消費社会におけるAI・ロボットは小説的な悲劇を生むか? 〜考察が作り出すディストピア〜
ゆーの
消費社会のディストピア
数ある小説・評論の中からこの作品をお手に取ってくださり、ありがとうございます。
本論に入る前に、いくつか注意書きをしておきたく思います。
お付き合いくださいませ。
まず第一に、筆者は「理系か文系か?」の問いに迷わず「化学系じゃコラ」と答えるほどの理系でございます。
当然、経済系の知識など持ち合わせておらず、また、AIどころかプログラミングさえも怪しいレベルでございます。
所詮は戯言よ、と鼻で笑いつつ読み進めていただければ結構です。
続いて、この駄文は他の作品を
当作品が目指すのは、AI・ロボットの死をテーマに現代を見つめ直し、新たな可能性を考察する、そのただ一点のみにございます。
私が思いついた空想上の世界を小説として書き起こすには時間と能力が足りず、そしてその世界はあまりにも無情で残酷であるのです。
もしこの世界を書きたいと考えていらっしゃる物書き様がいらっしゃいましたら、何らかの形でご一報いただければご協力させていただきたく思います。
また、情報等につきましては厳密さを求めず、少々ネット等で漁った知識等をベースにディスカッションを行うことといたします。
このご時世、ストレスの溜まってしまった筆者の吐き出し口としての駄文でございます。多少の手抜きは多めに見ていただきたく存じます。
もしも見かねて情報提供くださる心優しい方がございましたら、お手数ですがコメント等にてお知らせいただけたらと思います。
さて、長きにわたる注意書きは終わりました。
本題に入りましょう。
○消滅したレッドスクリーン
皆様はレッドスクリーン(RSoD)というものをご存知でしょうか。
ブルースクリーン(BSoD)ならご存知の方もいらっしゃるかもしれませんね。
まぁ、最近のパソコンではほとんど見かけなくなりましたが。
少々解説を入れますと、PCの基幹となるOSに被害を及ぼすような重大な問題が発生した際に、「とりあえずPCストップしたわ」というノリで表示されるのがブルースクリーンです。
より簡潔に言うならば、PCがバグったときに表示されるあの怖い青色の画面がブルースクリーンです。
筆者はかつてXPがサポート対象外の危機を迎えていたころに、さらに昔のバージョンであるMeを使っていたもので、ブルースクリーンは毎度お馴染みの光景でした。
メールを開いてシャットダウンでブルースクリーン、Youtube見てたらフリーズからのブルースクリーン、⋯⋯などなど。
あまりにパソコンが不機嫌だったため、ctrl + alt + del による強制終了と、本当にどうしようもなくなったときの電源ボタン長押しはこの頃に嫌というほど叩き込まれたのを覚えております。
⋯⋯さて、本題にもどりましょうか。
そしてレッドスクリーンというのは、ざっくり言うとブルースクリーンの進化版でございます。
噂によると、よっぽど具合が悪い時に表示する予定だった⋯⋯とかなんとか。
はい、ここまでの説明からお分かりでしょう。
このレッドスクリーン、結局実装されることがなかった機能のひとつなのです。
Windows のとあるバージョンに搭載される予定だったこの機能。
どうして実装されなかったか?
ちょいと調べてみたところによりますと、どうやら怖すぎたようです。
そう、警告が怖すぎると却下されるのです。
実際、ブルースクリーンにつきましても最新のWin 10(海外版)においては画面に顔文字を表示させる等の工夫がなされています。
そして、ブルースクリーン自体も単なる意味不明な文字の羅列から、具体的な対処法を記した記述、そしてさらには解決法を記したWebサイトへのQRコードを掲載したりと、より怖がらずに対応できるようなものへと改良されつつあります。
ここまでの内容で一旦、AIやロボットに置き換えて考えてみましょう。
AIやロボットは故障すると、
「エラーが発生しました。エラーが発生しました。エラーが発生しました。エラーが発生しました。エラーが発生しました。エラーが発生しました。エラーが発生しました。エラーが発生しました。エラーが発生しました。エラーが発生しました。エラーが発生しました。エラーが発生しました。エラーが発生しました。エラーが発生しました。エラーが発生しました。エラーが発生しました。エラーが発生しました。⋯⋯⋯」
などという意味不明なメッセージを連呼するでしょうか。
恐らく答えは、ノーです。
これが工業用のロボットならまだしも、各家庭に置かれるようなロボットだった場合、まず間違いなく悲鳴ものでしょう。
恐らく各社は、可能な限り最後の最後までロボットに意識を持たせ、所有者に可能な限り早く修理工場に連れて行くようせがませるようになるのではないでしょうか。
「不気味の谷」現象を引き起こすような状態──例えば音声出力の不具合とか、モーションの不具合とか──、に陥った場合にのみ、ゆっくりと機能を制限していき、機械的なメッセージを出力するのはレッドスクリーンクラスの「究極の最後の手段」として取って置かれるでしょう。
そしてここは筆者の単なる妄想ですが、最後のメッセージは音声ではなく、紙かスクリーンにでも表示された文字になるかと思います。
壊れかけの「人」としてみるよりも、壊れかけの「モノ」として見る方が恐怖感ないし精神的負担が少ないのは恐らく自明でしょう。
消費者を不必要に怖がらせないことを考えると、最後はコンピュータ、すなわち「モノ」と同義に扱えるよう調整することだろうと考えます。
つまり、行動不可能かつお客様の手では修復不可能なまでに故障したAI・ロボットが残すのは、
「カスタマーセンターに電話してね♪」
⋯⋯のような可愛い文面のメッセージと、せいぜいがカスタマーセンターのURLもしくは電話番号。
それだけになるのではなかろうかと、冗談まじりに予想します。
○消費社会は、ロボットの死を駆逐する
さて、ここまではロボットが壊れたときについて語らせていただきました。
この部分まででは、タイトルのほんの一部さえも回収できていないことにご不満な読者様もいらっしゃると思います。
お待たせしました。ここからが本番です。
ここから語るのは、壊れてしまった後、買い替えについてです。
その前にまずは、消費社会について確認しておこうと思います。
仮に読者様が何かを売ろうと考えていたとします。
そして仮に、──すばらしいことにあなたの商品は大ヒットし、ほとんどの家庭で愛用されるような大ベストセラーになったとします。
さて、次にあなたはどのような行動を取りますでしょうか?
