エピローグ 躊躇いなくストレートに

「……んぁ……」


「おはようございます、先輩」


ぴよぴよと、外から聞こえる小鳥の声に目を覚ますと、後ろに音符が付きそうなくらいに機嫌の良い声が、斜め下から聞こえる。


「……おう、おはよう」


言い終わると同時、あくびをひとつ。うーむ、眠い。


「眠そうですけど、そろそろ起きてくださいね?」


「おう……。機嫌良いな、お前」


「はい、とっても」


「……なんでだ?」


今日はただの平日……俺の誕生日の翌日、ということ以外、本当に何もないはずなのだが。


「むふー、それはですね、昨日先輩が、寝ているのにわたしを抱きしめたからですよ。先輩、本当にわたしのこと大好きなんだなー、と思ったので、テンション高めなんです!」


……なるほど。昨日の寝る間際のアレか。


「無意識でも抱きしめるなんて……。先輩、わたしのこと好き過ぎるんじゃないですか?」


なんて言いながら、ぐりぐり、と俺の胸に頭を押し付け、ちら、と上目遣いにこちらを見る。にや、と上がった口角は、まるで小悪魔だ。


……普段なら、誤魔化したり、うやむやな回答をしたりするのだが。


昨日の夜に考えたせいだろうか。


「まあ、好きだからな」


するり、と素の言葉が出てきて。


「──っ!?」


驚いた蒼衣が、ぽす、と顔をうずめる。


「……珍しく、躊躇いなくストレートですね。予想外です」


「……俺も、予想外だ」


ささやくように言い合ってから、しばらく沈黙が続く。


気恥ずかしくて、俺は沈黙を破るべく、声を上げる。


「さ、さて! そろそろ起きるか!」


「そ、そうですね!」


なんだかぎこちない空気感で、ベッドから出て、顔を見合わせて。


ふたりそろって、顔を赤くしながら吹き出すのだった。

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