第3話 剣術5流派!

 そういうわけで、剣術5流派の勧誘が始まった。



 まずは、雷鳴流。名前の由来はそのまま雷鳴の如し。ということらしい。素早い動きと鋭い攻撃を特徴とする。変わった戦い方をするのも特徴で、二刀もったり、逆手に構えたり。お祖父様も二刀流だ。



 帝国は、基本雷鳴流が多い。それは帝国の剣術指南役が雷鳴流だったことによるもので、そういうわけで、今最も使っている人数の多い流派だ。剣聖も輩出し、帝国の剣術指南役だった、ダーレンバッハ家が有名だったが、いろいろあって、今はホルス大公家がなんて言われている。



 そして、そして驚いたことに剣聖ランベルクの使った「陽炎乱舞」は、本来雷鳴流の技だそうだ。ランベルク自身は剣王流だが。あまり得意ではないけど、出来るから好んで使っていたようだ。驚かすために。



 昔学んだ流派だが知らないこと多いな。舞台の上では、やや低めに構えた雷鳴流の先輩同士が、激しく打ち合う。演武というよりは、試合のデモンストレーションだ。激しく、そして凄まじい迫力だ。鳥肌が立つ。







 続いて気水流。名前の由来は開祖の言葉、剣の真髄は空気や、水の流れの如しからだそうだ。相手の攻撃を受け、円の動きなど、流れるような動きで技を返す。防御に優れた流派だが、それだけではない。攻撃技も豊富で特に突き技が優れているそうだ。



 この流派からも、歴代剣聖が誕生した事はあり、最も有名なのは、ヨーゼフ=フォン=シュヴァリエだ。気水流の開祖にして、今も残るシュヴァリエ家の初代で、初代剣聖でもある。ようするに、ミレニアムから、金色の真剣を貰った。伝説の人だ。





 舞台の上で、2人ずつ3組の先輩達が、木刀で、型を見せている。片方が斬りかかると、斬りつけられた方は、木刀で受けそれを流れるような動きで返し。喉元に木刀を突きつける。そして、離れる。静かな剣だ。







 続いて、剣王流。これはもちろん剣王と呼ばれたアルフォルスにちなんだ名だ。一撃必殺の攻撃を特徴としている。ただ、アルフォルスが戦う場合すべて一撃で終わってしまうからで、後継者達は一撃必殺を受けられた時の次の技、一撃必殺を放てない時に、相手の隙を作る技を作っていき、今の剣王流になったそうだ。



 二大古流派の気水流と雷鳴流よりは新しい流派だが、アルフォルスの血をひく多くの剣聖を誕生させ、格的に気水流、雷鳴流に並んだそうだ。だから主要3流派と呼ばれているのだ。



 そして、舞台の上ではローズさんじゃないか、ローズ先輩が無双している。文字通り次々と剣王流の技で一撃で倒していく。さすが三剣、ローズ=フォン=アルフォルス。







 続いて、養魔剣神流。名前の由来は魔力を養い剣にこめれば神にも届く。という意味だそうだ。随分傲慢な感じもするが、比較的新しい流派の気合いの表れなのかもしれない。



 技は主要3流派の良いとこ取り、悪く言えば特徴がない。いや最大の特徴は魔力が多い人間が、身体能力強化したり、剣に魔力をこめて戦うことに効率化した流派と言うべきか。魔力が多い人間ほど強く、魔力がない人間は使えない流派。という訳で、僕とは関係ない流派だ。



 成立してから100年程の流派も、始めて剣聖を誕生させ、勢いが出てきた。それが剣聖ランベルクの後の剣聖クレストだ。



 舞台上では、一人の先輩が木刀で石や、鉄板を切り裂くデモンストレーションが行われている。切り裂く毎に歓声が上がり、拍手が沸き起こる。確かに凄いな。







 最後は錬身流だ。



「俺が、錬身流の開祖にして、部活の指導している。三剣でもある、マスターゴーランだ。新入生の皆、よろしく!」



 開祖が登場しちゃったよ。舞台上には、金色の長髪のがっちりした男が立っている。腰には赤銅色の神剣が下げられている。



「俺は魔力がとても少ない、だから騎士として産まれたが、最低ランクの騎士と呼ばれた。このままでは、俺の就職先は、地方の警ら騎士がせいぜいだ。そこで、俺は考えた。魔力が低くても強く慣れることを示そうと!」



