第13話 覚えてろよって言ったよな?

蒼衣を存分に撫で回したあと、俺はシャワーを浴びて、リビングへと戻っていた。


「あがったぞー」


「はーい」


聞いているのか聞いていないのか、緩く返事をした蒼衣は、ベッドの上に制服で寝転がっている。


「……まだ制服のままだったのか」


少しめくれ上がったスカートから覗く肌色が、やけに眩しい。制服、なんておそろしい服なんだ……。


視線を外した俺には気づかず、蒼衣はぽふ、と枕へと顔を埋める。


「なんだか、馴染んできたので。あとはあれです。制服のままベッドでごろごろするのって、シワになるから出来なかったじゃないですか。今はそんなこと関係ないので、1回しておこうかと」


「……出来なかったか?」


「……出来なかったですよ? ……まさか、先輩、制服のままごろごろ遊んでたタイプですね」


「おう。帰って着替えるのも面倒でな……」


「それ、親に怒られたりしなかったんですか?」


「怒られはしたな。適当に流していたけど」


はじめの1ヶ月くらいは言われていた気もするが、そこからは記憶にないので、多分諦められたのだろう。


「わーお……。先輩、スーツではそんなことしないでくださいね」


「……その格好で言われても説得力がないんだよなあ」


「い、今の格好は関係ないですー! もう……わたしもシャワー浴びて来ます!」


ばふん、と音を立てて起き上がった蒼衣が、ベッドから立ち上がる。ひらり、と舞ったスカートを眺めつつ──


「……どうしたんです?」


俺は、立ち上がった蒼衣の腕を掴む。そして、そのままベッドへと引き戻した。


「ひゃ……!? せ、先輩?」


頬を少し赤らめながら、覆い被さった俺を、大きな瞳がしっかりと見つめている。


「……俺、言ったよな」


「な、何をです……?」


「覚えておけって」


「は、はい……?」


もそ、と首を傾げる蒼衣に、じわじわと俺にも恥ずかしさがあって、顔が熱くなる。


「お前が制服で、サービスサービス言ってる間、言ったよな。覚えてろよって」


「そ、そんなこと言ってないと思うんですけど!? たしかにそんなこと思ってそうな顔はしてましたけど!」


まあ、その通りだ。言ってはいない。思ってはいたが。


「いや、言った。というか、そもそもあんなのを見せられてこうならないと思ったか?」


「いや、むしろそこ狙いで……。って! やっぱり言ってないと思うんですけどぉー!」


そんな、拒絶の意思のまったく感じられない悲鳴を聞きながら──

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