第2話 入学式
「……をもちまして、誓いの言葉とさせて頂きます。新入生代表! ランドール」
「新入生起立! 礼! 着席!」
危ない、さすがランドールの声は馬鹿でかい。すっきりと目を覚ませてくれた。でなかったら、1人だけ挨拶せずに目立つところだった。
まあ、寝起きでぼーっとしていたので、礼をしたまま着席して、前の人の椅子に頭を強打したが。椅子砕けなくて良かった。さすが騎士学校の椅子だ。何でできているのだろう。違う。そうじゃない。ランドールに今度は礼の後に直れを入れて貰おう。
しかし、皆凄いな。なぜ寝なかったのだろう。校長の式辞辺りから怪しくなり、来賓の祝辞は記憶がさだかでない。確か魔術師だけでなく、騎士も一般人もいるはずだが、皆、睡眠魔法の使い手なのだろうか。
「続きまして、校歌斉唱。演奏はマーチングバンド部の皆さんです。では、よろしくお願いいたします」
軽快な、行進曲のような前奏が始まる。
「紺碧の青空に、希望の歌が響き渡り……志し高くレイリン騎士学校」
校歌が終わると、いよいよ入学式も終わりだ。
「では、以上をもちまして、レイリン騎士学校入学式を終わります。一同礼!」
「では、在校生、来賓の皆様は起立の上、ご退場ください。本日は御来場ありがとうございました。お疲れ様でした」
来賓がおもいおもいに帰っていく。在校生も立ち上がり出ていくが、在校生の一部は舞台裏に行くようだ。気配が移動していく。
「では、これより新入生ガイダンスに移ります。まずは、担任の先生の紹介です」
新入生ガイダンスが始まって担任の先生の紹介が始まった。
1学年全体の主任担任が1名、そして、それぞれのクラス毎に、1人ずつ担任がつくようだ。1学年は、120名。騎士が80名で、魔術師が40名。寮毎に騎士が1・2組、魔術師が3組となっている。ようするに、A-1組から、B-3組まで、6組あり、僕はB-2組だ。
B-2組の担任の先生は、アランチェス先生。この出会いから、先生とは長い付き合いになるのだが、それは別の話だ。使えた主君のせいで、騎士として不名誉な行いをした、雷鳴流の天才的使い手。であることは、この時まったく知らない。何か、強そうだけど、頼りなさそうだなと言うのが、正直な感想であった。
続いて、騎士学校の施設の説明だ。入寮してからだいぶ期間があって、いろいろ探検したので知っているけど、施設の使用方法なども、説明してくれたので、良かった。それにしても、学生の人数に対して贅沢な敷地の大きさと豪華な設備だ。学校の運営には、寄付が大きな役割を果たしている。お祖父様もそれに一役かっているのだが。
そう言えば、お祖父様は僕の在学中は学校に顔を出さないそうだ。いつもは、入学式で来賓の挨拶を必ずしているのだが。ちなみに、お祖父様も、お母様も、叔父様も卒業生だ。帝都にも騎士学校あるが、わざわざ通わせたのだ。理由は、自分が卒業したのと、名門で、一流の先生がそろっているからだそうだ。
僕は、むりせず帝都の騎士学校に通わさせる予定だったようだ。従兄弟達はどちらに通うのだろうか?。特に、特殊な叔父の三男、リグルドは?。どうするのだろう。今度のクリスマス休暇で、聞いてみるかな。
貴族は、家を残す為に側室を持つことは普通である。だが、お祖父様がお祖母様しか、いないからか、お父様も叔父様も妻は一人だ。まあ、お父様はお母様以外の女性に手出したら、お母様にどんな目にあわされるか、わからないからかもしれないけど。
で、リグルドは叔父様の子供だが、自分の屋敷のメイドに手を出して産ませた子だ。大公屋敷の離れで、幽閉同然の生活をしている。幽閉理由は、メイドの子だからではなく。僕同様ぶっ飛んだ性格をしているからであるが。
