第14話 それは無意識の想い

「ふぅ……」


と、大きく息を吐きながら、俺はベッドへと倒れ込む。


それと同時に、強い眠気が襲ってきて、自然とまぶたが落ちていく。


どうやら、いつもよりしっかりと酒を飲んだのが響いているらしい。シャワーを浴びて、さっぱりしたのもあるかもしれないな。


そんなことを、途切れ途切れの思考で考えながら、眠りとの狭間を何度も往復する。


聞こえてくるシャワーの音が、妙に心地いい。


もちろん、俺がシャワーを出しっぱなしにしているから鳴っている音ではなく、蒼衣が浴びている音だ。


……この音も、そう珍しいものではないのだが……。そうだよな。改めて考えてみれば、今、蒼衣がシャワーを浴びているわけで。


……これ、意識するとダメだな。


そう思った俺は、ぐっ、と目を閉じて──


──。


────。


──────。


「……先輩、寝ちゃってますね」


すぐ近くから、声が聞こえた。


どうやら、蒼衣が風呂から上がってきたらしい。


起きてるぞ、と声を出そうとするが、なぜか音にはならなくて、かといって金縛りのように、それが苦痛でもなくて。


あー、体は完全に眠ってしまっているっぽいな。


こういうときは、抗わず、寝るに限る。


そう結論づけて、起きることを諦めていると、つん、と頬を突かれる感覚。


「……ふふっ、やっぱり子どもみたいな寝顔ですねぇ」


……誰が子どもだ。


楽しそうな蒼衣の声に、心の中で反論するも、残念ながら、それも音にはなってくれない。


「……今なら、なんでもし放題ですね。なーんて」


そんなことを言って、次は髪をひとしきり触ったあと、蒼衣は満足そうに、ほぅ、と息を吐く。そして、立ち上がり、どこかへ歩いていく。


ぱちり、と音がして、また足音がしたと思えば、ほどなくしてぽすん、という軽い音とともに、ベッドが揺れる。


「先輩、おやすみなさい」


そんな囁く声が鼓膜に届くと同時、そっと腕が抱かれる感覚。柔らかくて、風呂上がりなせいか、いつもより暖かい。


そう思った瞬間。


決して、自分で動かそうと思ったわけてもないのに、体が勝手に動く。


抱きしめられた右腕とは反対側の腕で、ぐい、と蒼衣を抱き寄せたらしい。


「んっ」


と、蒼衣の驚きの声が聞こえた。


……無意識でも抱きしめるとか、我ながら──


「もう……。先輩はわたしのこと、本当に大好き過ぎるんですから……」


そんな、俺の考えとまったく同じことを言った、蒼衣の嬉しそうな声に。


否定はできないな、と、自分でも少し、呆れる。


……いや。


否定する意味も、理由もないな。


だって、俺は、蒼衣のことが──

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