「俺は、気水流、雷鳴流、剣王流を学んで、さらに山ごもりを10年して、ついに完成させたのだ。魔力が弱いものでも騎士として強くあれる剣を。それが錬身流だ! 名はそのまま、己の身体を鍛練するという意味だ。生まれたばかりの流派だが、興味があったら入ってくれ、俺自ら指導するぞ」



 僕も、魔力が少ないと言うか、無い。今は、封印の力で僅かな魔力を持っているけど。錬身流を学べばさらに強く慣れるかもしれない。絶対見学はしよう。





 そして、舞台上では、剣王流の時と同じように、一人対複数の戦いが始まった。さすがにマスターゴーランではなく、先輩達がやるようだ。しかし、剣王流で、ローズさんが無双しているから、目立たないと思うけど。



 と思ったら、意外と凄い。相手を斬るだけでなく、投げたり、足払いしたり、倒される方が、派手に吹っ飛んでいく。面白いなあれ。僕もやってみたいな。




「以上で、新入生のガイダンスを終わります。休みを挟んで月曜日から、いよいよ授業開始なので、準備は怠らないように。では、解散!」







 まだ知り合いも少ない新入生は、ばらばらに散っていく。僕は、ランドールと、ハインリヒが寄って来るのを待った。



「終わりましたね。これから、どうされますか?」


「うん、舞台上でローズ先輩いたから、会って挨拶しておこうと思って」


「ローズ先輩ですか?」


「ああ、ローズ=フォン=アルフォルス先輩だよ。トゥルク神聖国の」


「ですが、大丈夫でしょうか? マックス様は敵みたいなものと思われているのでは?」


「だったら、その時は、その時でしょ」


「わかりました。お供します」





 僕達は、舞台裏に向かうために、歩き始めた。




「じゃ行こうか。あっそう言えば、ハインリヒは、魔導部入るでしょ」


「はい、もう入る気満々ですけど、良くわかりましたね」


「そりゃね。そして、ランドールを魔導の力で、虫に改造すると」


「なるほど、地面すれすれを高速で移動し、壁などの垂直な面も這いずり回れるし、さらに飛べる。うん、最高ですね」


「止めろ、それだけはやめてくれ!」





 などと、下らない話をしていると、舞台裏に出た。さて、いるかな。というか、気配で探っていたので、いるのは確実だけど。



 あっいた。おそらく剣王流の先輩方と一緒にいるようだ。一応挨拶だけ。



「お久しぶりです。ローズ先輩。お元気ですか?」


 声をかけられた。ローズ先輩は、僕達の方を振り返りつつ、


「やっぱり、そうだったか、舞台から見えて、あれっと思っていたけど、マックス様……。マックスだったか、あの時は、ありがとう」


「いえ、お役にたてず、申し訳ありませんでした」


「いやいや、ありがたいよ。そして、その話は終わり。で、今日はどうしたの? ははー、リリアに会いたいとか? それだったら、いないよ。わたしと違って勉強熱心な妹は、予備校に通うそうで、他の街にいるよ」


「そうでしたか。残念。じゃなくて、ローズ先輩に挨拶にきただけです。今後ともよろしくお願いいたします」


「そうか、よろしく。そう言えば、入る部活決めた? 剣王流は楽しいよ~。入ったら?」


「いえいえ、僕は最低ランクの騎士です。邪魔ですよ」


「剣術に騎士ランクは関係ないよ。まあ、養魔剣神流だけは、別だけどね。まあ、入る入らないは、別にして、見学には、来てね。じゃ」


「はい、失礼します」





 僕達は、舞台裏を離れ寮に戻ることにした。そして、明日何しよう。せっかくの休みだし。そうか、リリアちゃん、いないのか~。

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