第2話 お菓子作りは難しい

「よ、よし……!」


なんとか、完成した。


目の前には、3度目のチャレンジで成功したガトーショコラがある。


料理が出来るから、大丈夫だろう。なんて思って、お菓子作りを甘く見ていた結果、焦げたり美味しくなかったりと失敗したけれど、3度目にしてようやく、成功したと言っていいものが出来た。


これまで、バレンタインといっても友人たちと友チョコ、なんてくらいにしかしたことがなかったわたしは、よくよく考えてみれば簡単なお菓子くらいしか作ったことがなかった。溶かして固める、くらいのものだけだ。


そんなわたしが、急にガトーショコラを作ろうとした結果、こうも苦戦することになるのは簡単にわかることなのだけれど。


「まさか、ここまで分量が大切だとは……」


基本的に、料理はフィーリングでどうにかなることが多々ある。毎回大さじ小さじを正確に計っている人なんてほとんどいないだろう。


そんな感じで、いつも通りフィーリングに頼って作った結果が、2回の失敗だ。お菓子作りは分量が大切だということを嫌というほど思い知った。


とはいえ、ついに完成はした。あとは、ラッピングだけ。


今日のために、事前に袋やリボンは準備してある。


「……よし」


崩れないように、丁寧に、包装していく。


最後にリボンをきゅっ、と締めて、出来上がり。


ちらり、と時計を見ると、14時をまわったところだ。9時くらいから準備をして作っていたので、5時間ほど格闘していたことになる。


さてと、準備をして、先輩のところへ行かないと。


人生初の、本命チョコ。緊張がないはずもない。


だから、準備は大切だ。


まずはシャワー浴びて、それから身支度を整えないと。


……うぅ、緊張する……。


そんな緊張を抱えながら、着替えを持って脱衣所へ向かう。


先輩は、わたしのチョコを喜んでくれるだろうか。いや、きっと喜んでくれるのだろうけれど。それでも不安は拭えない。


けれど、渡さない、なんて選択肢はない。


想いは伝えてこそなのだ。何回も何回も、伝えることがきっと大切。


「……よしっ」


軽く頬を両手で叩いて、気合を入れる。


そして、シャワーを浴びるべく、服を脱ぎながら、やっぱり思う。


……先輩、喜んでくれるといいなあ。

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