ぼーっと考えているうちに、いつの間にか、部活の紹介になっていた。今は、両脇で筋肉自慢の男性の先輩が水着を着てポージングをしている、真ん中で女性の先輩が話している。そうこの部活はもちろん。
「健全な精神は、健全な肉体から、是非楽しい学生生活しましょう。以上水泳部でした」
新入生の拍手が沸き起こる。水泳は、騎士の手習いとして推奨されているので、部活として存在しているし、入る人も結構いるようだ。馬術も推奨されているので、存在するが、それ以外のスポーツ系の部活は、ほとんどない。強いてあげれば、後は、ダンス部、格闘部くらいだろうか。
一般人が、化け物じみた身体能力を持つ騎士と同じルールで戦うのは不可能であり、騎士の学校も少なく場所が離れていて、対戦などが不可能だかららしい。
逆に武道系の部活は多い、剣術5流派、槍術2流派があり、他に柔剣部に、拳法部。
部活は、20個あり、先ほど上げた水泳部、ダンス部、馬術部、格闘部の他に、校歌を演奏したマーチングバンド部、武道系の9部活、そして、政治研究会、語学研究会、歴史研究会、戦術研究会、魔術研究会に魔導研究会の文科系6部活だ。
部活ガイダンスは進み、各部活が工夫を凝らした、勧誘を行っていく。いろいろな言語で鮮やかなスピーチをした語学研究会、マーチングバンド部は、演奏に合わせて鮮やかなバトントワリングを見せ、魔術研究会は、手品のように工夫されたオリジナル魔法で拍手喝采を受けた。
魔導研究会だけは、オタクのような先輩達が、自慢の魔導技術を見せて、ドン引きされていた。誰が、魔導技術によって作られた這えずりまわる、巨大な虫を見たいと思うのだろうか。と、思ったらふと目に入ったハインリヒの顔が輝いているのが見えた。ここにいたか。ランドールは、そう遠くない将来虫に改造されるのだろうか。
そして、武道系の部活ガイダンスが始まる。柔剣部は、型を見せる。木刀を持った相手の打ち込みをかわして投げたり、木刀で打ち合っておいて、木刀を使って相手の腕を絡めて倒したり、鮮やかだ。
拳法部は、劇仕立てのようだ。木刀や、短刀を持った不良?が女性を取り囲み脅す、すると、颯爽と拳法家が出てきて、次々と相手を倒していく。
続いては槍術の2流派だ。槍術元祖光陰流と、槍術本家光陽流だ。何かどこかのお菓子屋さんみたいな名前だが、これの由来は。
昔槍術家の家に兄弟が産まれた。兄弟は、お互い切磋琢磨したが、弟の方が才能があり、兄は負け続けた。父親は弟に家を継がせた。弟は、槍術の腕で名を上げ、槍術光陽流を立ち上げた。
家を出た兄は弟に勝つことだけを考え修行に明け暮れた。弟の立ち上げた槍術光陽流を倒すために考え続けた技の数々は受けてからのカウンター技が主であったが、兄もまた名を上げ周囲に人が集まった。
槍術仙人と呼ばれた彼は、弟子達に担がれて、槍術元祖光陰流を立ち上げた。弟は、対抗して本家をつけ、槍術本家光陽流を名乗った。規模はやや光陰流の方が大きいそうだ。
大公家の槍術指南役パウロスは、光陽流だ。光陽流は派手な服装な人が多く、光陰流は地味な服装を好む印象がある。
まずは、光陽流からだが、槍を持った一人の周りに木刀を持った男数人が取り囲み次々と倒していく。派手だ。
続いて、光陰流だが、光陽流の槍術の技を光陰流の槍術で返し、技をたたき込む。
という訳で、派手で攻撃的な技の光陽流、返し技の光陰流のお互いの演武が終わり続いて剣術5流派の番になった。規模の大きさの順番なのか、歴史の古さの順番なのか、それとも他の理由があるのか、順番は、雷鳴流、気水流、剣王流、養魔剣神流、そして、錬身流の順番だ。
さあ、じっくり見ていこう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます