第7話 出遅れた福袋戦争
──というわけで。
やってきたのはお馴染み、隣駅のショッピングモールだ。
うーむ。
「人が多過ぎるな……」
「さすがお正月ですね」
あまりの人混みに、すでにげんなりしている俺を、テンション高めの蒼衣が引っ張っていく。
通り過ぎていく店の前には、でかでかと福袋販売中の文字か、完売御礼の文字が踊り狂っている。そんなに主張しなくてもいいと思うんだよなあ。
そんなことを思いつつ、俺は左右をちらちらと流し見る。せっかく来たのだから、何か面白そうなものがあれば、ひとつくらいは買いたいところだ。
……まあ、面白そうなものはすでに売り切れているのだが。
昨年回ったところもそれなりに見てきたが、やはりどこも売り切れだ。ちなみに、ガーデニング福袋は今年も売っていたし、まだ残っていた。
なんだかんだで蒼衣的には家庭菜園が楽しいらしく、ちょこちょこと何かを作っては食卓に並べている。まあ、もうプランターはいらないので買わないのだが。
──と、そういえば、この近くで酒の福袋を買ったんだったか。
今年もあるのなら、少し気になるところだ。
まだ、昨年の残りがそこそこにあるのだが、まあ問題ないだろう。
「なあ、蒼衣。ちょっとそこの酒屋覗いてもいいか?」
「いいですよ。というか、わたしも気になります! 美味しそうなものがあれば買いたいです!」
「それもそうだな。福袋以外にも見るか」
頷いた俺は、先ほどとは反対に、蒼衣の手を引いて、店へと連れていく。
記憶の通り、やはり近い。
さて、まだ福袋は残っているだろうか。あればいいのだが。
そう思い、店の入り口近くに立つと、大きな張り紙がひとつ。そこには、福袋販売中の文字と、値段が記載されていて、さらにその上に──
「……ですよねー」
完売御礼の文字が、でかでかと踊っていた。
「出遅れたなあ」
「出遅れましたねぇ」
ふたり揃って苦笑しつつ、店へと入りながら。
「……適当に美味そうな酒でも買っていくか」
「ですね。わたし、甘いお酒が飲みたいです!」
蒼衣のリクエストに応えるべく、店内を見回るのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます