エピローグ2 日常はまだ続く
雨空が帰るのを見届けて、俺は自室へと戻っていた。
なんとかベッドへと辿り着き、そのまま倒れ込む。
「つ、疲れた……」
恐らく、緊張が解けたせいだろう。一気にその反動が返ってきて、体力を根こそぎ持っていかれた感じだ。
大きく息を吸って、吐く。
「……彼女が、出来たのか」
そう呟いても、何故か現実感がなく、ふわふわと言葉が宙に浮いているような感覚がする。
まあ、俺に彼女が出来た、ということが、俺にとっても予想外の出来事のひとつなのだから、当然かもしれない。
……まったく、出会って1年足らずの後輩に、色々影響を受けて、変えられてばっかりだ。ただ、その変化も悪くない。むしろ、良いものだと感じられている。
そんな自分に苦笑を漏らしながら、俺は明日へと想いを馳せる。
きっと、俺と雨空の日常は、そう大きくは変わらないと思う。
もちろん、恋人なのだから、デートに行ったりはするのだろうし、変わることもあるだろう。
けれど、きっと普段のあの緩い雰囲気は変わらない。俺は、そう思っている。
明日からも、きっと変わらない、それでいて少しだけ距離の近い日常が待っているに違いない。
恋人らしいこと、なんてものを、俺は知らない。だから、まずは雨空の思うカップルをはじめてみるのも悪くないかもしれない。
「……恋人、カップル、か……」
ここまで反芻し続けても、やはり現実味はあまりない。
確信を持てるのは、きっと明日、雨空と会ってからなのだろう。
……どんな顔をして会うのが正解なのだろうか。
そんな考えが頭をよぎったことに、苦笑する。今更、雨空に格好つけてどうするというのか。俺のだらしなさを誰よりも知っているのは、彼女だというのに。
「……とりあえず、風呂入って寝るか」
どうせこのままでは、ぐるぐると思考が回り続けるだけだ。なら、さっさと寝てしまうに限る。
そう思い、ベッドから体を起こし、立ち上がった。
明日からも、ほんの少しだけ新しい、それでいて変わらない日常は、まだ続いていく。
俺と後輩の日常は、まだまだ続いていくのだ。
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