エピローグ1 彼女としての日常へ
先輩から告白を受けて、晴れて恋人になったわたしは、マンションの自室へと帰ってきていた。
荷物を下ろし、コートを脱いで、それからベッドへと飛び込んで、枕を抱きしめながら布団へと顔を埋めた。
「……彼女。彼女、かあ……。えへへへ……」
繰り返す単語に、思わず頬が緩む。
ようやく、ようやくだ。
先輩に告白をしてから、半年以上。
ついに、晴れて恋人同士。
そう、先輩の彼女!
先輩はわたしの彼氏!
もうこの字面だけで、つい興奮してしまう。まさか、泣いてしまうとは思わなかったけれど。
ぎゅっ、と、さらに枕を抱きしめながら、明日からの日常に想いを馳せる。
何をしようか。
せっかく恋人になったのだから、デートには行きたい。行き先はどこでもいい。ふたりで楽しめればどこでもいいのだ。
泊まりがけで旅行に行くのもいいかもしれない。温泉なんてどうだろう。ゆっくり出来るから、わたしと先輩にはピッタリな気がする。
それに、先輩は、お風呂上がりのわたしをよく見ていたから、きっと喜んでくれるだろう。
あとは、普通に先輩の部屋に泊まったり、わたしの部屋に泊まったり。今までは先輩が頑なに拒んでいたけれど、恋人なら拒まれる理由もない。……思い返してみれば、何度か泊まっているからあまり拒めていない気もするけれど。
たくさん、先輩とやりたいことはある。
でも、今までみたいにゆっくり過ごすのもいいと思う。
普段通りに、特に何かするわけでもなく、ゆったりとふたりの時間を過ごす。
……もう恋人なのだから、少しくらい甘えるのも許してくれる、かな?
急に肩に寄りかかってみたり、抱きついたりしたら、先輩はどんな反応をするんだろう。
なんだかんだで、今までと同じように慌てていそうだけれど。
そう思うと、思わず笑ってしまう。それでいて、胸がきゅ、と締め付けられる。
苦しい感覚ではなく、どうしようもなく愛おしい感覚。
ああ。
「はやく、先輩に会いたいなあ」
そう呟いて、口に手を当てる。そこに、感触はまだはっきりと残っている気がして。
わたしは、布団に顔を擦り付けた。
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