦労。で、屋敷には、今、誰がいる?」


「はい、インディリア様と、リーンデリア様はもちろんおられます。ミュラーズ様は、まだ帝都でお仕事あるそうで、終わり次第来られるそうです、マルガリータ様も一緒に来られるそうです。ヴィシュタリア様も、まだ来られてません。そして、リグルド様は、おられます。会うのを楽しみにされてます」


「そうか。お祖父様に挨拶したら、行くって伝えといて」


「畏まりました」





「お祖父様入ります」


「おお良く来た、マックス。学校はどうだ?」


「はい、楽しいです。友達も出来ました」


「そうか」


「お祖母様も、お元気ですか?」


「ええ、まだ元気ですよ」




 しばらく、お祖父様、お祖母様と騎士学校の話をする。授業の事、部活の事、友達の事いろいろ話す。そして、



「お祖父様、お祖母様、では、また夕食で。リグルドの所に行ってきます」


「そうか、リグルドによろしくな。マックスが、一番リグルドの心をわかるだろうからな」


「はい、まあ、僕とは違いますけどね」






 僕は、屋敷を出て裏庭にまわり離れへ向かう。すると、レオポルド、エピジュメル、パウロスそして、ランドール、ハインリヒが寄ってくる。



「若、リグルド様のところに行かれるのですね」


「ああ、お土産も持ってきたし」





 僕達は連れだって離れへ向かう。そして、ノックをする。すると、長身の男が出てくる。目には眼帯、左腕は、魔導技術で作られた義手が装着されている。


「ビクター、久しぶり。リグルドいる?」


「はい、おられます。どうぞ、お入り下さい」


 ビクターは、名前がビクター=フォン=ダーレンバッハ。雷鳴流の名家ダーレンバッハ家の人間だ。いろいろあって、今はリグルドのお付きをしている。




「リグルド、元気だったか」


「兄様、お久しぶりです。僕は、元気ですよ。兄様は、元気でしたか?」


 僕は、お祖父様のところで話したように、騎士学校の話をする。目を輝かして、話を聞いている。こう見ると普通の男の子なのだが。



 幼少期、僕とは違って凄まじい力を持った騎士の血を持って生まれたリグルドは、力をもて甘し、執事や、メイドを殺害してしまい、最後自分の母親を殺害して、心を閉ざし閉じこもってしまった。



 それを少しずつ、心のドアを開けさせたのは、同じく心に傷をおった、ビクターで、僕も少しは、役にたったのかもしれない。



 一通り僕の話を聞くと、



「僕も、レイリンの騎士学校行きたいです。えーと、3年後か。行っても良いですよね、お母様?」



 リグルドの背後には、ただの人形が立っている。リグルドが、自分の母親に似せて作らせた人形だ。お母様と呼んでいる。答えているのだろうか?



「そうだな。リグルドも通うと良いよ。それまでには、親離れしないとな」


「わかっていますよ、兄様。もう、親離れしています。ビクターがいるし」


「そうか、じゃ楽しみにしているよ。リグルド入学する時は、僕は4年か」




 楽しみだ。僕はひとりっこだ。弟が出来たみたいで、良い。






 さて、これからどうしよう? 一つ試してみたい事あるけど。ハインリヒいるから、大丈夫か。

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