第12話 おみくじチェック後半戦

「次は──関係あるのはこれですね。病気、わたしはなおるって書いてます」


「俺は安静にすればなおるって書いてるな」


「なら大丈夫ですね。先輩が無理しようとしても、わたしが絶対安静にさせます」


「安心しろ。多分ずっと寝てるからな」


「妙な説得力がありますね……」


呆れる蒼衣から、じとり、と視線を向けられる。いや、病人は寝てるほうが大切だからな? 風邪引いたとき、寝る理由ができたとか思ってないからな?


そう思っていると、さらに顔を寄せてきたので、こほん、とひとつ咳払いをして、次の項目を読み上げる。


「あー、次は願い事だな。『このまま続けよ、さすれば叶う』らしい。……何をだ?」


要領を得ない文面に首を傾げると、目の前の蒼衣も首を傾げる。


「わたしも同じことが書いてますね。よくわかりませんけど……普段通りにしていれば、願い事は叶うってことですかね」


「なるほど、そういうことか」


まあたしかに、俺の願い──つまり、この平和な日々の継続は、何かをして変わるものでもないし、ある意味では的を射ているのかもしれない。


「この次は学問、ですね。わたしは──」


これまで通り、読み上げようとした蒼衣の眉がぴくり、と動く。


「どうした?」


「慢心せず真摯に取り組め、だそうです。たまに講義をサボるようになっちゃいましたからね……」


うぅ、と嘆く蒼衣に、俺は苦笑する。


「誰のせいだろうなあ」


「半分は先輩のせいですからね! もう半分はそれに流されるわたしのせいですけどっ!」


ぷくっ、と頬を膨らました蒼衣がこちらを見るが、残念ながら怖くはない。可愛いだけである。


「まあ、次から講義は休まないようにするんだな」


「なんで自分は皆勤賞みたいな反応なんですか!? ……それで、先輩はなんて書いてあるんです?」


「ん? 俺は──」


ぺら、と紙を動かして、その項目を読み上げる。


「『困難である。学べ』か。──前と一緒じゃねえか!」


「あはは! 先輩も講義、ちゃんと出ましょうねー!」


さっきの仕返しだ、とばかりに笑う蒼衣に、俺は軽く頭をかく。


「今年は卒業が絡むから、笑い事じゃねえんだよな……」


「サボると留年して、わたしと同じになっちゃいますよ?」


「……先輩の威厳にかけて頑張ります……」


「そうしてください」


威厳とか、もはやないけどな。


「……で、最後の項目は……」


そう呟きながら、改めておみくじに目を向ける。すると、蒼衣がにやり、と笑った。


「恋愛、ですよ。これが1番わくわくしますよねっ!」


「お、おう」


興奮気味の蒼衣に押されつつ、俺は内容を読み上げる。


「えー……『憂いなし。信じて進め』らしい。……このままでいいってことか」


「なるほどです。いい結果ですね! わたしはですね……『心のままに愛せよ』だそうです。つまり、わたしと先輩のおみくじを合わせると、心配はいらないから思う存分愛し合えってことですね!」


「……まあ、多分そんな感じだな」


えへへ、と照れながら、嬉しそうに笑う蒼衣がくるり、と隣に回ってきて、少し肩を触れさせる。


その様子に、俺も熱くなった頬をかきながら。


「今年もいい年になりそうだな」


「ふふっ、ですね! 楽しい1年になりそうです!」


上機嫌な蒼衣の手を再び握った。

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