第5話 部活見学
授業が始まって2週間。僕達が少しずつ騎士学校に慣れてきた時、いよいよ部活見学が始まった。
「皆は、部活どうするの?」
「僕は、父が、剣王流だし、習ってきたのも、剣王流だから、剣術やるなら剣王流かなぁ。だけど、弓道部とか、馬術部とかも興味あるから、まわってみるよ。マックスは?」
「僕は、ちゃんと剣術やってみたいから、養魔剣神流除いて剣術系の部活まわってみようかなと、思っているんだ。ピノは?」
「僕は、文系の部活見て見ようかなと。剣術は、気水流だったけど、全く上達しなかったしね」
「文系って、どんな部活?」
「そうだね。語学研究会とか、歴史研究会とか、政治研究会とかかな。ジョイ君は、どうかな?」
「俺、俺は槍使いだし、やるなら槍術の光陽流だな。肉弾戦で戦ってみたいから、格闘部とか、柔剣部とか、拳法部も見るぜ」
「そうか、じゃあお互い満足できる部活を見つけられると良いね」
「だね」
「おう」
「です」
さて、どういう順番で見学していこう。僕は楽しみは最後に残していくタイプだし。錬身流は最後かな。えっと、月曜日やっている流派は、剣王流と、気水流。火曜日は雷鳴流と、錬身流。水曜日は、剣王流。木曜日は、錬身流と、気水流。金曜日は、剣王流と、雷鳴流。土日もやっている部活あるけれど、見学は出来ない。
「ねえ、ドラグは、初日見学どうするの?」
「ああ、うん、初日は、剣王流に顔出さないといけないかなっと思っていて、気が重いけど」
「そっか、だったら僕も剣王流見学行こうかな。人数多かったら調整されちゃうけど」
「ほんと! それなら、僕も気が少し楽になるよ」
というわけで、初日は剣王流行くとして、だったら火曜日は雷鳴流見学、うーん、毎日見学するの大変だから、水曜日休んで、木曜日気水流見学、金曜日も休みか、2回見学行って期待させるのも悪いし。そして、来週月曜日休んで、火曜日は錬身流見学。これで良いかな?。効率悪いけど。しょうがない。
僕とドラグは、午後の体力作りが終わると、シャワーを浴びて着替えると、剣王流の道場に向かう。扉を開けて中に入る。ロビーのようになっていて、両脇に男女の更衣室等があり、正面にさらに扉がある。開けて中に入ると。同じく見学の新入生だろう、制服の生徒が壁際に集まっているのが見える。そちらに向かう。すると、回りが少しざわざわとする。ドラグの噂だろう。
少し待っていると、新入生は20人近くに増えたそして、道着に着替えた先輩達が入ってくる。そして、ローズ先輩が、こちらに向かってくる。僕達の前に立つと、
「わたしが、剣王流主将のローズだ。初日から多数の見学感謝する。存分に見ていって欲しい。準備運動は練習前に終わらせているから、すぐに普段通りの練習する、座って静かに見学してくれ」
というと、僕とドラグにチラッと視線を走らせると、先輩達の方に戻って行った。
ローズ先輩の元、練習が始まる。全員が木刀をもって前後に飛びはねながら、素振りを行っていく。激しい。正面斬り、右袈裟斬り、左袈裟斬り、右袈裟斬りから逆袈裟斬り、右横胴斬り、左横胴斬り、そして居合い斬り。それだけで、全員汗だくだ。
休憩を挟みつつ、技の確認しつつ型稽古。二人一組で、打ち返し、打ち合いの稽古。最後掛かり稽古して終了だ。皆汗だくだ、お疲れ様でした。
ローズ先輩は、稽古終わりの礼をすると、新入生の方に歩いてくる。
「これで、練習終わりです。だいたい同じような流れで練習している。興味もったら、また見学に来たり、入部届け出してください。歓迎します。では、お疲れ様」
実にローズ先輩っぽいさっぱりした挨拶だ。そしてこちらに寄ってくる。
「マックス。初日に見学とは、ありがとね」
「はい、ローズ先輩お疲れ様でした。練習激しいですね」
「ん? 普通だよ。ランベルクさんの練習もっと激しかったし」
「そうなんですか。今まで、まともに練習して来なかったから、自信ないですよ」
