第5話 ミレニアムと特別な力

 ミレニアム、とても不思議な国だった約2000年前に突如、アスフォリアの大陸、人の住まない北の地に生まれた広大な国。




 いや、国かどうなのかもわからない。突如現れた光の壁。そして、後にゲートと呼ばれる四つの地方にできた、光の門。そして、門より現れたミレニアムの王と名乗る男は、アスフォリア大陸の地方毎に異なる力を与えた。適正のある少数の人間のみという感じであったが。



 その力は、人間の身体能力を格段に上げ騎士と呼ばれる力。あるいは、魔神を召喚し、自分の身体に宿らせ戦う魔戦士と呼ばれる力。神の力を具現化し、その力で戦う法術士と呼ばれる力。そして、魔法と呼ばれる特殊な力を操る魔術師と呼ばれる力。



 それぞれの力は、魔戦士には、魔法が効かず、騎士は魔法に弱い、魔戦士は法術に対して弱く、法術は騎士に効かない。と相克の関係を持っていた。




 そして、ミレニアムはその力を実験として使っているようでもあった。アスフォリア大陸の国々は、広大な実験場なのかもしれない。





 そして、1000年ほど前に、ミレニアムは騎士の力を持ち、法術や、魔法を使え、その身に魔神の力を宿す超人を作り上げた。その数13体。騎士の力を魔神の力でさらに上げ魔法は効かず、法術を使う。まさしく超人であった。




 それまでは、ミレニアムの高度な力を欲し戦争を挑む国もあった。その度毎に、相克関係にある国の力を借り叩いていた。超人の登場で、その必要性もなくなった。




 たった13体の超人が、攻めこんできた軍を滅ぼし、ミレニアムに逆らおうとする国は無くなった。ゲートの前には2人ずつ超人の門番が立ち。これにより、門に近づくことも出来なくなった。





 ミレニアムと国々の交流も希薄になり、それぞれの国々は、独自の文化を築いていった。そして、得意な力を持つ者も、代を重ねる事に力が薄まりつつ、たまに覚醒するかの如く強い力を持つ者が現れるというような事を繰り返していた。衰退なのか進化なのか。



 魔神の国のみ、魔神を召喚するという性質上大きな変化はなかったが。魔神化から人に戻れず魔物となる人がいて、国の安定は欠いていた。



 魔術師の国では、魔法を使って人体改造を行いついに魔導騎士を作り上げた。法術士の国では、身体能力の高い法術士同士で子を為すなどの方法で、身体能力の高い法術士。聖騎士を作り上げた。騎士の国では、魔術師を招き、魔術によって騎士の身体能力はさらに強化できることを解明し、魔術師と組んで戦う方法を作り上げた。





 ミレニアムにとって平和な日々が続いたが、約300年程前に突然終焉を迎える。原因は不明だが、突如光の壁、光の門は光を失い、二度と入ることはできなくなった。噂では、超人が反乱を起こしたとも、未知のウイルスで全滅したとも言われたが、真相はわからない。



 そして、外に取り残された門番の超人達もそれぞれの道を歩いた。ミレニアムから力を供給されなくなった超人達は、今までは何の変化もなかったのだが、人間と同じように成長や、老化を始めた。



 ある者は、ミレニアム内部に入る方法を探すためにどこかに消え、またある者は愚直に門を守り一生を終え、またある者は、人間の生活に溶け込み子をなし、またある者は人間と敵対し殺された。





 騎士の国の門番の1人アルフォルスは、人間の生活に溶け込んでいった1人であった。素晴らしい身体能力と強大な魔力を持つ彼は、騎士の国のとある国を、侵略から守り剣術指南役となって、国の姫と結婚し、子を為した。国の名はトゥルク神聖国。




 アルフォルスの子孫達は、男性が生まれると極めて強い騎士となり、女性が生まれると預言者のような特別な力を持った巫女となった。トゥルク神聖国は、代々の剣聖などに守られ大きく発展し、約200年の隆盛を誇った。しかし、アルフォルスの子孫同士の争い等で国が乱れ、新興国家のシルキリア帝国に飲み込まれていった。



 アルフォルスの子孫達は極めて強い力を持った騎士となり、そのうちの何名かは騎士最強の証である剣聖となった。



 剣聖とは、騎士最強の証で。初代の最強騎士にミレニアムの王が金色の神剣を与えたことから始まる。神剣は、当時の技術では、いや今でもわからない技術で作られていて、絶対に折れず、そして刃こぼれすらしない。神剣は13本与えられ、騎士達は剣聖を最高位に続いて3人の三剣、そして9人の天剣が誕生した。





 また、当時の技術者が神剣を真似て、108本の聖剣を作り、それらを持つものを天剣に対して地剣と呼んだ。さらに地剣に準ずる強さを持つ者達を剣豪と呼んだ。ここに、騎士のクラスが誕生したのだ。





 そして、シルキリア帝国に極めて変わった人間が誕生する。マクシミリアン=フォン=ローデンブルクである。



 強い騎士程魔力需要量、すなわち魔法が効きやすいと言われていて、騎士としての力を測る基準となっていた。



 そして、マクシミリアン=フォン=ローデンブルクの魔力需要量は0。これは、最低ランクの騎士以下であり、大きな失望が支配した。



 しかし、6歳の時教えるだけでもと剣術を教え始めたらみるみる強くなり、1年後当時の剣術指南役を木刀で打ち殺した事により事態は急変した。ホルス大公は、喜び、そして不思議に思い調べさせた。そして、これは先祖帰りではないかと結論づけた。



 詳細は不明だがもう一人の門番であった。デルフォルスと関係があるのかもしれないと。愚直に門を守り続けただけの門番と。魔力が無く、魔法が効かない純血の騎士と呼ばれた男と。





 しかし、ここにきて更なる問題に直面する。マクシミリアン=フォン=ローデンブルクは、成長しても残虐で感情の起伏が少ないという。



 困ったホルス大公は、さらに研究させ、純血の騎士の力を封じる封印を完成させる。すると、微弱な魔力需要量を示し、極めて弱い騎士の力を示すと同時に、豊かな感情を示すようになった。




 しかし、封印を外すと元に戻る。ここに封印時をマックス=フォン=ローデンブルクと呼び、封印解除時をマキシ=フォルスト=ホルスと呼び。別人として扱うようになっていく。そして、本人含めて、家族全員と仲間、家臣達が、特にマックス本人が2つの状態の融合を目指して活動していく事となる。

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