第6話 新年早々

「ん、んん……?」


新年最初の寝起き。


そのとき感じたことは──


さっむ! あと背中痛え……。


という、いつも通り──いや、いつもより悪い感想だった。


まあ、理由は単純。


蒼衣とブランケットに包まりながら、イチャついていたら寝落ちした、というだけである。


その証拠に、腕の中にはなんとか暖を取ろうと俺にしがみついている蒼衣がいる。


……イチャついていた、とか自分で言うの恥ずかしいな……。


そんなことを思い、恥ずかしさでセルフ発熱をしながら、時計を見る。長針と短針が、ぴったりと重なり合っていた。


「……寝過ごしたな」


新年初日から、完璧な寝坊だ。絶対に朝早くから起きておく必要もなかったのだが、とある理由で起きておきたかったのだ。


その理由は、昨年と同じ。


「……多分福袋、良いやつはもうないだろうなあ」


昨夜のうちに、蒼衣が言い出した、福袋購入会である。


朝イチから、ショッピングモール内を巡りつつ、目についた福袋を買おう、という話だったのだが……。これでは、うん、もう売り切れ出てるだろうな。


そしてそれから、初詣も、という話だったのだが──


うん、大人数だろうな。


ちなみに、年越しと同時に初詣、という話は、今年は却下になった。


理由は単純。初詣後、電車がなくて帰ってこれないからだ。


金に余裕ができたら、タクシーで帰る前提や、ホテルに泊まる前提でやるのはアリかもしれない。まあ、その頃もここに住んでいるかはわからないが。


──と、まあ、そんなわけで朝から出歩くつもりだったのだが、完璧に寝過ごしてしまった。


普段なら、俺より早く目覚め、起こしてくれる蒼衣も、年末年始ということで気が抜けたのかもしれない。


すやすやと穏やかに眠っていて、起こすのにも罪悪感がある。


それに、もう少し眺めていたいしな。


そう思い、蒼衣の寝顔をしばらく眺めていると、ぴくり、とまぶたが動く。


「……んぅ……」


「おはよう。あと、改めてあけおめ」


「あけましておめでとうございます……」


くしくしと目元をこすりながら、起き上がり、伸びをひとつして──


「……あれ? 今何時ですか?」


ひくり、と頬を引き攣らせた。


「12時回ってる」


「……ま、まずいです先輩……。福袋が……」


「まあ、中身の良いやつは売り切れだろうなあ」


「ぐぬぬ……仕方ないですけど……。新年早々幸先が悪いですね……」


と言いつつ、蒼衣はブランケットから脱出。


寒いのだろう、ぷるぷると震えながら俺を見て、ひと言。


「先輩、今からでも買いに行きましょう! 福袋!」


「まあ、そう言うだろうとは思ってたけどな」


俺は苦笑しつつ、立ちあがろうとして──


「……寒いし、もう少しあとでもいいか……?」


「ダメですよ!? それ絶対行かなくなるやつですし!」

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