第7話 騎士の祭り

 騎士学校に入学して、3ヶ月がたった。そして、学期末試験真っ最中です。座学のテスト、体力測定、そして、剣術や、騎士能力のテストがあって順位も出て、来年のクラス分けに影響していく。







 そして、テストも終わり秋休みなのだが、短い休みで、その期間を利用して、街の方々との交流を兼ねて、お祭りがあり、それに部活ごとで参加するそうだ。屋台を出したり街中に設置される特設ステージで、出し物をしたり。錬身流も、屋台を出すそうだ。出す物は焼そば屋。錬身流の長くはないけど、伝統なのだそうだ。



 因みに、剣王流は焼き鳥、雷鳴流は、たこ焼き、気水流は、チョコバナナ、養魔剣神流は、お好み焼きだそうだ。



 ソースの焦げる良い匂いがただよってくる。目の前の鉄板では、練習にせいを出す、任務がなかった3年の先輩達が、僕達のために焼き方を実践してくれている。



「まずは、少し油をひいて、豚肉の薄切りを焼くだろ、そして、塩コショウで、味を整えて、鉄板の端に置く。そしたら、油をひいて、キャベツを適量取って同じく、塩コショウで、味を整えながら焼く。キャベツがしんなりしたら、肉を戻して、ソースを入れて炒める。また、鉄板の端に置いて、今度は、少し油をひいて麺を焼く、少し火が入ったら、水をかけて少し蒸し焼きにする。頃合いを見て、キャベツ、肉を合わせて、ソースを混ぜてさらに炒めれば完成だ。トッピングで、青のりと、マヨネーズと、紅ショウガを置いておいて、適当に使ってもらえるようにしておく。以上だ。さあ、食べてみてくれ」



 うん、美味しい。少し味が濃めだけど、屋台の焼きそばだ。



「まあ、基本俺達や、4年の先輩が焼くけど、ローテーションで、練習しておいてくれ。来年は、主力として、作ってもらうから」



「はい、頑張ります」




 1年3人が、練習で焼く。イシュケルは、豪快過ぎて、というか雑で美味しくなく、レーレンランは、丁寧過ぎて水っぽく、僕は、まあまあだけど、味付けが上品過ぎるとの事だ。要練習だな。






 そして、僕達1年にとって、もうひとつイベントがある。剣術5流派の一年生が集まって、男女別、トーナメント形式で戦うそうだ。使うのは木刀だが、防具ないから怪我もしそうだ。急所攻撃は禁止だし、顔面への攻撃も禁止だが、怪我するの嫌だな。大会専門の魔術師がいるとは言え。その前に、参ったすれば良いようだ。




「まあ、あまり技教えていないし、勝てなくても気にするな。他の流派は、大会用に鍛えているから」



 マスターゴーランが、言い放つ。なるほど、じゃいいか。イシュケルは、トーナメントの話を聞いてから、練習を積み重ねているようだ。僕はいつも通り。レーレンランは、やる気なし。なぜ、部活にいるのか、謎だ。







「レイリン自治都市、騎士祭りを開催致します」



 僕達は、屋台で準備をして、鉄板に火をいれて、焼そばを焼き始める。そして、漂うソースの香り。香りに引き寄せられるように、人が集まってくる。



「お兄ちゃん、こっちに2つくれ!」


「わたしは、3つね」


「僕も1つください」




 上々の売れゆきだ。僕もローテーションで、焼そばを焼く、味どうだったんだろう。売れ行きは落ちていないから大丈夫かな?





「マックス休みに入っていいよ。お店回ってきたら?」


「はい、ありがとうございます。行ってきます」




 僕は、ぶらぶらと街中を歩く、弓道部とか、格闘部とか、言語研究会は、どこでやっているのだろう、聞いておけば良かった。と、前方に射的の屋台が見えた。そして、そこにドラグがいるのが見えた。