一つが、別の新しいものを作り売り出す。
ええ、実にいい考え方だと思います。
ただ問題は、あなたがエジソンかテスラあたりの偉人クラスのアイデアマンであるかどうか、その点に尽きるでしょう。
物書きのみなさんなら、案外こちらの道でも進めてしまうのかもしれませんが。
ま、少なくとも私には無理です。二本目のベストセラー商品は流石にしんどいです。
そしてもう一つ。
モデルチェンジを繰り返す。
エアコンなら、自動掃除機能をつければいいでしょう。
⋯⋯なに? すでにある?
なら空気清浄機能や加湿・除湿機能を加えてみればいいじゃない。
テレビとつなぐことができれば、ホラーのときだけ空調を変えて気温を変えたりとか、面白いことはできそうです。
ま、こんなにしんどいことじゃなくても、デザインをかえるだけでもインパクトはあるでしょう。
カッコイイデザインの車や服は、それだけでも商品価値が上がります。
流行に乗ってさえすれば、あとは売れるのは時間の問題でしょう。
さて、売るものを用意したら次はどうします?
手っ取り早く広告を打ってみましょうか。
⋯⋯お、お客さんの関心があなたの商品に向きましたよ。
もっと新商品の素晴らしい機能を宣伝しましょう。
もっともっとあなたの商品を好きになってもらいましょう。
昔の商品なんかより、新商品の方が何十倍、いや何百倍も素敵ですよ、と。
いま何人かが、あなたの新商品を手に取りましたよ。
その調子、その調子⋯⋯。
さて、今考えたのはどんなことだったでしょうか。
「いかにして今持っている商品の興味を失わせるか、そして新しい商品を買わせるか」とご回答いただいた皆様、大正解です。
これが概ね消費主義における商売のしくみです。
微妙に「大量生産・大量消費社会」の説明が混ざっているような気がしますが、そこら辺はご愛敬ということで許してくださいませ。
さて、結論といたしましては読者の皆様が儲けるためには、大量に買い換えてもらう必要があるというわけでございます。
それをよく反映しているのが、お手元のスマホ、PC、ゲーム機⋯⋯などなど、よく使う電子機器でしょう。
日に日にアップデートされる機能はもちろんのこと、買い替えの際のデータの移し替えの簡便さといったら他に例がありません。
一番わかりやすいのがiPhoneでして、あれは以前のスマホと買い替えたスマホを横に置くだけで(乗っ取り防止の認証は多少はあるものの)ものの数分でデータの移し替えが終わります。
再び画面を開けたときには、お気に入りの画像がひょっこりとロック画面に顔を出す、という寸法です。
つまるところ、買い替えへの肉体的・心理的負担は少ない方がいいということになるでしょう。
では、AI・ロボットの場合はいかがでしょうか?
ここからがディストピアの始まりです。
所有者が「買い換える」と意思表示したとき、ロボットがとるべき行動はただ一つ。
そう、何も言わず「データ引継ぎソフトウェア」を立ち上げることなのです。
それも自分が死ぬとか、そういった感情を一切所有者に持たせることなく──。
涙を流すとか、まだ頑張れると懇願するとかなんて言語道断。
そんなことしたら、所有者は
ロボットは、身体を取替えすればまた元のようにふるまい、また元のように所有者に返事をするものでなければなりません。
記憶が少し欠損していたってバグ扱いでしょう。
言い換えるなら、スマホ内の写真が一個移し替えられていなかったのと同じ扱いなのです。
取り替えた元の身体は回収業者にでも送るか、もしくは初めて買った記念にでも残しておくのがいいでしょう。
⋯⋯ま、自分の初めて買った携帯を今日まで大切に持っている人がいれば、の話にはなりますが。
ここまでの結論として一つ挙げたいのは、この瞬間にロボットは死が切り離されてしまうということです。
恐らく最初のうちは顧客の要望に応じて「死」を感じれるようなプログラム──葬式ほど大々的なものではないにせよ、が提供されるでしょうが、それが与える心理的負担の方が優ってしまえばやがて失われるでしょう。
このようなプログラムが失われると、目の前にあるのは、
そこに悲劇の入り込む余地などは存在せず、あるのは「交換」というプロセス、ただ一つとなるのです。
○最後に
消費社会が生み出すもの──。そこに悲劇は介在するでしょうか?
AI・ロボットは「死」から切り離され、人間性を兼ね備えた「モノ」という、現代からみたらやや不気味なポジションへと移り変わるでしょう。
はたして、その未来にロボットへの「涙」は存在するでしょうか?
ある時期がきたら、ロボットに「死」を想定することは、椅子や車に感情を持たせるような、子供のように感性の鋭い人々にしかなし得ないようなものとなっていくでしょう。
また、不意に訪れるロボットの故障や別れなどは、時代が進むに連れ単なる「買い替え」という行為へと還元されていくことでしょう。
そしてそのとき、今日の小説のなかで見たような美しい悲劇は普遍的に存在しうるでしょうか。
消費社会におけるAI・ロボットは小説的な悲劇を生むか? 〜考察が作り出すディストピア〜 ゆーの @yu_no
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