第47章 12月24日
第1話 大学生の悲しきクリスマスイブ
12月24日。
それは、世間が浮き足立つクリスマスイブだ。
──そんな日の朝に、俺は。
「昨年に引き続き講義があるんだよなあ……」
大学生特有の、悲しい愚痴をこぼしていた。教授め……。
「本当に、どうしてクリスマスに講義をやろうと思うんですかね」
不機嫌そうに頬を膨らませているのは、俺の後輩にして彼女──雨空蒼衣だ。
むすっとした顔ですら可愛いのだから、こいつの可愛さは本物である。
「せっかくのクリスマスイブなのに……」
「そういうお前は講義ないけどな」
「彼氏の先輩があったら意味ないじゃないですかー!」
叫ぶ蒼衣は運が良かったらしく、クリスマスイブに講義をするような、無慈悲な教授には当たらなかったらしい。
先ほどよりも大きく膨らんだ頬を突いて空気を抜きつつ、俺は苦笑を漏らす。
「まあ、2限の1コマだけだから、昼過ぎには帰ってこれるだろ」
「早く帰ってきてくださいね? 遅くなると寂しくてお料理作りすぎちゃいますよ?」
「微妙にゆっくり帰ってきたくなる脅しはやめろ」
蒼衣の料理、美味いから量とか種類が増えるのはむしろありがたいというか、嬉しいことなのだが、こいつを寂しがらせるのは望むところではない。
「まあ、講義が終わったら、早めに諸々回収してすぐ帰ってくる。じゃあ、行ってくるぞ」
「はい、いってらっしゃいです」
気をつけてくださいねー、と付け加えて手を振ってくる蒼衣に俺も振り返しながら、立て付けの悪い扉を開けて、階段を降り、見慣れた道へと歩き出す。
……クリスマスイブにひとりで歩いていると思うと寂しくなるな……。
そんな気持ちを紛らわせるように、歩を早めながら、迅速な帰宅を心に誓うのだった。
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