「ドラグ、お疲れ様」


「マックス、お疲れ。休憩? だったら射的やってって」


「うん、じゃ一回やりますか? いくら?」




 僕は、料金を払い小さな弓矢を受けとる。そして、賞品を狙って射る。が、なかなか当たらない。最後かすったが、賞品は落ちなかった。



「うーん、残念。もう一回やる?」


「いや、いいよ。他もいろいろ見たいし。そう言えば、ピノとジョイどこにいるか知ってる?」


「ああ、ピノは街の入口の方で、古本市場にいると思うよ。ジョイは、街の中央広場の特設リングで、シナリオありの格闘技イベントやっているよ」


「そうなんだ。ありがとう。じゃ、見てくる」


「僕も休憩になったら焼そば買いに行くんで、よろしくね」


「ああ、わかった。場所わかる?」


「うん、知ってるよ」



 どうやら、ドラグの方がちゃんと僕達がどこで何してるか、把握しているようだ。それが、友達との交流か。気をつけよう。




 ジョイは、中央広場のリングで試合をしていた。派手な技や、面白い動き等で、観客の声援を集めている。忙しそうだ。少し見学した後、離れて入口方面に向かう。



 入口近くの道路脇に古本市場が開かれていた。その中の一件に、ピノがいた。



「ピノ、売れてる?」


「あっ、マックス君。どうも。あまり売れてないよ。何か買うかな?」



 僕は、ピノの目の前の本を見る。難しそうな本が並んでいる。ん? これは。「聖都物語」聖都、遠く西の端にある、法術の国の中心都市。聖都の話だろうか? ちょっと読んでみたい。




「これちょうだい」


「あっありがとうだし。僕も後で焼そば、買いに行くかな」


「うん、待ってるよ。じゃ」





 その後、皆が焼そばを買いに来てくれた。ジョイは特にいっぱい買っていった。格闘部で、食べるのだそうだ。ありがたい。






 そして、3日目、最終日。この日1年生は、店番を免除された。今日午後から、5流派トーナメントがあるからだ。他の皆は、試合に備えて準備しているようだ。だが、僕は、街中をぶらぶらしていた。




 しばらく、ぶらぶらしていると、売り子をしている、ローズ先輩が目に入った。炭の焼き台の前には、ザ・てきやという風貌の人が立って一生懸命焼き鳥を焼いている。



「お疲れ様です。ローズ先輩、売れてます?」


「余裕だね、マックスは。皆練習しているよ。頑張ってな。それに、焼き鳥は、もちろん売れてるぞ。ヒース先生の焼き鳥は、本職以上って有名だからね。マックスも食べてって」



 僕は、焼き鳥を数本買うと、その場を離れ、試合会場に向かった。試合会場は、街の公園に作られていた。激突しても、危なくないように、土が盛られ、表面は乾燥して、砂っぽくなっている。なるほど。





 そして、いよいよトーナメントが始まる。出場者は、男子21名。女子12名。抽選が行われて、僕は2回線から出場となった。イシュケルと、レーレンランは、共に1回戦敗退となり、僕の順番が回ってきた。




「では、2回戦第6試合、錬身流マックス対、剣王流モーガンの試合を始めます。お互いに礼!」



「試合始め!」


 試合が始まった。



 モーガンが、木刀を中断に構え、にじりよる。僕は、木刀を下に置き、全力で土下座した。全ての力を下に向け、できるだけ、地面に当たる僕の表面積が大きくなるように。



「錬身流奥義玄武!」



 砂埃が巻き上がり、周囲を閉ざす。そして、相手がいる方に全力で走りタックル。よし。そして、砂埃が晴れる。と、モーガンは、後頭部を打って気絶していた。



「勝者錬身流マックス!」



 拍手と歓声が沸き起こる。いや、まぐれ勝ちしてしまった。







「マスターゴーラン。玄武ってああいう技だったんですか?」


「ん? ビルマイス、知らなかった?」


「はい、全く」


「使っていいよ」


「いえ、いいです」






 続いての準々決勝は、同じ手を使ったものの、2度も通用するわけはなく、砂埃の中、後ろに回り込んできたところを、木刀で、倒しにいったが、初太刀を受け止められ、徐々に不利になり、降参した。







「うーん。マックスは、気配を追うことが出来るようだな」


「そうですね。砂埃の中、的確に追ってましたもんね」


「気配読めるの、天才ビルマイス位と思っていたが。マックスもか。面白い」

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