第20話 ぷくり、ぷすり
「……ちなみに、俺はお前が何と勘違いしてるのか、気づいてたぞ」
「……え?」
蒼衣の動きが止まる。そして、耳まで真っ赤に染めて、再起動。
「なんで言ってくれなかったんですかぁぁぁぁぁ!」
「いや、面白いかなー、と思ってな」
「先輩のいじわる……。それで、面白かったんですか」
「それなりに、な」
俺としては、恥ずかしがる蒼衣が見れただけで大満足である。慌てふためく蒼衣も可愛い。
「ここまで恥ずかしい目に遭わされたのに、それなりですか……。これは、先輩にも何かしないといけませんね……」
じとぉ、と目を細めて俺を見る蒼衣。嫌な予感がするな……。
「……お手柔らかに頼む」
「先輩、自分の胸に手を当てて、自分のしたことを思い返してみてください。そんなこと言えますか?」
そんなことを笑顔で言う蒼衣。俺は、自分の胸に手を当てて、思い返してみる。……なるほど。
「俺、何も悪いことしてないな」
「よくそんなこと言えますね……。もういいです、覚悟しておいてください」
そう言って、蒼衣は布団の中に頭ごとすっぽりと収まる。お布団ゴースト、最終形態だ。
まるまるとした塊に、俺は右手に持つ花火を振りながら声をかける。
「……それで、手持ち花火、するか?」
ぼすっ、と頭だけ出した蒼衣は、頬を膨らませ、そっぽを向きながら答える。
「……します」
ぷくり、と膨らんだ頬を人差し指で突く。ぷすり、と空気が漏れた。むぅ、とさらに蒼衣が頬を膨らませる。また指で突く。膨らませる。突く。膨らませる。突く。膨らませる。突く。
……楽しいな、これ。
衝動に任せて何度も繰り返していると、蒼衣がちらり、とこちらを見る。
「……先輩、そろそろ疲れたんですけど、満足しました?」
「おう」
そう言いながら、もう一回突くと、先ほどまでとは違う、ぷに、とした感覚に変わる。どうやら、蒼衣が頬を膨らませるのをやめたらしい。
「まったく……。怒っている人のほっぺたを突くなんて、普通はさらに怒られますよ?」
そう言って、苦笑する蒼衣。どうやら、機嫌はなおったらしい。
「大丈夫だ、蒼衣なら怒らないと思ってやってるからな」
それに、蒼衣はスキンシップをやけに好むのだ。むしろ喜ぶタイプだろう。
「まあ、怒りませんけど。ただ、先輩にはこの分も含めて、甘やかしてもらわないといけませんね」
「いつも十分甘やかしてると思うんだが……」
「もっとですよ。今日は恥ずかしい目に遭わされた分、しっかり甘やかしてもらわないと」
頷きながらそう言う蒼衣は、何かを企んでいるときの笑みを浮かべていた。
……まあ、何を企んでいようとも、このあとの予定は決まっているのだけれども。
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