第7話 こたつゆえに
日が暮れ、性懲りも無く雪がちらつく夕飯どきを過ぎた頃。
おやつのドーナツで満腹状態に近い俺たちは、適当に垂れ流したバラエティを見ていた。
ぼぅ、っとしながら、画面を眺めていると、隣に寄ってきた蒼衣が、甘い香りを漂わせながら、ぴたり、とくっついてくる。
ちらり、とそちらを見ると、にへら、と表情を緩ませて、今度は頭を擦り寄せてくる。
「……どうした?」
その頭を抱き寄せるように撫でながら問いかけると、蒼衣は照れたように笑う。可愛いなこいつ。
「特に理由はないですよー。くっつきたくなっただけです」
「……なるほど」
さらさらの髪の感触を楽しんでいると、蒼衣がそのまま前へと回り込み、抱きついてくる。
「冷えた体が温まります……」
「暖房の効いた部屋で、こたつの中にいて、もうシャワーも浴びたのにまだ冷えてるのか」
「心が冷えているんです」
「物理的に冷えるのか……」
「細かいことはいいんですよ。先輩にくっつければ、おーるおっけーです!」
そう言って、なぜか自慢げにしている蒼衣は、改めて俺へと抱きつく。
その勢いに抗うことなく、俺はゆっくりと床へと寝転がった。
「……こたつでこういうのも、悪くないな」
「なんだかいつもと少し違う気分です」
ベッドの中とは違い、空間があるからこその感覚。
それゆえの、直接的な触れ合い。
足先しか出ていないが、それが、すり、すり、と絡むように触れていく。ひやり、とした感覚が、俺の足を撫でていった。
「先輩の足、大きいですね」
「まあ、蒼衣よりは、な。というかお前、足、冷たいな……。大丈夫か?」
「わたしの足が冷たいんじゃなくて、先輩の体温が高いんですよ。えい」
「うおっ」
先ほどまでの、擦り付けるような触れ方から一転、今度はぺたり、とくっつけてくる。
「あったかいです」
「俺は冷たいんだよなあ」
まあ、これはこれでひんやりしていて気持ちいいのだが。
そんなことを思いながら、ぺたぺたと角度を変えている蒼衣を眺めていると、その大きな瞳と視線が交わった。
「……ん」
蒼衣が目を閉じ、ほんの少しだけ寄ってくる。
「……」
その艶やかな唇に、軽く触れるだけの口付けをして離れると、蒼衣が上目遣いでこちらを見る。
「先輩、もっと」
「ちょ、おま……」
「ん……ぅ……」
ぐい、と引き寄せられると同時、口元に柔らかい感触。漏れ聞こえる吐息が甘く、脳が痺れていく。
そして、その熱が離れた瞬間──
「「痛っ!」」
揃ってこたつ机に腰をぶつけた。
「うぅ……痛いです……」
「わかる……超痛え……」
俺も蒼衣も、当たりどころが悪かったらしい。めちゃくちゃ痛え……。
しばらくふたり揃って悶えたあと、俺たちは目を合わせて頷き合う。
「こたつでイチャイチャするのはやめておきましょう」
「そうだな、眠るところまでにしておこう」
「そうで……いや、寝るのもダメですよ?」
どうやら今夜は、こたつで寝る良さを教えなければいけないらしいな……。
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