「初心者用に、基礎からも練習していくから大丈夫だよ。って、好きな流派見つけてね。えっと、ところで」
ローズ先輩は、ドラグの方に目を向ける。
「マックスの友達のドラグです。よろしくお願いいたします」
「ああ、よろしく。ドラグって、シルバーナイトドラグか。息子さん?」
「はい、一応……」
「ふーん、そっか、興味あったら、入ってね。皆が君のこと見てるから、何かと思った。なるほどね」
と言って去っていった。僕達も、道場を後にする。
「どうだった?」
「激しい稽古だったね。ドラグの感想は?」
「稽古自体は、お父さんの練習と同じみたいな感じで、普段もやっていて、今のレベルだから、他の部活にしようかな」
「そうなんだ。お互い合う部活あると良いね」
その後も順番に見学していった。ドラグとは別れ1人で見学だ。
雷鳴流は、少しやっていたので、ある程度練習もわかる。足捌きを重視する、雷鳴流。木刀を持たず摺り足と足捌きの練習。次は、木刀を持って、片手ずつの素振り、そして両手での素振り。先輩達の木刀も、それぞれ違って面白い。二刀流だったり、長かったり、太かったり。
続いて、技稽古。型稽古ではなく、技を確認しつつ、体捌きをきっちり確認しつつ、2人一組で打ち合う。休憩を挟みつつ、長い技稽古が終わり、掛かり稽古して終了だ。
水曜日見学なし、そして木曜日気水流の見学。こちらは、最初から木刀を持って振りつつ、円の動き、体捌きを行いながら、道場の端から端まで行き、往復して帰ってくる。何往復かすると、今度は、型稽古だ。技を確認しつつ、延々と行う。休憩も少ない。そして、最後懸かり稽古して終わった。
週を挟んで、最後に錬身流の見学に行く。あれっ、マスターゴーランいないな。そして、先輩達の人数少ないし、見学者少ない。
先輩の1人が前に立つ。
「ええと、今日は見学者2人か。そして、イシュケル君、3回目の見学ありがとう。そっちの君は、はじめまして、名前は?」
「マクシミリアン=フォン=ローデンブルクです。マックスと呼ばれています」
「そうか、マックス君、よろしく。僕は、4年で主将のビルマイスだ。よろしく」
「ビルマイス先輩、よろしくお願いいたします」
そして、見学が始まる。まずは、道場一周の膝行。これは、座った状態からも戦えるようにだそうだ。続いて、受け身の練習。投げ技もある錬身流、独特だろう。続いて、足捌きの練習だが、これも独特で、かなり腰を落としてゆっくり行う。これは、きつい。いつの間にか、先輩達が汗だくになってくる。
そして、このタイミングで、マスターゴーランが入ってくる。
「マスターゴーランに礼!」
練習は続く、今度は素振りだが、ゆっくりと体全体の動きを確認しつつ、木刀を振る。マスターゴーランが、見て動きの注意しつつ、剣王流のように、いろいろな素振りを行う。
休憩を挟んで、マスターゴーランが、目の前で実践した技を2人一組で打ち合っていく。途中、投げ技等も入りいくつか技を行うと。休憩になり、先輩達は、防具をつけ始めた。これも、マスターゴーランが開発したそうだ。
そして、1対1で、2対1で、3対1でと戦っていく。マスターゴーランは、試合を見つつ、アドバイスをする。これは面白い。他の流派も掛かり稽古するが、当たり前だが、お互い怪我しないように木刀同士で打ち合う練習だ。よし、決めた。
そして、木曜日再度錬身流の見学に行く。今度は、女の子が1人増え見学者は、3人になった。
「今日は、1人増えたか! 今年は、入部者ありそうだな。うん! 気分が良い。そうだ、見学者に、錬身流の奥義を見せてあげよう。まあ、わからないだろうけど。」
と言うと、道場の中央に立ち、木刀を床に横に置く。そして、
「錬身流奥義玄武!」
と言いつつ、全力で土下座した。静まりかえる道場。唖然とする、他の新入生。そして、マスターゴーランの笑い声が響き渡る。
「ハハハ、ハハハハハハ!」
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